4話 結婚式の前に 4
ずっと妹のターン!
妹「多分。わかりましたよ。姉さん」
私は姉さんの様子をうかがった。
姉さんは身体がこわばっている。緊張しているのでしょうか?
妹「お兄さんの前で、このことを暴いてしまって、本当にいいんですね?」
幼「……。うん。頼んだことだから……。よろしく」
俯きながらもはっきりと姉さんは答えた。
俺「ええ? 暴くって? 一体幼馴染に何が?」
お兄さんは心配そうに聞いてきた。
私は目を閉じて少しの間、考える。
…………大丈夫。お兄さんならきっと大丈夫。姉さんがお兄さんを信じているように私もお兄さんを信じる。
そして顔を上げ、机をバンと叩いた。
妹「姉さん! 若返ってから変わったこと! 他にもあるはずです!」
幼「……!!」
妹「姉さんが若返って変わったこと。それは…………。
生理が来なくなったのではないのですか!?」
幼「!!!!」
俺「ええええええ!? じゃ、じゃあ、もしかして子供ができたのか?」
妹「異議あり! それなら姉さんは喜んで真っ先にお兄さんに言ったはずです!」
俺「ということは……。俺に言えなかったってことは……。」
妹「そう、姉さんは若返り過ぎた。そして生理が来なくなった。つまり!」
私は机をバンと強く叩き、指を突き付ける!
妹「子供が産めなくなったのです!!!」
幼「!!!!!!!」
姉さんは今にも泣きだしそうだ。
妹「だから、姉さんはお兄さんに相談することができなかった! 子供が産めなくなったなんて知られたら、お兄さんにどう思われるか、不安になってしまったんです! 勿論、これは今だけのことで将来はわかりませんが」
俺「…………本当に……。本当にそうなのか?」
真剣な顔をしてお兄さんは姉さんに問いかけた。
幼「……ごめん。あんたに言えなかった。……私はあんたを信じてる。でも……。それでも私が子供を産めなくなったって知ったら……。グス……あ、あんたに嫌われて……あ、あんたに捨てられてしまうと想像してしまって……グス」
俺「……俺がおまえを捨てるだなんてあるわけないだろう? おまえと今までどれだけ付き合ってきたと思っているんだ」
幼「うううううう……。あ、あ、あんた~~~~~~!!!」
姉さんは泣きながらお兄さんに飛び込んで抱き着いた。
俺「大丈夫だ……。大丈夫だから……」
お兄さんは姉さんを優しく抱きしめている。
すごくアツアツですね。うん。私もここにいるんですけど。すっかり二人の世界ができあがっているようだ。
やはりお兄さんは大丈夫だった。姉さんも信じていたけど、それでも不安だった。
だからもしものために第三者がいる場面で知られる必要があった。
そういうことだったわけですね。
俺「それにな? もう俺たちには可愛い娘がいるじゃないか。十分すぎるほどだ」
お兄さんは娘ちゃんを見て言う。
幼「それでも。それでも私はあんたのためにももっともっと子供が産みたかった。いや、この先に絶対産めるようになって見せるよ!」
俺「そうか。うん。そうか。じゃあ、早く大きくならないとな」
お兄さんは優しい顔をして笑っている。
ああ、悔しいほどにお兄さんは姉さんを愛しているんですね。
……これで……。
これで相談は解決したとみていいのでしょうか。
姉さんの秘密は私によって暴露された。だけどそれはお兄さんに許された。
姉さんの不安は取り除けたわけです。
これで私のお役は御免……。
しかし、そう思ったその時、私はある疑問に囚われた。
…………本当にそうなのだろうか?
姉さんが私に相談といったのはこのことだったのか?
確かにこのことも相談のうちだったのだろう。
じゃあ、なぜ”私”でなければならなかったのか。
お兄さんが姉さんの秘密を暴くのでは駄目であったのか?
お兄さんのことだ、自分で暴いたとしても結論は同じだったろう。
それは姉さんもわかっていたはずだ。
じゃあ、なぜ……。
私は目をつぶって今までのことを考える。
…………そしてある結論に達した。
そう、これしか考えようがない。
姉さん。あなたという人はひどい人です。
でも、姉さんがそうしたいというのであれば、私はもう、我慢しなくてもいいのですね……。
……私は覚悟を決めた。
さぁ……。最終局面を始めましょうか!
つ、次で終わるはずです。
幼馴染の妹への本当の相談とはいったい何なのか?
わかる人にはもうわかっているでしょうね。