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聖女のゆめ

今回の話にみんなは耐えられるのだろうか?

 私の名前は聖。超実力派の天才マジシャン……失礼、ちょっと間違えました。


 超実力派の天才美少女聖女です。


 両親はいません。どんな両親なのかもわかりません。


 しかし、この整った私の美貌から考えるに、両親は神ではないでしょうか?


 またはこの気品ある私にふさわしく、王家の血筋とかではないでしょうか?


 一度子供を捨てて拾うというゲン担ぎな方法もあることですしね。


 とはいえ、ないものをねだったところで仕方がありません。


 ネガティブに考えてもしょうがないのでポジティブに考えましょう。


 そんなわけで、薄汚れた孤児院で、私は可愛がられ、美しく成長したわけです。


 孤児院では、みな兄弟であり、助け合いでしたね。


 勿論、私はみんなに慕われる人気者でしたよ。


 そして、誰もが人気者である私の頼みを快く聞いてくれていました。


 これも私の美貌と人徳のなせる業ですね。


 孤児院では特に仲の良い男の子がいました。


 私のすぐ年下で、可愛い容姿をしていて、私は弟のように思い、親しくしていました。


 私は弟を玩具……ゲフンゲフン、奴隷のように扱っていました。


 一緒にお風呂に入って洗ってあげたりして、とても勉強になりましたよ。ウェヘヘヘ。


 しかし、悲しいもので、そんな可愛い弟も反抗期に入ってしまいました。


 あれだけ可愛がっていたのに残念なことです。


 弟は外に出稼ぎに行くことが多くなり、孤児院にいる時間が少なくなってしまったのです。


 この孤児院は助け合いをモットーとしており、ある程度成長した兄、姉が稼いで孤児院にお金を入れることになっていました。


 勿論、成人したら孤児院から追い出され…おっと、立派になったら孤児院から独り立ちするわけです。


 ニートは認めてくれないんですね。実に残念なことに。


 仕方がないので、もっと若い弟妹を弟の代わりに私は世話をしていました。


 弟は稼ぎが結構多かったのですが、その分、危険な輩との付き合いが増えてしまったようです。


 私は一番可愛いのが弟だったので非常に心配だったのですが、それはそれとして幼い弟妹を可愛がっていました。


 そんなある時のことです。


 弟が瀕死の重傷を負っていたところに出会ったのです。


 一体弟の身に何があったのでしょうか!


 私は弟を抱きかかえましたが、もはや手遅れなのがわかるくらいの虫の息でした。


 弟は最期の言葉を言いました。


 「…姉ちゃんは俺のようにはなるな」と。


 私は己の力の無さを嘆きました。


 もし私に力があれば、弟を助けられたのに! どうしてもっと早く弟のことを見ていてやらなかったのか!


 悔しさに身を震わせていました。


 そんなときです。


 神の声が聞こえ、聖女として認定されたのは。


 『力が欲しいか? 欲しいのなら、くれてやる』


 私は驚きのあまりおもわず手を放し、立ち上がりました。


 下から「いてっ」と声が聞こえたような……気のせいですね。


 私は喜びました。これで弟を助けられると!


 しかし、現実は非情でした。


 神の声にしばらく気を取られているうちに、弟がいなくなっていたのです。


 そこには弟の血痕だけが残っていました。


 私に自分の死にざまを見せたくなかったのでしょうか。




 ……せっかく。


 …………せっかく助けられる力を手に入れたのに!


 後悔と弟への懺悔を繰り返し、失意のどん底にいた私でした。


 しばらく茫然としていたようです。


 私は弟の最期の言葉を思い出します。


 そして決意したのです。


 私は、弟のようにバカなヘマをせずに上手くやってやる! と。


 そうです。バレなきゃ犯罪じゃないんです。


 聖女になった私を教会が迎えてくれることでしょう。


 私は私だけの理想の酒池肉林を手に入れて見せる!


 力を手に入れた私はそう決意したのです。



 聖女になったことを孤児院のみんなに知らせると全員喜んでくれて、私を教会へ送り出してくれました。


 教会では、クソじじいとクソばばぁによるマナーや所作の教育が行われました。


 仕方ないですね。いくら完璧な美貌で気品があり清楚な私としても育ちの悪さは補えませんから。


 素直に吸収し、みるみるうちに、完璧な所作を身に着けました。


 勿論、嫌だからって逃げたりなんてしていませんよ。


 私は努力が大好きですからね!


 作り笑顔もバッチリです。


 みんなに見せると、みんなが見惚れて青い顔をしてしまうほどですよ。うふふふ。


 聖女となり教会の権威となった私は裏で暗躍もしていました。


 仕方ないですね。私の生まれ育った孤児院への優遇をなくすことを条件にされたのですから。


 教会の裏の仕事を手伝うのも仕方がない、仕方がない。酒池肉林のためにも仕方がない。


 しかし、聖女は処女でいるうちにしか魔法が使えないというのは参りました。


 魔法が使えなくなってしまったらすぐバレバレなわけです。


 仕方がないので自粛していましたよ、色々と。ええ。


 結婚での祝福が思わず呪いになってしまうのも頷けますよね。


 勿論、聖女である私はモテましたよ。


 王子とかからの婚約話もありました。


 でも王妃とかになると、すごく大変じゃないですか。


 私は自由で自堕落な生活させてくれる人に養ってほしいのです。


 そういうわけでいくらイケメンだろうが、王子はなしです。貴族でも偉いのとかはNGです。


 そんなこんなで聖女としての生活を満喫していたわけですが、魔王の野郎が出張ってきやがりました。


 しきたりで勇者野郎と一緒に倒しに行く旅に出かけなければならないとか。


 教会のクソじじいとクソばばぁ相手に攻防をしましたが、しきたりと一般庶民の期待に応えるために仕方がなく旅に出ることにしました。


 しかし、旅に出れば、しがらみがなくなり自由を手に入れたことに気が付いたのです。


 聖女としての体面を維持し、高度な柔軟性を保ちつつ臨機応変に作戦をたて、勇者野郎たちと魔王を倒して、今に至ります。


 しかしながら、一つだけ分からないことがあります。


 なぜ、聖女でなくなった今も、私に男がいないのか?


 実に不可思議なことです。

実にシリアスな話ですね。

しかし勇者と同じように過去話をしたつもりがなぜ違うものになるのか?

コレガワカラナイ。

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