17.吸血99?
「そこに座ってて。みんなをベッドに運んでくるから」
リリスはエイミーとお姉ちゃんをベッドにある部屋へと運んでいった。
ダンフとドラグノールは絨毯の上におかれたままなんだけど……。
女の子の家をジロジロと見るのはどうかと思うけどついつい見てしまう。
中はと言うと、なんか森の中にぴったりな家だった。
机や椅子、棚に灯りの台まで全部木でできている。
ヴァンパイアは真っ暗な空の下にある城に住んでいるイメージだった。
ゲームだと城までいってボス戦っていうのが多かったけど。
ここは城とは全然違ってはいるものの、これはこれでいいかもしれない。
「お待たせ。飲み物を出すね」
そう言うと台所へ向かった。
台所は可愛らしいことにリリスのサイズになっている。
何かをコップに入れて僕に渡してくれた。
中を見てみると真っ赤な飲み物だった。
「えっと……」
「どうしたの?飲まないの?」
いやー、どう見ても血にしか見えない。
飲む気が起きないな……。
リリスは美味しそうに飲んでいるけど。
「美味しいよ?」
「でもさすがに血は……」
「血?これはりんごよ」
りんごかよ!
ややこしい色にしないでくれよ……。
りんごでこの色って、着色でもしたの?
「あっ、美味しい」
「でしょう?ここの木で採ったりんごでつくったの」
リリスは嬉しそうに話している。
何かこのりんごの木に思入れでもあるとか?
「この木って特別な木なの?」
「このりんごの木は私が三千年前に植えた木なのよ」
…ちょっと待って。
一体リリスは何歳なの?
そんなに長生きしているの?
「リリスって、何歳なの?」
「さぁ……。もう数えていないから分からない」
とりあえず三千は超えているみたいだった。
「でもよくそんなに長く木が残っているね」
「うん。いろんな魔法を使ってこうして残っているの」
「でもなんでこの木の中で住んでいるの?」
「元々別の所に住んでいたわ。でもいつの間にか周りのみんながいなくなったから、こうして木の中で暮らしているの」
リリスは悲しそうに話した。
そこまで長生きする人はいないもんね。
周りには他のヴァンパイアはいなかったようだ。
「僕でよかったら、またこうして話に来ようか?」
「いいの?」
「うん。この森にはダンフ、あのクマがいるからたまに来るんだよ」
「それならまたいつでも来ていいよ!それにしても、さっきあのクマが話していた時は驚いたよ」
クマは普通しゃべらないからね。
長生きしてもびっくりするものなのか。
「そういえば食事はどうするの?」
「どうって?」
「だってヴァンパイアって血で生きるんでしょ?ここらへんは人がいなさそうだし」
「そんなことないよ?普通の食事でも生きていける」
あ、そうなんですか。
てっきり血だけで生きているのかと。
「でもあまりいい手段ではないの」
「魔法が使えなくなるとか?」
「まさにその通り。でも完全に使えなくなるわけじゃないけどね。魔力があまりたまらなくなる」
ようするに効率の悪い食事みたいなものかな。
種族が違うといろいろと不便だな。
「魔法ってどういうの使えるの?」
「見せてもいいけど、それなら血をちょうだい」
話の流れ的に血は必要になるよね。
構わないけど、気になることがある。
「何か病気や呪いにかかったりとかは?」
「しない。そんなことしてもいいことが無かったし」
それなら大丈夫そうだ。
無かったって過去形なのが少し気になるけど。
一応健康体だし、血を渡しても大丈夫だよね。
たくさんは無理だけど、少しぐらいならあげれるかな。
「はい、どうぞ」
「いただきます」
僕は噛みやすいように手を差し出した。
噛まれるから痛いだろうなあ。
予防接種のことを思い出した。
僕は目をつぶって待っていたら首に痛みを感じた。
「えっ?」
「動くと危ないよ」
腕ではなく、首近くの肩を噛まれていた。
何のために腕を差し出したのやら。
でも噛みなれているのか、痛みはまったくない。
「よし、もう大丈夫だよ」
「結構飲んだね……」
「久しぶりだったから、つい」
少し貧血気味になった。
心配だから回復しておいたほうがいいかな。
「回復」
「魔法使えるんだ」
「少しだけど使えるよ」
全部スキルを使っているんだけどね。
使えるには使える、嘘は言っていない。
回復のおかげで貧血気味は治った。
でもあとでしっかりと補給しておかないと。
「…もっと飲めそうだね」
「だめ!あくまでも応急処置だから!」
「むぅ、じゃあまた来た時飲ませて」
「まあそれならまだいいかな」
って、僕はここに血を飲ませるために来るのか?
僕は輸血パックじゃないぞ。
「じゃあ行くよ。血の槍」
手首から血が出ると長い槍に変形した。
これは魔力が必要と言うより血が必要だな。
何回も使えるような魔法ではないね。
「大丈夫なの?そんなに血を使って」
「一応大丈夫だけど、何回も使えない」
「そうだよね。ごめんね、無理はしないでね」
そう言うと血の槍は戻っていった。
やっぱり無理をしていたんだ。
申し訳ない……。
そんな時、エイミーたちが寝ていた部屋のドアが開いた。
「アンディー?」
「エイミー、起きたのか」
「うん、ここはどこ?」
「ここは私の家だよ」
リリスはエイミーに近づいた。
「私はリリス。よろしくね」
「リリスね、よろしく!私はエイミー、アンディのお嫁さんだよ!」
「お嫁さん?」
初対面の人にそれを言いますか。
「そうなんだ。幸せそうだね」
「うん!ねぇリリスはここに住んでいるの?」
「そうだよ」
「一人だと寂しくないの?」
「…もう慣れたよ」
悲しい話になってきた。
長く生きているせいで、知っている人はみんないなくなっていったんだ。
「じゃあ私たちと一緒に住もうよ!」
「……それだ」
まって、なんか勝手に話進んでいるんだけど。
「一緒に来たらこの木はどうするの?」
「この木ごと移動させる」
そう言うと木の中心に移動した。
何をする気なんだ?
「家はどの辺?」
「えっ?ここからだと東に40分ぐらい」
「…見つけた。何かにつかまってて」
「「えっ?」」
すると家は揺れ始めた。
「何!何が起きているの!?」
「僕にも分からないよ!とにかく何かにつかまって」
「分かった!」
「いや僕につかまっても!」
漫才している場合じゃないよ!
僕は必死に固定されている家具にしがみついていた。
家が揺れ続けること1分。
ようやく揺れは収まった。
「着いた」
「えっ、着いたってどこに……」
僕たちは外へ出た。
そこにはいつも見ている建物が建っていた。
それは僕たちが住んでいる家だった。




