第6話
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翌日、王都へ向かう為にブルース侯爵家を後にするが、昨日夜にブルース侯爵からアインは王都まで一緒に妻とアリーを連れて行ってくれないかと相談されたみたいで、アリー達と一緒に向かう事になりました。
今回の社交界は5歳になった子供がメインの為に連れ添う大人は当主本人ではなく、基本的に前当主か次期当主、もしくは夫人だけで連れ添うのが暗黙の了解であるらしく、王都へは第1夫人とアリー2人だけにお供を付けて王都へ向かわせる予定だったらしく心配していたそうだ。
ブルース侯爵は貴族の見栄か、ベート辺境伯家の馬車と同じサイズの6頭引きの馬車と馬を用意して専属メイド2名に御者兼任の執事2名とブルース侯爵家騎士団副団長含む10名で進む事になった。
貴族家として格がベート辺境伯家より少し上になる侯爵家の馬車が先を走り、200メド程離れてうちの馬車が後ろを追い掛けている様な状況だ。
距離の単位はセド、メド、キドで1センチが1セド、1メートルが1メド、1キロが1キド長さの縮尺は同じだ。
重さも単位は違うが比重は同じでグル、キル、トルという単位を使っている。
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日が中天になった時に昼食を取る為に休憩を挟んだが、道中は問題なく侯爵領を抜けて、今はダイン子爵領を進んでいる。
今日はアリー達と一緒にダイン子爵家に厄介になるが、次の男爵領を通る時は経済的な負担もあるので1度アリーとは別れ、隣接するガロン男爵領をアリー達が、グリン男爵領を俺達が別の街道に進みそれぞれ男爵領と騎士爵領を別に抜けた後、王直轄領地で合流して王都に行く予定である。
ダイン子爵家でも、直接的な話はなかったが、年代の近い子供同士で遊ばせて社交界前に少しでも顔合わせして面識を作ろうとしていた。
貴族の家の繋がりはそんだけ大事なんだと、俺は改めて実感した。俺もいつかはアインみたいにハーレムしたいと熱く夢見るアルベルトであった。
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自領を出て5日目になりました。
あと200メド程で、アリー達と別れる分岐の手前の街道脇で昼食の為にアリー達と一緒に休憩していると、俺の魔力感知に1キド前方の二方向から合計100体ぐらいの魔力が感知されたのでアインに伝えた。
アインからブルース侯爵夫人とブルース侯爵家騎士団副団長へ報告してもらい馬車を寄せて両家の騎士団で迎撃出来る準備を速やかに始めた。
アルベルトとローザはアインから初手の魔法の一撃をする様に指示を受けたがアルは初の実戦に緊張する。
緊張しているのがローザに伝わったのか、ローザが頭を撫でながら諭してくれた。
「アル、人を殺める可能性があるので無理はさせたくありませんが、もし盗賊や魔獣なら遠慮してはいけませんよ。やらなければ、貴方の大切な人や貴方自身が傷付き殺されるかもしれません。ちょっとだけ早いですが、いつかは経験する事です。私もアインも付いています。気を張り過ぎないようにね。」
「はい!、お母様、ありがとうございます。」
アリーや夫人、メイド達が馬車の中で待機して執事達が馬を守り騎士団達が馬車を背に半円に陣形を作ったところで先頭の集団が見えてきた。見晴らしは良い場所なので伏兵は居なそうだ。どうやら子爵領と男爵領を根城にしている盗賊団二つがそれぞれの街道から同じタイミングで来た様だ。
集団の先頭があと100メドに迫った時、アルベルトの雷魔法が炸裂した後にローザの風魔法が中心に吹き荒れた。
「雷よ降り注げ、サンダーレイン!」
「我が魔力よ、鋭い風の刃となり敵を切り裂け、サイクロン!」
「「「「「うぎゃー!?」」」」」
「母ちゃーん?!」
「「「「「痛えっー!!」」」」
「「「へぶし!」」」
1人変な事を口に出した賊もいたが、2人の魔法が浴びせられると盗賊達は半数以上が倒れている。半壊した盗賊にアインは追撃の号令を騎士団へ掛けた。
「敵は浮き足立った。総員、突撃せよ!」
アインの指示で騎士団は追撃する為に突撃した。盗賊は次々に血を流し動かなくなる。人だった物へと変わって行く様を見てアインは昼食で食べた物が胃の中から込み上げた。
初めて人を殺す様を目にした5歳の子供には辛い場面だが、隣で一緒に魔法を放ったローザがアルの姿に泣きそうな笑顔で頭を撫でると抱きしめながら背中をさすってくれた。
アルが少し落ち着いた所でローザはアルへ大切な事だと伝え始めた。
「アルベルト、貴方は貴族として、民の上に立つ者として、アインや騎士団の命を掛けて守り抜く姿勢に目を逸らしてはいけません。落ち着いたのなら、目を背けてはいけません。」
「はい…。」
「それに慈悲を掛けて今盗賊を逃すと、別の誰かが被害に遭います。今回逃した盗賊がもしかしたら明日私を慰み者にして殺すかもしれません。」
「はい。」
「アルはまだ幼くはありますが、聡明です。私が伝えたい事は理解出来たでしょう。まだ、敵はおります。目を背けずに状況を見守りましょう。」
「はい!、お母様。」
ローザからこの世界で生きて行くと言う事をアルベルトが学び、改めて貴族として決意を固めた。
事切れた盗賊が5割を超えた時に頭領と思われる2人の盗賊が撤退を指示すると、アインからアルベルトへ指示が来た。
「アルベルト!、先程の魔法で足止めしろ!」
咄嗟の指示に一瞬判断が遅れるが、先程よりも魔力を込めた為に高威力の魔法が退却しようとした盗賊に襲い掛かる。
「!、…はい!、サンダーレイン!!!」
激しい音と光が空間を覆い、土埃が晴れると残りの盗賊は全て地に伏せていた。ギリギリだが息はまだある様だが、騎士団達が頭領達以外の盗賊にとどめを刺していく。
アルベルトはその様子を泣きそうになりながら見つめていた。
頭領を拘束た後、移動する為の準備としてダイン子爵家へ盗賊の処理とアジトの壊滅を依頼する為にアインが書状を直筆して騎士へ渡し伝令を走らせた。
騎士達が邪魔にならない様に、死体を街道の脇へ寄せて身分証になる物を持っていないか確認と価値のある物を持っていないか探していた。
暫く呆然としていると、アリーと夫人が来てお礼を言いに来た様だ。
「アルベルト様、この度はアルベルト様のお陰で、怪我も無く無事にいる事が出来ましたわ。お助け頂きましてありがとうございます。」
アリーの言葉に自身がした事が間違いでは無かったと、救われたアルはアリーへ抱き締めて泣いていた。
『アル様?!、えへへー。』
「うっぐ…うっぐ…」
「あら、あら、アルったら。」
「奥様、改めてこちらからお義理父様にお話をさせて頂きご連絡させて頂きますわ。」
「まだ、5歳ですもの、無理もありませんわね。ですが、良いお話お待ちしておりますわね。」
アルは暫くアリーを抱き締めて泣いると、騎士団へ指示を終えたアインが戻ったが、アルの姿を見て頭に手を当て空を見上げた。聡明だがまだ5歳だった事に仕方がないと気持ちを切り替えてローザと今後について話し始めた。
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sideアリー
昼食を取る為に休憩をしていると、周りが慌ただしくなりました。騎士団副団長にお母様と一緒に馬車に急に戻る様に言われて折角、アルベルト様とご一緒出来ていましたのにと、嘆いておりました。
暫く経つと、大人数の盗賊が現れて襲って来ましたの。人数的にもこちらが不利でもう駄目ですわ。アル様とこれからでしたのにと、瞳に涙が溢れた時にアルベルト様とローザ様が魔法を放ち盗賊を半壊させましたわ。
『私の王子様…、アルベルト様は私の為に盗賊へ立ち向かってくれましたのね、ポッ。』
わたくしは、見惚れていたらしく専属のメイドに声を掛けられるまでアル様を見ていた見たいですわ。気付いた時には2人の盗賊が縛られていましたわ。
アルベルト様へお助け頂けた感謝をお伝えすべく、馬車を飛び出そうとした所でお母様に呼び止められました。
「アリー、アルベルト君の所に駆け寄りたいのね。」
「はい!、お母様。」
「それでわ、駆け寄る前にとても大切な事をお伝えします。」
お母様はアルベルト様が魔法を放ってからの事を改めて説明してくれました。私は更にアル様が私の王子様と確信していきますが、話が終わると私はどうして良いかわかりませんでしたわ。
直接的ではないかもしれませんが、自分が放った魔法により動けなくなった者が目の前で殺される姿を目を逸らさずに見つめ続ける事が、貴族として目を逸らしてはいけない事だと理解致しましたが、それを今のわたくしが出来るでしょうか。
お母様には手を取って感謝の言葉を述べる程に留めなさいとお話し頂きましたので、お母様と一緒にアルベルト様の許へ向かいましたの。
この後の出来事は、アリーにとって掛け替えのない想い出になりましたわ。
1人目のメインヒロインとなりました。
まだ幼いので、キャライメージは確定してはおりません。