対鬼少女との出会い
どうぞ、短いですが。楽しんで行ってくれると嬉しい限りです。
「宏一‥」
私の弟。唯一の肉親。死んで、今日で丁度2年‥。
2、3年前から突然出てきた恐ろしき狂気『鬼壊』その力は無限に近く、例えるなら‥そう、蟻と人間ぐらいの力の違いがある。
私の弟は2年前に地中型のラヴンシクカに『食』された。
もうすぐ、幸せを手に入れられるはずだったのに。
「どうして、私達は報われないの‥?」
喋らない、墓に問いかける。
ガシャンッ
目の前の墓が崩れた。いや、崩れたというよりは、『壊れた』と言った方が正しい。
「え‥‥?」
驚いて、上を見上げる。すると、最も嫌うべきであるモノが視界に入った。
フォオオオ‥
人型の鬼壊だった。私を見るなり、手とは思えない、触手を伸ばした。
「嫌っ!」
ハッとして、形見のナイフを投げた。すると鬼壊は一瞬怯んだ‥‥と思った。が、すぐに回復してしまった。
「ぐっ‥っぁ」
触手でぐるぐる巻きにされ、捕まえられてしまった。
湿った、嫌悪感を覚える形の顔を近づけられる。
『食』される‥!
「仇っ!」
ジュワァ‥
私を掴んでいた触手が、何者かによって消滅した。
グォアァァアア‥
自分の片手を失った鬼壊は苦しみながらも、もう片方の手で、また私を掴もうと伸ばしてくる‥。
「まだ壊れないのか、これはどうだ!!」
鬼壊と対等に戦えるその人は、鬼壊に向かって、走りだす。そして、武器なのか、何かの液が入った瓶を投げる。
パリンッ
瓶が割れる軽い音と共に、液体が鬼壊に掛かったと思ったら、さっきと同じように、消えてしまった。
残っていたのは人型の鬼壊特有の人間の骨(一部)だった。
私はハッとして倒してくれた人にお礼を言う。
「あ、あのっ!‥助けてくれて、ありがとうございます‥」
服をみるに、先程の魔法少女のような服とはちがい、普通のどこにでもあるような服を着ていた。
「ん?お礼なんていいよ。私が勝手に来て、勝手に復讐しただけだしぃ。‥‥でも、感謝の気持ちがあるなら奢ってちょ☆」
ーーーなんか、現金な人だなぁ‥
☆★☆★☆★
私とその人は、近くのカフェに来た。無論、私の奢りで。
「私、高野千佳。高3。よろしくね。」
「あ、えと私は矢口海、です。高1です。よろしくお願いします。」
私は高野さんが、成人しているとばかり思っていたので、とても驚いた。
高校生とは思えないほど、大人っぽい魅力に、ひそかに憧れを抱く。
「というか、高野さん‥」
「千佳でいいわ。‥‥呼び捨てに抵抗があるのなら、さん付けでも。」
「千佳さん、どうして、あんなに鬼壊と対等に戦えるのですか?普通の人間なら、攻撃1回でさえ、出来ないのに‥。」
そうだ。そうであるはずだ。鬼壊の力は無限に近く、これまで挑んできた人々は、皆亡くなっている。なのに、この目の前の女性は、一人で倒したというのだ。
「あはは。すごい?これが私の力‥‥っていうわけでもないんだけどね。そうだねぇ‥‥話すと、長くなるけど‥‥?」
その続きは言わずとも伝わってくる。
コクコク。
ドキドキして、声を出すのもままならなくて、取り敢えずうなずいた。
「うん。じゃあ事の発端ね。幼いころ私には、まあ当然だけど両親が居たの。普通の、どこにでもいるような家族‥でもその普通が楽しかった。なのに、その幸せはある日突然‥‥崩れた。旅行先で寝ていて、目覚めたら真っ先に視界に入ったのは両親を『食』している空型の鬼壊。どうして私だけ『食』されなかったのかが、不思議よね‥。」
どうやら、千佳さんは、私と同じような体験をしていたらしいのだ。興味をそそられ、少し前かがみになりながら熱心に話を聞く。
「そして、一週間前。この養子暮らしにも慣れたこの頃、一通の手紙が届いた。『鬼壊を倒すため、対鬼少女になってみませんか? 呪文はラヴンシクカです。』ってね。私は悪戯だと思ってた。だから、面白半分で『ラヴンシクカ』って言ってみたの。そしたら‥‥」
「本当に対鬼少女になっていた‥と?」
「そうそう。信じられないでしょ?」
千佳さんはケラケラと笑っているが、私は信じられた。
その理屈だと、辻褄が合う。信じられないほどの力があることも、服が変わっていたことも。
なによりーーー
「もしかして、対鬼少女に変身?すると、人格が変わるんですか?」
「おっ!勘良い〜!そうそう。正しくは、裏人格になるの。私の場合‥『復讐鬼』かな。まぁ復讐って言っても復讐復讐言って鬼壊倒すだけだよ。」
「復讐‥‥心の中に秘めている思い、秘密が人格になるんでしょうか‥?」
「まぁ私も他の対鬼少女見たことないし、いるかもわからないから‥‥でも私はそう思ってる。」
ーーーーーー秘密。
私が対鬼少女になったらどのようになるのだろうか。
そんなことを考え、ぼーっとしているうちに、墓の修理を頼みに行くことを思い出した。
千佳さんはじっと見つめてくるだけだ。
「す、すみません。お墓の修復を頼みに行くの忘れていたのですが‥。」
「おっ。そうか、あそこ墓地だったけ。じゃ、お先〜。」
意地でも奢らせるつもりらしい。頭を掻き毟りながら去っていった。
不思議な人と出会ったと、心底思った。
初投稿!ずっと悩んだ挙句、こんな小説になっちゃいました。
まだまだ初心者なので、落ち度がたくさんあると思いますが、完結できるように頑張ります!
書きだめていた分を出し終えたら、ぼちぼち更新していきたいと思いますので、見てくれている人がいたら、気長に待っていてください。