念願が達成?
「ごめん。よく聞こえなかった。もう一回言ってくれない?」
俺—翔野陽祐は目の前の幼馴染の真白羽亜に尋ねた。
「だーかーらー!一緒にFSOやらない?」
FSO-Freely Skill Online-は、世間で話題になっているフルダイブ型VRMMOだ。
まあ早い話、剣と魔法のRPGの世界に入って冒険するものである。
サービス開始間近とニュースに取り上げられる程だ。しかし,,,
「するにしてもヘッドギア含めて十数万円するじゃん。それにどこ行っても売り切れだって。」
そう。話題になりすぎて、どこの電気屋や、おもちゃ屋に行っても品切れ状態。予約しても手に入るのは半年後、俺もやっては見たいけどできないのだ。
「お金もないし、無理だって。悪いけど、他の人と遊んでよ。」
「ふっふっふ、陽祐ならそういうと思ってたよ。これを見てもそう言えるかな?」
「何だよ、これって。」
「じゃーん!FSOヘッドギアセット~♪」
ドラ〇もん口調で言うな,,,って、え?ちょっと待て、何で羽亜がそんなもん持ってんの?」
「え?私がFSOのβプレイヤーだからだけど?」
「は⁉羽亜βやってたの⁉」
「うん、それでまあまあいい成績だったから『御友人と遊んでください』って運営から送られて来たんだ。」
「へー、でもこんな高いの貰えな,,,」
「陽祐に問題です。」
ない、と言い切る前にそう言われた。
「今日は何の日でしょう?」
「えっ?今日?今日か,,,なんかあったっけ?」
今日は7月20日、明日から夏休みだから明日ならわかるんだけど,,,
「もう!何でわからないの⁉陽祐の誕生日でしょうか!」
考え込んでしまった俺にあきれて怒り気味に答えを教えてくれた,,,っおい、俺よ。なぜ自分の誕生日を憶えてないんだ。
「あー,,,すっかり忘れてた。で?俺の誕生日と何の関係が,,,」
「誕生日に決まってるでしょ!馬鹿!」
ガンッ
「痛っ!何で蹴るんだよ、まったく,,,」
いつものことながら羽亜の蹴りは効くな,,,
「,,,で、俺への誕生日プレゼントだっけ?いくらなんでもそんな高いのは,,,」
「明日は私の誕生日。」
・・・こいつまた俺のセリフぶった切ってきやがった。
「サービス開始のの日が私の誕生日なの。だから陽祐と一緒にするのが私の誕生日プレゼントってのはダメかな?」
「でもなぁ,,,」
それでも渋っている俺に羽亜はため息をついた。
「はぁ~しょうがない。こういうネタバレは避けたかったんだけどなぁ…」
「…ネタバレ?」
「うん、FSOって『剣士』とか『魔法使い』とかっていうJOB《職業》とかSJOB《副業》などがあるんだけどね,,,」
羽亜は勿体ぶるようにそこで一度切って、こういった。
「その中に『魔物使い《サモナー》』っていうJOBがあるんだけど、どう?興味ない?」
「・・・何だと?詳しく聞こうか?」
俺が釣れたことが分かったのか、心底嬉しそうに笑いながら話し始めてくれた。
「FSOもやっぱりファンタジーだから、魔物が出てくるんだ。その魔物を調教して仲間にすることができるの。まぁ制約もいろいろあるんだけれどね?で、ここからが陽祐には重要になってくると思うんだけどね,,,」
俺は思わず生唾をゴクリと飲み込んだ。
「現実世界でのアレルギーとかは全然関係ないの。たとえ、現実で動物アレルギーを持ってても。つまり、FSOの世界で獣型の魔物をモフッてもアレルギー反応は起こらないの。どう?この情報を聞いても断る?」
「,,,わかった、やろう。その情報を聞いてもやらぬはモフラーの恥だからな!」
「モフラーって…モフッたこと一度も無いのに?」
「仕方ないだろ、アレルギーなんだから!」
そう,,,おれはアレルギーの為どれだけ動物が好きでも、モフることができない。でも、羽亜の情報が本当なら,,,❕
「その情報,,,信じていいんだな?」
「もっちろん♪信じて信じて!で、どうする?やる?」
「ああ、やろう。ありがとな、羽亜。」
「ふふん、もっと感謝しなさいよ。あっ、一応言っとくけどソロプレイでもいいけど、明日は一緒にやらなきゃ怒るからね?」
「うっ・・・わかった。」
こ、恐えー,,,こいつの怒るは半端ねぇからな・・・
「じゃ、はいこれ。サービス開始は朝10時だからね!」
「わかった。」
さあ、これで俺の念願『動物をモフる』が達成できそうだ。うわっ、そう思うと凄く楽しみになってきたぞー!