プロローグ
~冒険者達は抗っていた。全てを破壊せんと欲す悪魔に。その悪魔の一撃はタンクであろうともHPが半分以上削られ、その悪魔の唱える魔法は複数の冒険者のHPを削る。大規模戦闘であろうともその悪魔のHPを半分も削ることができない。ここまでの戦闘でポーション等を使い果たして尚である。そこにあるのはまさに絶望であった。~あのピエロが登場するまでは~
「いやー、それにしても辛気くさいですね~この戦場は,,,そう思いませんか皆さん?」
道化はおどける。どこまでも朗らかな声で。
「一発かましましょうか!ど派手なショーを。」
道化は笑う。仮面の下で。
「LadiesandGentlemen!」
冒険者達は、その口上が聞こえた瞬間、戦線から離脱する。これから始まるであろう惨劇に巻き込まれないために。
その一方で、悪魔は攻め立てようとしていた。背を向けた敵を攻めぬ馬鹿はいないとばかりに、誰かれかまわず攻撃していく。
「おやおや、ショーの前の粗相はご遠慮くださいクソ野郎《お客様》?乌鴉『DrillingBeatSpeedOfSoung《音速で穿つくちばし》』」
「グアー!」
道化がそう言うと、側にひかえていた銀鴉が一鳴きして、悪魔に突進した。その速さは一瞬で音速に達し、悪魔の肩を貫通した。
「GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」
流石に肩を穿たれては、悪魔も攻撃をやめるしかなっかたらしい。呻き声をあげながら悪魔は一歩だけ後退する。その悪魔は自らの肩を貫いた下手人を睨みつける。下手人である鴉は飄々とした様子で道化の肩に止まっている。また、その鴉とは別に二頭の魔獣が控えている。
一頭は狩猟猫はこちらではなく主であろう道化に頭をすりよせて甘えている。まるで悪魔が居ないかの様にふる舞っているのが気に障る。
もう一頭は三日月熊の変異種のような熊は油断なくこちらを見ている。相手をすればこちらもただでは済まないと思える程度の敵に、思わず身震いをしてしまった。
その主であろう道化は戦場には似合わぬ白スーツにスーツと同じ白のハット帽。顔には道化の仮面をつけている。ハット帽から僅かに見える赤の髪や、仮面から覗く碧眼が印象深い。
「さて、少しは静かになったようなので改めて,,,さあ皆さん!今回ご覧にいられますのは、『驚嘆の《オブ》虐殺劇!魔獣達の狂演!』この悪魔がどのように私の魔獣と戦うか、お楽しみください!」
そこで悪魔はついに怒った。このようなふざけた道化に馬鹿にされている事に気づき、悪魔の咆哮が響いた。
「GUOOOOOOOOOOOOO!!!」
「これより『魔獣達の演武』の始まりを宣言します!」
それと同時に道化は笑う。
この物語は彼の歩みの歴史である。
「申し遅れました。私、『残虐な道化師』愚者と申します。以後お見知りおくことはございません。冥土の土産となり果てますから」