3.俺とナンパとクラスメイトと
ちょこしゅーです。
ここからやっと物語が動き出します。
学校からの帰り道。
沙織の寄り道も済まして、家に帰ろうとふたりで歩いていた。
そこで、沙織が何かを見つけた。
「ねぇ、伊織。あれ・・・・・・」
沙織が指をさした方を見る。
数人の男に1人の少女が話しかけられていた。
「ナンパか?」
「そうみたい。助けてあげよう?」
「うーん・・・・・・」
女子が怖いのを俺はよく知っている。
あれくらいどうにかなるんじゃないか?なんて短絡的なことを考えていた。
「伊織っ!早くしないとっ」
少女は男達に腕を引っ張られたり肩を抱かれたりしている。
当たり前だが高校生にもなれば女子よりも男子のが力があるのは当然だ。
女子への苦手意識がそんなことを忘れさせていた。
「くそっ」
俺は走り出した。
女子は怖い。でも怖いからといって見捨てるのは違うと思った。
10秒も経たないうちにその場に着いた。
「あ?誰だお前」
男のひとりが思いっきりガンを飛ばしてくる。
あれ?こういうときどうするんだっけ?えっと、ナンパから女の子を救うには――
「お、おれにょっっ、か、彼女に何か用かっ!?」
彼女とか何言ってんの俺!?しかもテンパって噛んだしっっ だせぇっ
「なんだよ彼氏連れかよ」
「うぜー」
「もう行こうぜ」
ふぅ。なんとか男達は追い払えたみたいだ。
俺の恥と引き換えなら安いもんだよね・・・・・・?
「だ、大丈夫?」
そこにいた少女に聞いてみる。
近くで見ると驚いた。
ものすごい美人だ。
身長は沙織より少し高いくらいか。
スラッとしててモデル体型みたいだ。
胸は・・・・・・まぁちょっとはあるかな。
黒髪ロングの髪型も彼女に似合っている。
「勝手に人のことを彼女にしないでもらえるかしら。」
「え゛っ」
びっくりした。すごい冷たい声。助けてあげたのにこんなこと言われるなんて・・・・・・
「ふふっ、冗談よ。助けてくれてありがとう。」
「あ、ああ。どういたしまして。」
冗談か・・・・・・。 真顔で言うからすごく分かりづらいよ。その後の笑顔がすごく可愛かったから許すけど。
「伊織ーっ、大丈夫ー?」
沙織がこっちに駆け寄ってくる。
「ああ、大丈夫。」
「なら良かった!――――あれ?ナンパされてたのって清水さん?」
「清水?」
「そう。清水玲さん。同じクラスだよ?」
「そうなのか。女子は全然覚えてないや。」
助けた少女は清水玲というらしい。同じクラスと聞いて驚きだ。
「あら、山前さん。その人とは知り合い?」
「うんっ 幼なじみだよっ」
「そうなの。仲が良さそうだから彼氏かと思ったわ。」
「か、彼氏なんて、そんなっっ」
沙織が赤くなった。
なんで赤くなるのか。よくわからん。
「伊織君?」
「ん?」
「さっきは本当にありがとう。お礼がしたいのだけれど、何かして欲しいこととかある?」
「大したことしてないし礼とか別にいいよ。」
「それでは私の気が収まらないわ。なんでもいいから言ってちょうだい。」
「いや、ほんとにいいから。大丈夫だから。」
こんな美人にお礼をされるというのは嬉しいが、実際これ以上見知らぬ女子と話すのはキツかった。
「清水さんっ、伊織は女の子が苦手だから長く喋ったりするのはちょっとダメなんだ。」
「あら、そうだったのね。伊織君ごめんなさい。」
「いいよ別に。知らなかったならしょうがないし。」
「ありがとう。ひとつ気になるのだけれど、山前さんとは喋っても大丈夫なの?」
「ああ、沙織とは幼なじみだから昔から一緒にいるしな。問題ない。」
「なるほど・・・・・・」
「伊織の女子苦手はやくなおして欲しいんだけどねぇ」
そんなことを沙織は言う。
なおしたくてもなおせないものはしょうがない。
トラウマみたいなもんだからな。
怖いものは怖いのだ。
「それなら私が協力するわ。伊織君の女子苦手克服に。」
「「えっ」」
「私も助けてもらったんだし、今度は私が助ける番よ。」
「い、いや、助けたなんて大袈裟だよ。俺は大丈夫だなら気にしないで。」
「そ、そうだよ清水さんっ 女子苦手なら私が克服させるから大丈夫だよっ」
急な提案に驚く俺と沙織。
なんで沙織が驚いたのかわからないが。
てか沙織の発言にも驚いた。
女子苦手を克服させるつもりだったのか。初耳だ。
今日は驚いてばっかだな。
「でも幼なじみの山前さんは普通に話せるだろうし、他人の女子が必要だと思うのだけど」
「た、確かにそれはあるけど・・・・・・」
「なら決まりね。今日からよろしく、伊織君。」
そう言って清水さんは俺の腕に抱きついてきた。
「えっ!? 清水さんっ!?」
これはヤバイ。女子とくっついたりすると多少気持ち悪くなる。
くっつきすぎると貧血のような症状もでる。
ちょっとクラっとしてきた。このままぶっ倒れるのかな俺・・・・・・
「だめぇーっ!」
沙織が俺から清水さんを引き剥がす。
なんとか助かった。ナイス沙織。
「何してるの清水さん!」
「何って腕に抱きついただけだけど。」
「だけって・・・・・・。 女の子が簡単にそんなことしちゃだめだよ!」
「私は伊織君の女子苦手をなおすためにやっただけだわ。さっき助けられたお礼よ。彼の腕に抱きつくことはもはや義務よ。必然よ。」
誰が決めたよそんな義務。
「でもっ、でもっ・・・・・・」
沙織が目尻に涙をためながら反論しようとしている。
がんばれ。沙織。
「今日はこのくらいにしとくわ。明日からよろしくね伊織君。」
そう言って清水さんはどこかへ行ってしまった。
「うう・・・・・・」
沙織は悔しそうに涙をこらえている。
とりあえずここにいてもしょうがないので、沙織をなだめて帰ることにした。
しばらく歩いて、沙織の家に着いた。
「じゃあな沙織。また明日。」
そう言って帰ろうとしたとき、背中にドンッと衝撃があった。
振り返ると沙織が抱きついている。
「沙織っ!?」
「――――する。」
「なに?」
「私も伊織の女子苦手克服に協力するっ!」
「はぁ!?」
明日から大変な毎日になりそうだ・・・・・・