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ACE Girls  作者: ふろいむ
第七章 志願
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7 - 4 出征準備

(戦闘機に詳しい方向け)第5世代戦闘機は大量生産されている世界です。

(戦闘機は良く分からない方向け)第○世代戦闘機などの説明はあまりガッツリ読まなくても大丈夫です。


亜美の家族はみんないい人ばかりです。

 国連総本部に向かった日の夕方。亜美はリビングに家族を集めていた。


「な、何を言ってるんだ?」

「何度でも言い直すよ。私、国連軍に参加してパイロットとして戦ってくる。地球を守るため、祐希を助けるために」

「それは亜美がやらなくちゃいけないことなの? 軍人さんに任せるべきでしょ?」

「おねーちゃん、死んじゃ嫌だよ」


 父親、母親は亜美の唐突な言葉に狼狽えていた。弟の日晴(ひばり)は亜美の言葉をまだ完全に理解できていないが、危険な所に行くということは会話の雰囲気で掴めているようだ。


「まずは亜美の話を聞こうか。なぜそういう結論になったのか、亜美のことだからお父さんたちを説得する準備は出来ているんだろう?」


 今まで20年以上一緒に暮らしてきた家族だ。無駄な遠慮などしない、本音の語り合いは夜まで続いた。


「亜美の話は良く分かったよ。その気持も、亜美が行かなければいけない理由も。それに信頼できる人がいるんだろう?」

「うん。信頼できる仲間に、信頼できる指揮官がいる。自分の腕も信頼してるし、油断は絶対にしない。祐希を助けて、絶対に生きて帰ってくる」

「それでも、私は心配で……」


 母親は途中から涙を流していた。日晴は泣き始めたお母さんを励まそうと横で背中をなでている。


「出来る限り連絡は取るから。私、もう覚悟を決めたの」


 父親と母親が目を合わせた。父親は頷き、亜美の方に向き直る。


「亜美が覚悟を決めたのなら、お父さんとお母さんは全力で協力するよ。日晴、お前もな」

「おねーちゃん、頑張ってね!」


 亜美は泣きそうになるのを堪えて頷いた。




◇◇◇




 同じ日の夜。トキワ隊のメンバーはそれぞれ両親と話し合いをしていた。霞、美穂、未来も亜美と同じく長い説得の末、自分の覚悟を認められ、そして必ず生きて帰ってくると約束をしていた。


 さくらは遠い所に住んでいる両親に電話をかけ、自分が戦いに行くことを伝えた。両親からの


「先生になった時と同じ声してるよ。生きて帰ってくるって約束、絶対に守ってね」


 という心強い言葉に、さくらは涙を流したのだった。




◇◇◇




 亜美が説得した日、その夜は忙しかった。説得が終わった後、すぐに自分の荷物をまとめる必要があったのだ。


「この服と、この下着と……」


 大体の準備が終わった頃、ドアがノックされた。廊下に出てみると、そこに立っていたのは日晴だった。


「おねーちゃん、明日出ていっちゃうの?」

「そうだよ。ごめんね、日晴。急にお姉ちゃん居なくなっちゃって」

「……大丈夫。日晴、もう10歳だもん」

「日晴……」


 そのまま日晴を部屋に入れ、久しぶりに色々と話をした。日晴が学校の行事で昔の建物を見に行っただとか、授業で面白い実験をやっただとか、面白い転校生が来てすぐに仲良くなれただとか。


 一緒にゲームで遊び、もう寝ないといけない時間になるまでずっとお喋りをした。


「もう寝ないといけない時間だよ、日晴」

「……」

「日晴?」


 俯いたままの日晴。亜美は不思議そうに日晴の顔を覗き込む。


「ひば……!」


 日晴は泣いていた。泣かないように頑張ってはいるが、こらえきれない涙がぽたぽたと膝に落ちている。


「お、おねーちゃんとっ、もう、一緒に遊べないって思ったらっ……」


 寝る前になって、明日以降の事を考えてしまったのか。さっきまでは笑顔で一緒に遊んでいた日晴が、今は涙を流して泣いていた。


「日晴、おねーちゃんは絶対に生きて帰ってくるからね。それまで、お父さんとお母さんの事、よろしくね」

「絶対に帰ってきてね……?」

「絶対。絶対に帰ってくるよ」


 亜美は日晴と目を見合わせる。ようやく泣き止んだ日晴。


「一緒に寝ていい?」


 日晴は、まだ涙の残った目で亜美を見ながらそう言った。




◇◇◇




 次の日。出発は夜なので、それまでにやるべきことを終わらせなければいけない。昨日のうちに荷物はまとめ終わっていたので、亜美は家族と思いっきり遊ぶことにした。


 まずお母さんのいつもの朝食をゆっくり時間をかけて味わい、お父さんの運転で少し遠い所まで出かける。


 毎年初詣で参拝する所。漢字は違えど読みが同じ、鹿島神宮へと向かう。


「鹿島神宮はな、武甕槌(たけみかづちの)大神(おおかみ)を祀っているんだ」


 初詣のたびに何回も聞かされた鹿島神宮のお話。


「武甕槌大神は軍神、武神とも言われているんだ。一説には、最も強い武神だと言われているほど。そして、雷の神でもある。雷のように鋭く速く勢いがあって、最強の力を持つ神様となれば今の亜美にはぴったりだろう?」


 いつもは聞き流している亜美だったが、今日は違かった。


「うん。しっかりお願いしないとね」

「お父さんもお願いしておく。亜美が向こうに行った後もずっとお願いしておくからな」

「ありがとう、お父さん」


 鹿島神宮に着いた家族四人は、そこでお祓いをしてもらい、必ず生きて帰れるように、と願ったのだった。


 鹿島神宮から帰り、家で夕飯の準備を進める。亜美は持ち物の最終確認をして、部屋をもう一度掃除した。


「あ、これ……」


 掃除の途中でベッドの下から出てきたのは、一年前に家族で旅行に行った時に取った写真だった。大きな滝を見に行って、その滝をバックに撮ったものだった。


 亜美はその写真を丁寧に樹脂ペーパーで包み、カバンに入れた。


「おーい! ご飯できたよー!」


 一階のリビングから母親の声が聞こえる。


 こうやって呼ばれるのも暫くお預けかぁ。


 そう思いながら一階に降りていった。




◇◇◇




 テーブルには亜美の好きなものがずらりと並んでいた。少し形が崩れたものもあるが、日晴が頑張って作ってくれたんだなと思うと笑顔がこぼれる。


「どうだ? その回鍋肉は俺が作ったんだ」

「そのハンバーグは日晴!」

「他にも色々あるから、ゆっくり食べて頂戴」


 亜美はお腹いっぱいになるまでたくさん食べた。一口一口味を噛み締めながら。家族との会話を楽しみながら。


「ごちそうさまでした」


 ご飯を食べ終わり、シャワーを浴びた亜美は荷物を揃えてその時を待つ。インテリデバイスには迎えがあと何分で到着するかが表示されていた。数字が五分、四分と減っていく。


「くれぐれも、気をつけてな」

「お母さんもここで頑張るから。お家のことは安心して行ってらっしゃい」

「おねーちゃんの分も日晴が頑張る!」

「ありがとう。絶対に帰ってくるからね」


 ちょうど時間が0分になった。微かに車の音が聞こえてくる。


「じゃあ……」


 振り返って家族を見る。心配そうな父親、昨日とは打って変わって笑顔を見せている母親。覚悟を決めた日晴。全力で背中を押してくれた家族の為にも絶対に負けられない。


「行ってきます」


 亜美は、大きな一歩を踏み出した。




◇◇◇




 家の外に黒い車が停まっていた。前席には大吾が乗っている。


「おまたせ。他のみんなも別々の車で迎えに行ってるところだ。荷物はちゃんと持ったかい?」

「大丈夫です。よろしくおねがいします」


 亜美が手に持っているバッグには、二つのお守りが付いていた。一つは鹿島神宮で買ったお守り。もう一つは昨晩のうちに母親が作ってくれたお守りだった。


「それじゃ、出発するよ。着くまで少し時間がかかるから、寝てても構わないよ」

「大丈夫です」


 自動運転で進む車は、国連軍の空軍総本部に向かっていた。夜の道を走る車は、一切揺れを感じず、車内もとても静かだ。


「亜美君は、ちゃんと家族に話してきたかい……って、聞かなくてもその顔を見れば分かるね」

「ちゃんと話してきました。お母さんには泣かれちゃったけど、最後は笑って送り出してくれました」

「亜美君の意思を尊重してくれたんだね。良いご家族だ」

「はい……本当に感謝してもしきれません。絶対に生きて帰ろうって思いました」

「それが一番の恩返しだと思うよ」


 亜美は、車の中で第9世代戦闘機について調べていた。まだ知らないことがたくさんある。今のうちに調べられる範囲で調べておこうと大吾にアクセス権を貰って資料を読んでいたのだった。


「第9世代戦闘機とは言ってますが、新しい形の戦闘機を作るわけじゃないんですね」

「ああ、いや作る予定ではあるんだよ。ただまだ完成していないだけでね。このフルダイブVRという技術の可能性を出来る限り引き出そうとテストを重ねていくうちに、プロジェクトが大きくなりすぎちゃったんだ」


 第9世代戦闘機の特徴は、なんと言ってもその内部にある。第4世代戦闘機から第5世代戦闘機に移り変わった頃、世代間の違いは特に外形に現れていた。ステルス性を突き詰めた第5世代戦闘機が主流となった時、ステルス性をそこまで考慮していなかった第4世代戦闘機をそのまま流用する事が出来なかったのだ。


 そのため第4世代戦闘機は、第5世代戦闘機が出てからは次第にその数を減らしていった。生き残ることが出来なかったのだ。


 そして第5世代戦闘機から第6世代戦闘機に移り変わった頃。この頃はレーダーの発達によってステルス性よりも機動性、速度を重視する傾向があり、ステルス性を捨てて機動性に全力を注いだ戦闘機が作られた。


 しかし、第5世代戦闘機もそれなりに機動性を持っていたので、そのまま第6世代戦闘機と肩を並べて戦うことが多かった。整備性やパイロットの熟練度は、新参戦闘機と比べれば天と地ほどの差があったからだ。


 第7世代戦闘機は推力、つまりエンジンに革命が起きた。対消滅を用いた低コスト高エネルギーのエンジンが開発されたのだ。逆に言えば、エンジン以外はそれほど変わらなかった。そしてそれは第6世代戦闘機の機体をそのまま流用できるということであり、NF-0(新型の戦闘機)が作られはしたものの、ここでも前世代戦闘機と肩を並べることが多かった。


 第8世代戦闘機が出た頃、新素材の発見が相次いで戦闘機に使われる素材も変わっていった。3割減という大幅すぎる減量に、前世代戦闘機は機動性でどうやっても勝てなかった。ここで久方ぶりに戦闘機の大幅な入れ替えが起こる。世界中の戦闘機が第8世代戦闘機に置き換わり、武蔵国の戦闘機もNF-7とNF-70の二つに置き換わった。そして現在に至る。


「それじゃあNF-7の中身を第9世代戦闘機に合わせて改造するということですよね」

「そういうことになるな。でもNF-7だけじゃないんだ」

「他の機体でも同様に改造出来るんですか?」

「ああ。でもそのまま中身を変えるには不都合な機体もある。少し外形を変える機体も出てくるだろうね」


 亜美はどの機体に乗るのかを考えていた。今はNF-0に乗っているが、それはゲーム中の性能が気に入っているからだ。実際の性能はゲームと同じだとは限らない。慎重に選ぶ必要があるなとずっと考えていた。


 車は暫く走り日付が変わる頃、空軍総本部の前に到着した。降車して荷物を預けると、すぐに近くの寮へ案内される。これから亜美たちはこの寮で暮らすことになる。


「明日0(マル)7(ナナ)0(マル)0(マル)に寮の一階ロビーで集合だ。荷物整理は明日で構わないから十分に睡眠をとってくれ」


 既に着いていた霞たちと合流し、大吾から明日の予定を伝えられる。正式には明日からではあるが、同じ組織に所属することになったので敬語も抜けていた。


 寮母さんに説明を受けながら亜美たちはそれぞれの部屋で寝ることにしたのだった。

誤字脱字、おかしい点などがありましたら指摘していただけると恐縮です。また、是非よろしかったら感想、レビュー、ブクマ、評価の方をよろしくおねがいします。とても励みになります。ここまで読んでいただきありがとうございました。


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