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ACE Girls  作者: ふろいむ
第七章 志願
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7 - 2 助けたい想い

ラジル大陸はアマゾン川があるあの大陸です。アフカ大陸はナイル川があるあの大陸です。


意外とラジル大陸と南極大陸って近いんですね。

「私も付いていきます!」


 未来は、亜美と霞の話を聞いた途端、立ち上がりながら叫ぶ。


「未来ちゃん、ここ喫茶店だから静かにね」

「あっすいません……」


 すごすごと座る未来の隣で、俯いて何も話さない美穂。大吾と話し合いをした次の日、霞の提案で全員で話し合いをすることにしたのだった。


「もちろん全員で行く必要はないし、私は出来るなら二人には残っていてほしいの。でも何も言わないで決めるのは良くないと思って」

「特に、未成年の二人はお家の人の許可が降りないとダメだかんね」


 法律では成年になると同時に、自分の行動決定に親の許可はいらなくなる。未成年でもほとんどは要らないが、いくつかは保護者の許可が必要な場合がある。そしてしっかりと調べてはいないが、志願には保護者の許可が必要だということは容易に推測できた。


 美穂と未来はまだ未成年である。美穂は今年の誕生日で18歳になって成年になるのだが、今の時点ではまだ未成年だ。


「私は……私も行きます。私だってトキワ隊の一員です。祐希先輩を助けたいし、このままここで待っていても今のままじゃ家族が危ない……なら私に出来ることをやりたい。それに危なっかしい未来を守らないとだし」

「危なっかしくないよ!」


 美穂も覚悟は決まったようだ。そこに、さくらが遅れて到着する。なんの話をするかまだ知らされていなかったさくらに亜美が説明する。


「そう……私は賛成できかねます。一度危ないからって理解してくれたと思ってたのですが」

「でも! 祐希を助けるにはあいつらを倒さなくちゃ! 今のままじゃ自分たちだっていつまで安全でいられるか分からないんですよ!」

「鹿嶋さん、少し冷静になりましょう。何もしない、とは言ってません。私たちが出来る範囲で、求められている範囲で頑張る、それが重要なんです。自分の実力を過信して過剰な義務を自分に課すのは愚か者のやることです。授業で話したでしょう?」

「過信……じゃあ、先生は私が力不足だと言うんですか? WACで優勝したんです! 実力は十分にあると自負できます!」


 立ち上がって身を乗り出す亜美。


「それは相手が弱かったからです! ……鹿嶋さん、今までにMAF(大吾のクラン)相手に勝てたことは?」

「……それは、無いですけど」

「その大吾さんが武蔵国国防軍だったんですよね? 国防軍の人に勝てない私たちが、国防軍が苦戦する相手に勝てると思いますか?」


 そんな亜美に対し、さくらは少し強めに諭した。亜美は何も答えられないまま座り込む。他の3人は俯いたままだった。


「私だって一緒に飛んでいるんです。みんなの実力がとても高いことくらい分かってます。でもそれとこれとじゃ話は別です」


 さくらはそこで一旦話を止める。畳み掛けるように話しても良いことは無いと分かっていた。一旦考える時間が必要だろう、と頼んでおいたアップルティーに口をつける。




「それじゃ……それじゃ……祐希が……っ!」


 さくらはハッとした。今まで泣いたところを見せたことのない亜美が(実際、人前で泣くとすれば霞の前だけな亜美が)涙を流していた。


「先生だってどうにかしたい。でも出来ないことを無理してやってもいい結果は得られないんです」


 そして、しばらくして泣き止んだ亜美が一旦帰りますと立ち上がるのをきっかけに、一度ここで解散することになった。




◇◇◇




「(私、嫌われちゃったかもしません。でも、生徒の安全を守るためには、たとえ嫌われても止めなくちゃいけない時だってあります。今回だって……)」


 さくらは自室のベッドで仰向けになりながらインテリデバイスをいじっていた。BSSをやる気にもなれず、眠くもなく、かと言って運動する気分でもない。ただ横になっていたい、そんな状態だった。そして今日の出来事を振り返っていた。


「(鹿嶋さん、そこまで思いつめていたなんて……アフターフォローが必要そうです)」


 元気が取り柄で一番の特徴な亜美が泣いて悔しがっていた、それだけで亜美の心境は十分にさくらに伝わっていた。


「(今日はこれ以上悩んでいても仕方ありません。そろそろ寝ましょうか)」


 さくらは毎日、寝る前に今日のニュースをざっとチェックする習慣をつけていた。今日も例に漏れずニュースサイトをチェックしていく。


「(あ、あの条例がやっと通ったみたいですね。かなり問題視されてましたし、良かったです)」

「(今日も事故はなし、と。安全は良いことです)」


 色々なニュースを見て回るが、今日のニュースは昨日までと比べると全体的に少なかった。


「(何故こんなに記事が少ないのでしょう……?)」


 さくらは、最後に『南極戦争』のタブを開く。エイリアンが南極から攻めてきたこの一連の戦争を国連は南極戦争と名付けていた。毎日戦局が更新されていくが、最近は押され気味のようで暗い話題が多い。


 今日は明るい話題があればいいな……と思いながら画面を見る。


「(な、なんですかこの記事の数は!?)」


 南極戦争のページを開くと、今までの2倍近くの記事が配信されていた。さくらが感じた他のタブの記事の少なさはコレが原因だった。他の分野を担当する記者の多くを南極戦争の方へ駆り出し、記事作成の補助をさせていたのだ。


 そして、それらの記事はどれもが同じ内容について書かれていた。


「(ラジル大陸とアフカ大陸が同時に上陸された!? ついこの間南ストリアが占領されたばかりでしたよね? もう次の大陸に手をかけているなんて……!?)」


 さくらはたくさんある記事の中からいくつか選び、目を通していく。そこには武蔵国が中心となった国連軍の基地が襲撃され、多くの兵士が死傷したこと、世界各国が国連軍に対して援助を止め始めていることが書かれていた。


「(国連軍に失望して援助停止……自国の戦力だけでどうにか出来る相手でも無いでしょう?)」


 さくらはニュースを読み進めていると、速報が入り込んできた。そこに書かれている内容にサッと目を通そうとしたさくらだが、思わぬ内容に目を見張ってしまう。


「(核兵器の使用を検討中!? しかも国連軍がまだ戦っている地域に!?)」


 エイリアン軍の大部分が集結している前線に対して衛星に搭載された核爆弾が投射される可能性があるという内容だった。エイリアン軍はその全てが機械生命体であり、核爆弾によるEMP攻撃(非致死性電子攻撃)は幾度となく行われていた。しかしエイリアン軍は一回目の攻撃の後すぐに対策を施し、以降は少しずつ攻撃が効かなくなってしまった。今では完全に対策されてしまい、EMP攻撃は行われていない。


 その結果、物理的な破壊以外の選択肢を奪われてしまった。現在は空爆や戦車などで対抗しているが、どこから出てくるのか、倒しても倒しても湧いてくる機械生命体に少しずつ押されている状況だ。


「(これではもし敵を追い払えたとしても人の住めない星が残るだけ……)」


 勝てなければエイリアン軍による占領、勝っても汚染された地域が残る。どちらをとっても暗い未来しか見えない。絶望とはこういう事を言うのだろうか、とさくらは一人落胆していた。


 その時、さくらのインテリデバイスに通知が入る。亜美から通話がかかってきていた。


「さく、いえ、太田です」

「あ、先生今自分のことさくらって言おうとしましたね?」

「余計なお世話です。誰のせいだと思っているんですか」

「スイマセンスイマセン」


 謝る気(ゼロ)な亜美にため息をつくさくら。


「……まあいいです。何かありましたか?」

「そうでした。先生、ニュースは見ましたか?」

「ええ、見ました。核攻撃も検討中、とのことですね。先生は――」

「許せないんです!」


 さくらの言葉にかぶさるように叫ぶ亜美にさくらは少し驚く。


「ええ、先生も許せません。もし勝ててもそこは住めるようになるまでに何十年、下手すれば何百年とかかる可能性があるんです」

「そうですよね。勝ててもその後人間が住めない場所になったら意味ないですよね。でも……」

「でも?」


 電話越しに聞こえる亜美の声は震えていた。さくらは亜美が泣いていることに気付き、今日の喫茶店での出来事を思い出す。


「でも、それをしなければエイリアンにやられちゃうんですよね。核なんて絶対に許せないけど、それをしなくちゃ勝てないって事は頭で理解できてるんです……」

「それはまだ決まったことではないでしょう? 考えれば出来ることはいっぱいあるはずです」

「そう……ですよね。少し悲観的になっていたみたいです。おかげでスッキリしました、ありがとうございます」


 亜美にしてはとても丁寧な言葉に少し戸惑うさくら。


「今日話していたこと、先生はああ言いましたが亜美さんのその勇気に先生は感動したんですよ」


 さくらは亜美へのフォローを入れつつ、自分の考えを整理していた。一番気になるのは大吾が話していたフルダイブ適性のこと。


「(多分電話がこなければそれについて話してくれたんだと思いますが……)」


 全く関係ない話をするようなタイミングではないだろう。何かしらの意味があったはずだ。考察を重ねるさくらだったが、結局答えは分からなかった。


「でも、よく考えたら戦闘機って言ってもフルダイブじゃ無いんですよね」

「そうですよ。私たち、拳銃を撃つだけでミサイルを発射できますが、それはBSSでの話です。実際は沢山の機器を操作しなければいけないんです」

「そうですよね。私には多分無理だな……」

「私たちに出来ることを少しずつやっていきましょう。今日は遅いですから、もう寝ましょう?」

「はーい。ありがとうございます、さくら先生!」

「いえいえ。ではおやすみなさい」

「おやすみなさい」


 亜美との電話を終えると、さくらはさっきまで考えていた事をもう一度整理してみる。


「(大吾さんは実戦の恐ろしさを教え、志願をやめさせるためにわざわざ来た……本当に?)」

「(今の戦場について話したらもう終わりにしても良かったはず。フルダイブ適性の話、なぜしたんでしょう?)」

「(大吾さんは本当に止めさせに来た……? もしかして、他に目的があった?)」


 考え出すと止まらない。さくらは無理やり考えるのを止めて布団に入った。




◇◇◇




「大吾さんからメールが来た」


 重要な話があるとゲーム部のメンバーを部室に集めた亜美は、開口一番にそう言った。


「大吾さんとは一昨日話し合いしたばっかじゃない?」

「そうなんだけどね、なんかめちゃめちゃ堅い文面なんだ」

「堅い? どういうこと?」


 霞の疑問に、亜美は文面を全員のインテリデバイスに共有して答える。


「こんなかんじ」

「これは……正式な書類みたいですね。どこが発行して……ってえぇ!?」

「えっ何があったの……ってなんで!?」


 美穂と未来はメールの末尾を読んで驚愕する。霞も無言だが驚いていた。さくらは一人難しい顔をしている。


「そう、ただのメールじゃなかった。『国連』が大吾さんを通じて私たちを呼んでいるの」


 その文面は、国連軍の代表として大吾が亜美たちトキワ隊と話し合いをしたいという内容だった。


「大吾さん、国連軍に所属していたんだ……」

「一応、国連軍に参加している国防軍の軍人は多いって聞きますが……まさか大吾さんが国連軍所属だったとは」


 現在エイリアン軍に対して武力で抵抗している国連軍は、各国から派遣された精鋭の軍人で構成されている。もちろん武蔵国国防軍の軍人も多くが国連軍に参加しており、主力として他国の軍人をまとめている。


「私は何となく分かってた。最近MAFが活動出来ていなかったのは、南極戦争が原因だったんだよ」

「そういえば、今回の大会、上位チームは結構不参戦だったような……」

「全部がそうなのかは分からないけど、私は多分プロの軍人さんがメインのチームだったんじゃないかなって思ってる」


 亜美はぐっと顔を寄せ、三人に問いかけた。


「私一人で行ってもいいけど、みんなはどうする?」


 もちろん行きます、と三人は即答したのだった。

誤字脱字、おかしい点などがありましたら指摘していただけると恐縮です。また、是非よろしかったら感想、レビュー、ブクマ、評価の方をよろしくおねがいします。とても励みになります。ここまで読んでいただきありがとうございました。


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