6 - 6 無人機の舞
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亜美は、最後の1機になったNQ-31から逃げるように、真っ直ぐに飛んでいった。
戦闘機同士の戦いで真っ直ぐ飛ぶというのは「撃ってください」と言ってる事と同じだ。NQ-31は亜美が見せた隙を見逃さず、すぐに後ろを追従し始めた。
霞は亜美の意図を即座に察し、NQ-31の後ろを追う。結果的に亜美、無人機、霞の順番に追いかけっこをしているような構図になった。
「腐れ縁の以心伝心、ここで見せるよ!」
「任せて!」
真っ直ぐ飛び、撃たれそうになると避けてまた真っ直ぐ飛び、NQ-31は亜美の操縦に翻弄されていた。しかし翻弄されていたのはNQ-31だけではない。霞も、ミサイルを節約するべく機銃で仕留めようとするがそのことごとくが避けられていた。
「(ダメ、無人機の機動に追いつけない!)」
無線を聞くと、まだ3人が無事でいることは分かった。しかしこの状態がいつまで持つかは分からない。出来る限り早くこの戦いを終わらせないといけない。焦る霞をあざ笑うかのように、NQ-31は二人にはできない急制動で機銃を躱していた。
「亜美ちゃん、このままじゃいつまで経っても墜とせない!」
「何か作戦を考えないと……っと、あぶね〜」
「(亜美ちゃんもいつまで避け続けられるか……)」
すんでのところで機銃を躱した亜美だが、一向に状況は動かずこのままではジリ貧確実。何か打開策があればいいが、それが簡単に思いつくのならもう無人機は全部堕ちているのである。
「(あの無人機さえ墜とせれば、向こうに行って合流できるのに……)」
無人機を無視して美穂たちに合流しても良さそうなのだが、この無人機が有人機と一緒に飛んだ時の恐ろしさはキャンペーンで嫌というほど味わったのだ。有人機を追いかけると後ろから無人機がその機動性を活かして追ってきて、敵機のロックオンもままならない。逆に無人機を落とそうとすると、今のような有様でヒュンヒュン避けられて終わり。
トキワ隊の無人機と有人機を合流させたくない、敵分隊のトキワ隊全員を集合させたくない、という気持ちがぶつかり合って、一種の平衡状態になっていた。
「この1機を連れて行くのと、このまま戦うのと、どっちが良いんだろうね」
「今の状態で向こうが墜とされる心配は無いし、このままの方が良いとは思う」
「そっか、じゃあ早くしないとだね」
無人機は一向に墜ちる気配がなく、亜美もだんだん慣れてきたのかヒヤッとする事も無くなってきた。
「無人機の機動はもうどうしようもない……AIの裏をかくような動きをするか、どれだけ動けても意味がない状態にするか……」
亜美がぶつぶつと呟きを漏らし、霞も黙ってはいるがずっと打開策を練っている。霞はいつからかチャンスだと思った時は躊躇せずミサイルを撃つことにしていた。さっきから数本撃ち込んではいるが、結局一本も当たっていなかった。
「もう、早く海面に墜ちてちょうだい!」
霞は耐えきれなくなったのか、少し感情的な発言を繰り返すようになっていた。
「海面……墜ちる……ああ!」
すると、今度は亜美が大声を上げた。霞はびっくりしたが静かに亜美の次の言葉を待つ。
「かすみん、作戦変更。まずは海面近くまで降りるよ!」
「ウィルコ!」
今までの状況を打開できるのなら、と霞はウキウキしながら返事をする。しかし、亜美から聞かされた作戦内容は霞の顔を青くさせるには十分なものだった。
「えっ、亜美ちゃん本気で言ってるの?」
「モチのロンだよ。これが打開策だ!」
「なんてこった……」
亜美が説明した作戦は通常の戦闘機には通用しない、完全に無人機向けの作戦だった。
「もう一度確認するよ。まず、海面ギリギリまで降りる。二人で縦に並んで敵機を誘導。真後ろに来たところで二人でミサイルを投下。タイミングを合わせて起爆して、水の壁を作る。それまでに私たちは反転して、水の壁をくぐった、もしくは避けたところを狙い撃つ。おっけー?」
「お、おっけー……」
機体重量が小さい無人機だからこそ、水の壁に突っ込めばただでは済まない。少なくともスピードは落ちるし、姿勢制御で急制動なんて言ってられないかもしれない。そのタイミングをつけば、撃墜できるかもしれないと考えたのだ。
しかし、この作戦には重大な問題がある。それは投下後すぐに反転する必要があるという点だ。海面スレスレの状態で、反転するという荒業を霞は100%成功させられると思っていなかった。少しでも失敗すれば即海へ叩きつけられるこの作戦、よほど操縦に自信がないと実行できないものだ。
しかし、亜美には自信があった。そして何よりもこの作戦を実行できるだけの技術があった。そして霞の腕を信頼し、二人で成功させられると踏んだのだ。
「よし、針路固定。敵機追従してくるよ! 機銃に注意!」
無人機からの機銃が飛んでくるが、先頭に立った亜美が華麗に避けていく。霞は亜美に追随し、ミサイル投下の準備を完了させた。
「準備はいいね? 3……2……1……」
「――投下!」
亜美の言葉に合わせて二人は同時にミサイルを投下する。推進剤を使わずにその場で起爆するように設定した、特殊なミサイル。任意のタイミングで自爆できるようにしたこの機構は、BSSではどのミサイルにも搭載されていた。
きっちり2本ずつ、計4本を投下した二人は、すぐには上昇せずに加速だけする。上昇すると無人機もそれを追って上昇してしまうからだ。海水の壁はどれだけ高くなるか分からない。出来る限り低く、そして速く飛ばせることでダメージを大きくする必要があった。二人が加速することで無人機も加速して追いかけてくるはずだ。
「まだ……まだ……今!」
そして今度は霞のタイミングでミサイルを起爆する。それと同時に加速で得たスピードを活かして一気に上昇、そのまま180度反転してロールする。所謂インメルマンターンというやつだ。これを出来る限り早く行い、水の壁から出てくる無人機を迎え撃つ。
「アイツはどこだ……」
「いた! 海面近く!」
「よっしゃあああ! 堕ちろおおおおおおお!!!!!」
亜美は霞に教えてもらうとすぐにその方向へ飛び始める。機銃を撃ちまくり、ミサイルも2本発射。
無人機は亜美の思惑通り海水の壁に突っ込み、機体が一部損傷していた。ミサイル4本の爆発で作られた海水の壁は思ってた以上に大きなもので、その中に時速1500km超えの戦闘機が突っ込んだらどうなるかは想像に難くない。
「いよっし! 撃墜!!!」
「ナイス!!!」
亜美と霞の機銃&ミサイルにNQ-31は為す術なく、海面へと墜ちていくのだった。
◇◇◇
「こちら亜美。遅れた! 無人機は全部墜としたからそっち行くよ! 未来、今の状況は?」
「まだ最初の1機以外墜とせてません! 美穂はかなりギリギリです! ほか二人は今の所無傷!」
敵分隊の攻撃を一手に受けていた美穂はかなり危ない状況だった。ミサイルこそ全て避けているものの、機銃を数回受けておりもう次の攻撃に耐えられるか怪しい状態だ。
亜美と霞は戦闘空域に向かって全速力で飛び始めた。速力で劣る霞に合わせて、二人で全速力で。
空は地面とは違って、障害物が無い。あっても雲だったり雷だったりで時と場合によっては突っ込んでいくことだってできる。まあリアルでそんな事をする大馬鹿者はそうそういないだろうが、ゲームなのでそういうプレイを楽しむゲーマーもたくさんいる。
今日は快晴という設定のステージなので、障害物は一切ない広大な空を二人は一直線に飛んでいた。
「こちら霞。ETA60。到着後は作戦Bを続行します」
「「「ラジャー!」」」
二人はやっとのことで戦闘空域に到達すると、躊躇なくその中に入っていく。
「かすみんは私とさくら先生! 美穂は未来! いつものペアで行くよ!」
「未来ちゃんは美穂ちゃんのカバーをよろしくね。美穂ちゃんも無理はしないで」
「「ラジャー!」」
未だ無傷な5機のNF-22との戦いが始まった。
◇◇◇
「流石にっ、決勝ともなるとっ、強いね!」
ミサイルから逃げながら亜美は愚痴をこぼす。
「そんな相手に無傷でいるのも凄いと思うよ?」
上空から指示を出し、あわよくば後ろから撃墜を狙える時を待っている霞が返す。
「でも、結局まだ1機も墜とせてませんね……」
先程放ったミサイルが2本ともデコイに撒かれてしまったさくらがため息をつく。
「まだ、まだいける!」
機銃を受けて機動が怪しくなっている美穂が意気込む。
「美穂は落とさせない!」
幼馴染を狙う機体にミサイルシーカーを重ね、ミサイルボタンを押す未来。
試合は膠着していた。NF-22はそのステルス性を得る代わりに機体が脆いというデメリットを与えられているため、トキワ隊に比べればドッグファイトは不利なはずだった。5機対5機、そしてそのうち1機は無人機を積んできた機体なのでミサイルは積んでいない。こちらは美穂がダメージを負っている状態。全体で見ればトキワ隊の方が有利な状況だった。
しかし、技量はどちらも高く、それ故決着がつかない。
「(これ……どこかで体験したような気がする)」
そして、この状況を打破するべく作戦を考えていた亜美は、何か懐かしい感覚に襲われていた。ミサイルを撃っても当たらない、こんな状況に何故かデジャヴを感じていたのだ。
「なんだっけ……こんな状況前にもあった気がするんだよね……思い出せない……」
「それってもしかして、祐希ちゃんと初めて戦った時、じゃない?」
霞が亜美の無線にすかさず反応する。亜美の実力でミサイルが全然当たらない敵、というのは祐希と大吾くらいだった。
「祐希と初めてあった日……そうか、そうだ!」
そして亜美は思い出す。一発も当てられなかった、それどころかロックオンすら出来なかったあの日。悔しくて、何度も挑み、最高の目標が出来たと喜んだ、あの日。
「(どうやって対抗したんだっけな……)」
その日の夜。ベッドの上で亜美が考えていたこと。
心理戦。
祐希に勝てなかった理由は、操縦の上手さの違いだけでは無かったはずだ。あの日以降、亜美は心理戦に関して祐希から様々なレクチャーを受けた。そして乾いたスポンジのように吸収し、成長した。今までの試合も全部無傷で切り抜けられた。無意識にやっていた心理戦で相手を圧倒していたのだ。
しかし今回の相手は少し違った。無意識の心理戦では対抗できない、強敵。頭をフル回転させてやっと戦えるような相手だった。
亜美の性格はこんな時でもしっかりと現れるようで、こんな強敵と戦えることが心底嬉しいという感情で溢れていた。
「さて、このままじゃどうしようもないしね。次の手を打ちますか!」
「なにか思いついたの?」
「全然何も。これから考える!」
「なんというか、鹿嶋さんらしいですね……」
そして、亜美はしばらく敵機を狙うことを止めて、逃げながら作戦を考えた。考えに考えて、一つの結果にたどり着いた。
「集中攻撃、かな」
「みんなで誰かを狙うってこと? あの無人機連れてきたやつ狙う?」
「いや、そいつは最後。まずはリーダー格を叩きたい。さっきから攻撃よりも周りの観察に注力している敵機が1機だけいる。そいつからいこう」
亜美は逃げながら敵機を観察していた。すると、機銃しか無い無人機を連れてきた戦闘機に加えて、あまり戦闘に参加せず空域の観察をしているような機体があった。
「こちら亜美。今マークした敵を集中攻撃する。ただ狙うだけで墜とせる相手じゃないから、他の機を狙うふりをしてミサイルを叩き込む」
亜美の作戦を確実に成功させるため、霞も頭をフル回転させる。
「こちら霞。亜美ちゃんがマークした敵をアルファと呼称。今私がマークした敵をブラボーと呼称する。美穂ちゃんと未来ちゃんでブラボーを狙って。美穂ちゃんはそのままブラボーの攻撃を誘って、アルファの近くまで誘導。美穂ちゃんならできるよ」
分隊員を信頼し、できる限りの作戦を練っていく。霞の本領発揮、と言ったところだ。
「未来ちゃんはミサイルをブラボーに一発だけ発射。そのまま方向転換してアルファにもう一本発射。亜美ちゃんとさくら先生はそれまで美穂を助けるようにブラボーを追いかける。すぐにアルファを狙えるような位置取りで行くよ。未来ちゃんのミサイルに合わせて、二人同時にミサイルを発射」
未来のミサイルはブラボーを狙っているふりをするため、そしてアルファのデコイを消費させるために使う。その後亜美とさくらが断続的にミサイルを発射して狙う、という作戦だ。
「私はみんなの後ろを警戒。狙っている時の後ろ側は任せて」
「おっけ。みんな聞いた? かすみんの作戦でやってみるよ!」
「「「「ウィルコ!」」」」
膠着した戦線を打破する。トキワ隊の面々は何時になく真剣だった。
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