6 - 5 決勝戦開始
かなり悩みながら書きました。久しぶりの一人称視点ですが、どうでしょう?
亜美も少しずつ隊長らしさが出てきました。
「こちら未来、敵機発見! 方位150、高度3000! 全機NF-22<ラプター>です!」
道理で見つからなかった訳だよ。まあレーダーに全然映らなかったから何となく気付いてはいたけどさ。さて、今でこそ旧式機体でも、当時は地球上で最強と謳われていた機体。耐久性を犠牲にステルス性、機動性を手に入れた"らぷたん"にどうやって挑もうか。
「こちら亜美。敵には気付かれてるだろうし無理に近づかなくていいよ。高度を取って戻ってきて」
いつものように反転命令を出す。敵によってはそのまま進んで裏側に回ってもらうこともあるんだけど、今回はほぼ気付かれてると思うからこっちに戻ってきてもらう。流石に気付かれている状態で一人になるのは危険だ。
しかし、未来からの返事が来ないな。システムの不具合は考えづらいし、何かあったか?
「――こちら未来! ミスりました、敵は"NQ-31"を装備! 先遣部隊として送り込んでいた模様! 気付けなかった! すでに戦闘中!」
なんてこった。NQ-31? あれは超高価でキャンペーンぐらいでしか使えないステルス無人機だよ? はぁ、敵さんはどれだけ頑張ったんだか。
「未来、NQ-31は何機飛んでいる? 大体でいいから教えて!」
「4機は視認!」
「……えっ4機も!?」
うん、かすみんの驚きも無理はない。値段が高すぎて分隊戦では数回しか見たこと無いし、あっても1機だけしかいなかったし、こんなにたくさん連れてくる相手なんて初めてだもん。どれだけBSSで遊んでるんだか。私たちだって全員のお金を集めても1機の半分以下だと思うよ。
なんでそんなに高いかというと、単純に強すぎるから。だって考えてほしい。無人機と言えど、自律して飛んで、ミサイルは撃たなくても機銃を撃ってくる。戦いは数だよって有名な言葉もあるでしょ。
まあその分デメリットもあるっちゃあるんだけどね。まずミサイルの携行量がガクンと減る。携行料の2割が消し飛ぶ。機銃の携行量だけは変わらないので、他の人に比べて機銃をうまく扱えないとミサイル不足で敵を倒しきれなくなる。他にも切り離しまで重量が増加して機動に制限がかかったり、切り離してからの稼働時間に限度があったり。
今回はいきなり切り離して戦いを挑んできた。私たちが全部の試合を短時間で終わらせてきたことを警戒してのことだろうか。
「こちら亜美。NQ-31にドッグファイトを挑んでも機動性で勝てない。出来る限り逃げることに集中して! あと60で到着!」
「ウィルコ!」
このゲームは仲間の体力ゲージが見えない。そもそも自分も見えないから当然っちゃ当然。未来が無事だと良いけど……
とりあえず作戦は変更だ。対処方法を考えないと。
「こちら亜美。作戦Bに変更するよ! 美穂と未来は合流の後親機の足止め! 二人なら出来るよ!」
「「ラジャー!」」
「続いてかすみんとさくら先生。三人で速攻でNQ-31を片付ける! かすみん、指示よろ!」
「「ラジャー!」」
指示を出し終えると、ちょうどNQ-31から逃げている未来が見えてきた。必死に逃げてきたようで、敵のNF-22に追いつかれる前に合流することができた。本当によかった。
「それじゃあこのまま作戦通りに。二人とも、頑張ってね!」
「そちらこそ、早く来てくださいね!」
そして、私たちがカバーして未来をNQ-31から引き剥がす。そのまま美穂を先頭に二人はNF-22へと向かっていった。
「さーて、お片付けの時間だよ! いつものロッテで!」
「「ウィルコ!」」
そう言うが早く、かすみんは上空へと飛んでいき、私とさくら先生が敵機に向かって突っ込む。無人機は中に人がいないからかなり急制動をかけてくるんだよね。ミサイルよりも機銃で撃ったほうが早そうだ。
とりあえず目の前に飛んでるアイツを狙ってみるか。一応威嚇としてミサイルでも撃っておこう。っと、その前に機銃で針路を固定させておくか。
無線を聞いてると美穂たちは既に戦い始めているみたい。こっちも頑張らないと。
「さくら先生、そのまま追いかけてください。後ろについた機を私が狙います」
「ウィルコ!」
さすがかすみん、指示が的確だね。こっちもあいつは大体真っ直ぐに飛び始めたしミサイルを2本プレゼントだ。と言ってもさっきも言ったとおり当たることは期待してないんだけど。威嚇用ね、威嚇用。
「FOX2! FOX2!」
さて、逃げるところを機銃で仕留め……
「あれ?」
「凄い! 亜美ちゃんナイス撃墜!」
「意外と簡単に当てられる……キャンペーンの性能から落とされてるのかな?」
ミサイルはいとも簡単にNQ-31に当たった。すると、かすみんからも撃墜の報告が上がってくる。もしかして、形が似てる別型機? でもどう見てもあれはNQ-31だ。何が違うんだろう?
まあ嬉しいことに変わりはない。
「残り2機、このまま仕留めちゃうよ!」
「「ラジャー!」」
この調子ならすぐに片付けられるでしょ。ガンガン行きまっせ!
◇◇◇
「なんでっ、さっきと機動がぜんぜん違う!」
「明らかに機動力が上がってる! これじゃまるで……」
「キャンペーンの時の性能と同じです!」
おかしい。最初の2機は簡単に墜とせた。それが、もう5分は経つというのに1機も墜とせてない。最初の2機と何が違うの?
「とにかく、あと2機だからどうにかして追い込むよ! 美穂も未来もいつまで持つか分からない!」
「こちら霞。美穂ちゃん、未来ちゃん、現在の状況を教えて!」
「こちら美穂、機銃を受けちゃって損耗してます。もういつまで持つか!」
「こちら未来、すでに1機撃墜! 私は無傷だけど美穂がやられたらどうなるか分からない! です!」
なんと。すでに1機撃墜してるなんて未来も成長したなぁ。しかしもう時間をかけてはいられない。どうにか突破口を見つけないと……
「あ! 分かった!」
ん? かすみんがなにか分かったみたいだ。私は一度敵機を追いかけるのを止めて無線に集中した。
「何かおかしいと思ったんだ。そもそも桁外れな高価品、4機なんて中途半端な数で使うわけない!」
え? あっ……あああ! そうか! いたんだ!
――もう2機他に!
「でも、その2機はどこにいるの?」
「ステルス性があるってこういう時厄介だよね。 ――上空だよ」
その言葉を聞いて上を見上げると……いたいた。目を凝らせば微かに黒い点が見える。上空は低空に比べてまだレーダーに映りやすいはずだけど、NQ-31は無人機だから機体形状に制約が無くなってステルス性にガン振りしたんだよね。NF-22を超えるステルス性を持ってやがるから全然映ってなかった。
「多分私たちと同じように2機が上空から私たちの情報を伝えてたんだね」
「そりゃあ完璧な機動で逃げられるわけだ」
「でも……上空には1機しか見えませんよ?」
1機……? いや待てよ、無人機が上空からサポート? サポートなんているの? 私たち人間は"意識"することで目の前に集中する事ができる。逆に言うとその時後ろは疎かになりがち。サポートはその後ろを見張ったりこぼれ球を拾ったりするのが役目。
でも機械は違う。ずっと周囲の情報を元に最適な行動をするよう、自律しているはず。サポートなんて無くても大丈夫なはずだ。最初から全機で突っ込ませればいい。でもそうしなかった。いや、そうせざるを得なかったんだ!
それと、なぜか6機じゃなくて5機なのも、何か理由があるはず。1機は保険に残してる? それとも金銭的に買えなかっただけ?
待てよ……もしかして!
「未来! 撃墜した1機、何か特徴は無かった?」
「そう言えば、撃墜する直前まで違う敵機を狙ってたのに、いきなり身代わりのように割り込んできました! 急に間に割り込んできたのでびっくりしましたけど……なにかありましたか?」
「やっぱり……!」
「やっぱり?」
かすみんはまだ分からないみたい。いつもはこういう推理はかすみんがするんだけど、今日は私のほうが先に分かっちゃった。珍しいこともあるもんだ。
つまり――
「つまり、NQ-31を持ってきていたのは1機だけだったんだ! ミサイルの携行数ギリギリまで詰め込んで、NQ-31を連れてくるためだけに飛んできた機体、そいつが敵機の中にいるはず! 未来、さっきからミサイルを撃たない機体は無い?」
「ちょっと待ってください……多分あいつかな……いや今美穂に向かって撃ってたな……」
「未来! 今私を追ってる敵の背後、ただついて来てるだけの機体、あれが多分そうだよ!」
「おっけ、あれだね! ミサイルを持ってないことを隠すために追いかけるだけ追いかけていたんだ! マーク完了! どうしますか?」
「そいつを狙おう! 墜とせれば自動的にNQ-31も墜ちるはず! 堕ちなくても機動性は低くなるでしょ!」
「「ウィルコ!」」
さて、こっちも次の策に出ますか!
◇◇◇
「でも亜美ちゃん、それだと最初の2機が簡単に墜とせた理由が分からないよ」
「それはね、計算能力だと思うんだ」
「計算能力?」
「自律飛行型の無人機って、常に周りの状況を計算して次にやるべきことを計算してるじゃん? それを一つの戦闘機が5機分担うって相当な負荷がかかると思うの」
「そうか……! 上空に1機残しているのは計算能力の分散を防ぐため!」
「そう。そして敵は実戦であまり使っていなかったんだろうね。たぶん隠し玉として取っておいたんだ。だから4機で戦闘すると計算能力が足りていないことに気がついてなかった!」
「だから2機になってから一気に機動力が上がったんだね! さすが亜美ちゃん!」
「いやぁそれほどでも」
「鹿嶋さんにしてはさすがの推理力ですね!」
「さくら先生、にしてはってどういう意味ですか〜!」
まあ、カラクリが分かればどうってこと無い。まずは上空のもう1機を巻き添えにして、強制的に3機分に計算能力を分散させてやる。
「こちら亜美。さくら先生はこちらを離れて美穂の下についてください。こっちは二人で十分です!」
「ウィルコ!」
さて、ここからはかすみんと二人で勝負だ。3機相手なら1機は墜とせる。残りの2機は、向こうの3人が先に管制機役のNF-22を墜とすか、こっちが先に2機を墜とすかの勝負だね。
全員でNF-22に突っ込んで無人機を無視することもできたけど、そうすると敵戦力が一つにまとまっちゃうのがめんどくさいし、まああの人数なら3人でどうにか出来るでしょ。1人は無人機の管制してるし実質5人だ。
「亜美ちゃん! 後方から真っ直ぐNQ-31!」
「ラジャー!」
上空で待機している1機を巻き添えにするべく上昇していたら、ほったらかしにされた2機が猛追してきた。でも真っ直ぐ向かってくるようじゃダメだね。
「かすみん、いつものお願いね!」
「ウィルコ!」
いつもの。まずは上昇を止めて、一気にUターン。海面に向けて飛ぶと、無人機も同じくUターンで追いかけてきた。つまり更に上空で待機していたかすみんの目の前にお尻を出すことに。こんな状態でミサイルを撃たれたらどうなるか――
「撃墜! よし、爆発に巻き込まれてもう1機も失速中!」
「ナイス! そいつはもらったよ!」
当然こうなる。すぐに再度Uターンして上昇、失速しながらも追いかけてきていた敵機にヘッドオンですれ違いざまに機銃を浴びせた。向こうの機銃も少し食らったけどまだ全然飛べるし大丈夫。
「よし、残り1機!」
「亜美ちゃん、少し機銃もらってたみたいだけど大丈夫?」
「大丈夫、まだ全然飛べるよ」
「よかった。それじゃあ交代だね」
「よろしくね!」
流石に機銃を浴びてしまったのでかすみんと役割交代だ。ここからはかすみんに指示を出さなければならない。とは言っても相手は残り1機。今までよりも格段に機動性が高くなってるだろう。さて、どうするか……
「じゃあ、私たちも美穂と未来の戦法を真似するか!」
「え?」
「頑張って逃げるから、早めに墜としてね?」
「(……それじゃあ、美穂の十八番を真似させてもらいますか!)」
亜美は上空から降下してきた最後のNQ-31へと機首を向けるのだった。
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