6 - 4 圧倒的
戦闘シーン、まだまだ続くよ!
垂れ幕、この時代にも残ってるのか怪しいですが……
「さて、二回戦が終了し、残った分隊は全部で8分隊! 三回戦以降は2分隊で戦ってもらいます!」
MCがアナウンスすると同時に、観客と出場者の視界に組み合わせテーブルが表示される。準々決勝、準決勝、決勝と残り3回の試合で1位が決められる。亜美たちの戦う相手には所謂"優勝候補"と言われている分隊はいなかった。トキワ隊の第二試合の試合結果は6機生存の12機撃墜。他のどの分隊よりもスコアが高かった為、第一シードになっていた。優勝候補の分隊は全て反対側の山で、決勝までは余裕で進めると観客の誰もが思っていた。
「さて、油断は禁物。しっかりと着実に一試合ずつこなしていくよ!」
「「「「ラジャー!」」」」
亜美たちは気合十分、準々決勝に乗り込んだ。
◇◇◇
結果から言えば、亜美たちは最短記録である1分50秒での全機撃墜を成し遂げ、被弾0で帰ってきた。これには運営もひっくり返ったのだろう、MCはあたふたしながらインタビューに駆けつけてきた。インタビューを一言で済ませ、トキワ隊の面々は次の対戦相手が決まる試合を見始める。
「う〜ん、どっちが勝つかなぁ?」
「これは難しいですねぇ。どちらも互角に見えます」
「未だにお互い一発も当てられてないって凄いね」
「ミサイルが下手なんじゃない?」
「逃げ方は参考になる部分がありますよ」
あーだこーだと意見を言いつつ、あまりの互角さに25分も続いた試合を見終え、トキワ隊は出撃準備を始めた。
「そーだ、次の試合はあれを試してみるよ」
「ここでやるの? 次の試合に取っておかなくていいの?」
「流石に決勝でやるほどの自信はないかな〜」
亜美たちが話しているのはトキワ隊の新しい戦法だった。作戦Dと名付けられたこの作戦は、美穂以外がステルス機に搭乗して試合に臨む。未来がNF-35、残りの三人はNF-22に乗り、美穂はいつものNF-0だ。
「敵さん、びっくりするだろうねぇ」
「それも二回もね」
「成功には美穂の力が必要なんだよ」
「頑張ってくださいね」
「が、がんばります!」
◇◇◇
「さて、お次の試合は第二試合、準々決勝どちらも被撃墜0、敵機全機撃墜という怒涛の戦績を残している<<トキワ隊>>!!! 対する相手は先程25分という史上最長の試合を見せてくれました――」
「さて、この戦法はまだ実践で使ったことが無い。失敗するかもしれないけど、まあその時は私と霞がなんとかするから安心して」
「私は安心できないね」
「でも、先輩たちなら出来ると思います。最初の試合もすごかったですし」
「私が落とされても気にせず相手を全機やっつけてください!」
「あらあら、信頼されてるわね〜」
「先生、それは照れますよぉ」
「亜美ちゃん、そろそろ始まるから準備準備!」
この試合前の気の抜けそうな会話もトキワ隊にとっては普段の光景だ。亜美のムードメーカーっぷりがメンバーの緊張をほぐし、試合に集中出来る状態へと整えていた。
◇◇◇
「次の相手はあのトキワ隊だ。気後れするなよ。人数では勝ってるんだ」
「まずは1機落とす所からですね。そうすりゃ6対4。流石にこの差じゃ勝てますから、落とされずに最初のキルを頂きましょう」
「無理は禁物、ですね」
「おっと、レーダーに感アリ。あれ……」
「おかしくないですか? リーダー」
全員がNM-39を操るこの分隊は、全員が学者で頭の切れるインテリ集団だった。論理を突き詰め、合理的で無駄のない戦略と戦術を武器に戦ってきた彼らは、先程の試合では論理的に攻め込めるタイミングを掴めず、ずっと追いかけっこだけをしていたのだった。
そして、そんな彼らをあざ笑うかのように、レーダーに映った機体は1機。彼らはすぐに考察を始め、一つの結論に達した。
「後は全員ステルス機だな」
「そのようです。どのみち私たちには都合がいい」
「ステルス機ってことは機体は脆いってことですからね」
「ああ、これは神様が微笑んでくれたのかもな」
「神様だなんて非科学的な事は信じられませんな」
学者らしいやり取りをしながら、敵機が飛んできた上空へと機首を向ける6人。その先にはレーダーに映る機影が微かに肉眼でも見えた。
「はぁ……私にこんな役、務まるのかなぁ」
一方、たった一人で敵のど真ん中に突っ込んでいった美穂は、その役目の重さに尻込みしていた。
美穂に与えられた使命、それは敵機の撹乱だった。とにかく撹乱して、そして低空へ誘導する。NF-0の速力を活かして逃げまくるのだ。
美穂は覚悟を決めて敵陣へと飛び込んだ。
「きたきた……それ!」
華麗にミサイルと機銃を避けながらすれ違う。そのまま美穂は反転せずに海面へと下降していった。そしてそこそこ降りたところでUターン、上空へと機首を向ける。
「ミサイル、当たった試しが無いんだよねぇ」
愚痴をこぼしながらミサイルを二本撃ち、さらに反転して下降していく。常人は普通できない下降中のクルビットだが、美穂はトキワ隊にいるうちに感覚が鈍って特段凄いことだと思わなくなっていた。もちろん敵はこのクルビットからのミサイルに驚き、デコイで必死に避けている。敵機はまだ無傷だが、美穂につられてかなり海面スレスレまで降りてしまっていた。
「おかしいですね……」
「ああ、おかしい」
「そろそろ出てこないと。流石に1対6じゃ時間の問題ですよ」
「まあ俺達からしたら幸運なことだ。さっさと仕留めるぞ」
「「「「「ラジャー!」」」」」
一方、亜美たち4人はNF-22とNF-35に乗って遠いところで待機していた。
「さーて、そろそろ連絡が来てもおかしくない頃だけど……」
「――こちら美穂、敵機誘導成功。エリアB2Gにて交戦中。フェーズ2に移ります。オーバー」
「こちら亜美、ナイス! 今から向かうね。アウト」
「――さて、舞台は整った! 行くよ!」
「「「ウィルコ!」」」
そして海面スレスレにいた亜美たちは、機首を上げて上昇しながら加速。美穂から貰った座標に向かって一直線に進み、敵機の上から襲いかかる。
「なっ、敵機増援来ました!」
「クソッ、間に合わなかったか。まあいい。数では勝ってるんだ。全機、上からの攻撃に気を付けつつアイツから落とすぞ!」
「「「「「ラジャー!」」」」」
「ありゃ、逃げないよ」
「それはありがたいね」
「じゃあ私から入ります!」
「最後尾は私が行きますね」
四人は未来、亜美、霞、さくらの順で一列になって、敵陣に飛び込んだ。
飛び込んだと言っても、ただ闇雲に中心へ突っ込んだわけではない。4機はそのまま敵機を囲むようにぐるぐると周りながら、順番に中心に向かってミサイルを放ち、また円に戻る、を繰り返したのだ。
何度も練習を繰り返したかいがあって断続的に放たれるミサイルに敵機は慌てふためいていた。そしてその中で更に暴れまわる美穂。逃げに関しては部内一なだけあって、撃墜されずに敵機の撹乱を続けていた。
敵の周りを囲むように回っているので逃げようものなら誰かの目の前を通る必要がある。敵は八方塞がりで為す術が無かった。
「何なんですかこの戦法は!」
「ど、どこに逃げれば良いんだ!」
「おい! 焦るな! 確実に1機ずつ落とせば勝てる!」
「そうは言っても、この空間じゃ狭すぎてまともな機動ができません!」
「クソ、アイツは放っておく! 先に上の連中を叩け!」
「「ラジャー!」」
上空の4人に次々と墜とされてついに残り3機となった敵分隊は、ようやく美穂を諦めて上空へと活路を求めた。仲間を墜とした仇を討たんと、一気に上昇しながらミサイルを放つ。
ミサイルは亜美に向かって飛んでいった。各2発、合計6発のミサイルはコントレイルを空に描きながら亜美のNF-22を追う。
「残念だけど、上に来ても意味はないんだよね〜」
「後ろががら空きですよ!」
霞がミサイルを撃ったばかりの敵に対してミサイルを撃ち、同時に機銃で襲いかかる。未来とさくらも同様に1機ずつ相手取り、がら空きになった背後から美穂が先程までのお返しとばかりにミサイルを撃ちまくった。
「6本か〜」
「大丈夫、亜美ちゃんなら出来るよ!」
「簡単に言ってくれちゃって〜」
亜美は呆れながらもデコイを発射するタイミングを見計らっていた。デコイは連続で発射できない。一度失敗するとミサイルから逃げられる確率はぐっと下がってしまう。今まで無傷で勝ち上がってきた事も相まって、なんとしてでも逃げ切りたいと意気込む亜美。
「そろそろかな……今! そーれ!」
ミサイルがお互いに近づき、一直線に追ってきている状態を上手く作り出した亜美は、デコイを射出すると同時に急上昇。8発の内5発のミサイルがデコイに向かっていき、その場で爆発した。それでも亜美へと食らいついてきた残りの3発もその爆発に巻き込まれ失速する。
「しつこい奴は嫌われるんだぞ〜」
「亜美ちゃんまだ男と付き合いないじゃん」
「……試合中じゃなきゃくすぐりの刑に処してるところだぞ」
「へっへっへ、どうもどうも」
「こんにゃろ、覚えてろよぉ」
――冗談を言うくらいの余裕はあるらしい。
結局亜美は失速した3発を急制動でかわし、無傷で6発のミサイルを撒いたのだった。
ミサイルから逃げ切った亜美が残りの敵機を探していると、ちょうど最後の1機が未来によって墜とされるところだった。
準決勝でも無傷で6機撃墜。ここまでの活躍を見てきた観客席はトキワ隊の虜だった。性別を公開していないためまさか全員が女性であるとはつゆ知らず、カッコいい、とかイケメン、等といった言葉までもが飛び交っていた。
◇◇◇
「ふい〜お疲れ!」
「お疲れ様です」
「さすが亜美先輩、今回も撃墜数は勝てなかったです」
「今回はいつもに増して活躍できた気がします」
「未来ちゃんにもそろそろ抜かされるような気がするよ! 美穂ちゃん、今日はお手柄!」
「亜美ちゃん、そろそろ許してくれないかなぁ」
ワイワイと試合後のおしゃべりをしつつ、今回の試合を振り返る。初めて実戦で使った作戦だけに、気になる所、問題点などなど話し合うことはたくさんあった。ちなみに亜美は先程の無線の仕返しにと霞の髪の毛をわしゃわしゃして遊んでいる。霞は困った顔をしていながらも嬉しそうだった。
「流石に次の試合はこの作戦が通用するかは怪しい」
「相手によりけりだけど、作戦Aか作戦Bだったら何回も練習してるし安定だと思うな」
「そうですね、お互いの連携も十分できると思います」
「そうだね。それじゃあ作戦Aで行くよ!」
「「「「ウィルコ!」」」」
「いや、戦闘中じゃないしここでウィルコ言わんでも……」
困り顔の亜美に大笑いするトキワ隊だった。
◇◇◇
「さて、三位決定戦もとてもアツい試合でしたね! まさかお互いの隊長機が残って最後にタイマンドッグファイトが見られるとは思いませんでしたよ! ねぇみなさん?」
MCもこの大会を通して観客の扱いに慣れてきたのか、会場を盛り上げて観客を大いに楽しませていた。三位決定戦はまさかの互角勝負からラストは隊長機同士のドッグファイト、学者チームの隊長が片翼をもぎ取られながらも機銃でコックピットを撃ち抜き、見事に勝利を手にしていた。
「そして皆さんお待ちかね、決勝戦が始まります! それでは出場分隊の紹介です!」
MCの言葉に合わせて、フルダイブ空間に浮かんでいる巨大スクリーンに紹介映像が流れる。
「まずは右ブロックから。チームMeT! 初戦を被撃墜0で突破、そしてなんと、二回戦では第二シードを接戦のうえ撃破! そのまま破竹の勢いで決勝まで上がってきました! ここまでの被撃墜数は合計で5! 驚異的な数字です!」
スクリーンに今までの戦闘から抜き出した撃墜シーンが流れる。しばらくその紹介映像を流した後、MCは再びマイクを取った。
「お次は左ブロックから上がってきたトキワ隊! なんと今大会被撃墜数が0! しかも! 撃墜数どころか被弾数すら0です! 何なんでしょう彼らは! 今大会、一番の優勝候補は間違いなく彼らでしょう!」
先程も書いたとおり、彼らは亜美たちの性別を知らない。彼らと言ってるMCやそれを聞いてる観客達がトキワ隊の構成メンバーを知ったら腰を抜かす事間違いなしだろう。
「よし! ここまで来たよ決勝戦!」
「最後も気を抜かないで頑張ろうね」
「最後くらい撃墜数なんて気にせず勝利を目指していきます!」
「ここまで来たからには無傷で逃げ切ってみせます」
「もし優勝できたら学校に垂れ幕作ってもらいますね♪」
「た、垂れ幕……」
ニコニコしながら爆弾発言したさくらにさすがの亜美も表情が固まったが、決勝を前に気合十分、最後の戦いに向かうのだった。
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