6 - 2 分隊長鹿嶋亜美
いろいろとツッコミどころがありそうですが、遠慮なくツッコんでください。
最近PV数が増えてとても嬉しいです。ありがとうございます。
是非ブクマと評価の方もよろしくおねがいします。
BSSの開発者代表が簡単な一言を述べ、元気なナレーションが特徴のMCが声たかだかに開会を告げる。ここにWorld Ace Championshipの開催が宣言された。観客席はワーワーと騒ぎ、参加者は椅子を取り出して座ったり宙に浮いたりしている。
フルダイブゲームの大会らしく、会場もフルダイブVR上だった。各々が自宅でログインし、指定されたワールドで大会に参加したり観戦したりするシステムになっていた。
「次の相手は楽そうだね」
「かすみん〜油断はダメだよ〜」
「だ、大丈夫だよ?」
トキワ隊はレートが高かったためシード枠に入っていた。5人は次の対戦相手が決まる一回戦を観戦していて、今試合が決したところだった。レートが高い分隊でないと出れない大会だけあって、どの試合もレベルの高いドッグファイトを繰り広げていた。
次の相手はNF-0を6機で操る分隊だ。NF-0は速力が高く、そのため旋回やマニューバからの速度回復までの時間が短い。低高度でも簡単にマニューバ出来るため、油断をしていると瞬時に後ろを取られてしまう。トキワ隊ではNF-0を使うのは亜美と美穂だけだった。
トキワ隊の面々は、練習を重ねる傍らで様々な機体を試していた。自分にあった機体を選べば、実力が発揮しやすくなる。亜美は失速機動(わざと速度を必要以上に落とし、制御が不安定になるのと引き換えに相手機を追い越させて後ろを取る機動)で背後を取って敵機を倒す戦法が得意だった。そんな亜美にはNF-0がぴったりだった。
霞は|NF-7《》を使っていた。霞の戦い方はこれと言った特徴を持っていなかったが、逆に言うといろんな事が出来ると言え、万能なNF-7を使用していた。どんな戦法でも柔軟に対応し、亜美の補佐として完璧な対応をしていた。また機体が新しいこともあり、操作性が高くなっている。この"The 平凡"な機体を120%使いこなしているテクニシャンな霞だが、本人は自分の実力に満足していないようである。
さくらはNS-57を使用していた。FPSゲームの時から東側の武器が好きで、BSSでも東側の戦闘機を操っていた。開発元の国が国策として軍事研究を戦闘機から宇宙船へシフトした結果、戦闘機と呼べるものはこのNS-57が最後になってしまっている。しかし、NS-57自体を改修に次ぐ改修で延命させており、100年が経った現在でも主力として防空任務に付いている。
未来は一目惚れしたNF-35に乗っていた。元々マルチロールファイターとして開発されたが、その機動性の高さが後年再評価され、ベストセラーとなった機体である。ステルス時代最後の機と言われ、このゲームでもかなりレーダーに映りにくくなっている。機体の特徴から、未来は索敵役として一機で突出して情報収集をしている。未来の実力があってこそ出来る事であり、度々6機に同時に狙われるが大体一発も喰らわずに帰ってくる。
美穂は亜美と同じNF-0に乗っていた。美穂の特徴は"逃げ"であり、そこまで戦闘は得意でないものの他の機とタッグを組む事で一気に化ける。美穂が逃げる間、敵機は相方のことを忘れてしまうのだ。それは美穂の逃げ方に原因がある。美穂は「撃墜できるかも」と思わせるような不安定な操縦をしながら、何故か撃墜されないでずっと逃げていられるのだ。ちなみに本人にはそんな気はない。敵は後少しで撃墜できそうな美穂しか眼中になく、いつの間にか後ろにいる相方に落とされてしまうのだ。
なんだかんだ個性が出てきて、トキワ隊としての戦略も固まってきていた。そしてその全てを把握して指示を出す亜美と、亜美の指示を出す時の癖を把握しているメンバー。隙があるとすれば一人メンバーが足りない所ぐらいだった。
しかし祐希が居なくなってからも練習を重ね、5人での戦い方がしっかりと身についてきた亜美たちにとって人数差はあってないようなものだった。
二回戦。一回戦を戦い抜いた猛者に加えて元から猛者であるシード枠が参戦する。そして二回戦は特殊ルールが適用されていた。MCがハイテンションで解説を始める。
「さぁてお次は二回戦です! 二回戦は、三すくみの戦いとなります! タイマンではなく、三チーム入り乱れてのFree for All! 事前の共闘確認は一切禁止! 敵チームのチーム名は伏せた状態で戦います! 最後まで勝ち残ったチームが勝利です!」
基本的にリーダーが落とされても負けではなく、殲滅するまで戦うのがWACのルールである。殲滅戦のコツは、倒せる機体から倒すこと。落としにくい、つまり強い敵は相手にせず、弱い敵から落としていく。人数差は力だ。どれだけ強い相手でも、人数差が大きくなれば落とされてしまうのだ。
ちなみにその理屈で行くとトキワ隊で最初に狙われるのは美穂だが、先程言ったとおり美穂はなんだかんだ逃げ続けるのでその間に少しずつ落とされてしまう。ある意味トキワ隊の影の立役者である。
◇◇◇
「さて、初戦だよ! 初戦くらい被撃墜0でいきたい!」
「「「「ハイ!」」」」
「この大会で優勝して、ドヤ顔で祐希を迎えるよ!」
「「「「ハイ!」」」」
「作戦はいつものAからいくよ。変更があったらその都度連絡! 私が落ちた後はいつもの引き継ぎ順で!」
「「「「ハイ!」」」」
「元気がいっぱいでよろしい! トキワ隊、出陣!」
「「「「オー!」」」」
バーチャル空間で、五人が円陣を組んでいた。隊長である亜美が掛け声をして皆が答える。さくらが「部活なんですし、他の運動部などの大会と同じく、気を引き締めていきましょう!」と言ったら亜美が部活動の大会よろしく円陣を組むと言い出したのだった。
気合十分、トキワ隊は出陣した。
◇◇◇
試合が開始され、それぞれエプロンから滑走路へと移動を始める。試合を離陸から始めるのがBSSの特徴であり、初心者はこの離陸でクラッシュしてしまう事も珍しくない。WACでは流石にレートの高い分隊が揃っていることもあって離陸での失敗は居なかった。
最後に美穂の機体が上がると、そのまま指定された戦闘ポイントに向けて編隊飛行を始めた。F-35の未来はそのステルス能力を使って敵戦力の偵察に向かい、残りの4機でフィンガーフォー隊形を作る。何回もやっていることなので全員がスムーズに動くことができている。
「こちら未来。レーダーに感アリ。6機です。データリンク確認お願いします」
「こちら亜美。確認したよ。以降この集団をアルファと呼称。未来、そのままアルファから離れてもう一つの敵チームを探して」
「ウィルコ!」
亜美の手元で操作がされたのか、先程データリンクで共有された敵機のレーダー反応に赤い色がついた。仲間の色は黄緑色にしてある。水色がスタンダードだと思われるが、海や空の色と被って見づらかったのだ。
未来が90度回転して次の敵を探しに行き、亜美たちは位置エネルギーを得るために上昇する。位置エネルギーはとても重要だ。重力に縛られたこの世界では、あたりまえだが下降に比べて上昇の方が遅い。そのため下側の敵機に向かって攻撃をすることは容易いが、上側の敵に向かって上昇しながら攻撃するのは難しいのだ。
敵機と遭遇していない、安全な今のうちに高いところを取っておくことで、この後の戦闘に差がつく。もちろん敵も同じことを考えるので、硬度の高い所でのドッグファイトになることがほとんどである。
「まだ敵の機体は分からないし、不用意には近づきたくないねー」
「このままだと視認まで大体30秒。どうする?」
こういう時、偵察部隊の未来と隊長の亜美が中心に会話をするが、そこに霞が口を挟むこともある。さくらと美穂は基本会話をしない。隊長の邪魔をしないよう、指示をずっと待っているのだ。
霞は亜美の補佐として、時に作戦立案をし、時に亜美の立案を精査する。亜美が頭の中で完結させている内容を経験で想像し補い、メンバー全員が理解できるよう補足する。霞もまた副隊長としてトキワを支えているのだ。
「まずは逃げるように転針。未来ちゃんからの報告を待って、そこから考えるよ」
「了解、それじゃあ方位170に転針!」
「「ウィルコ!」」
ここで一つ解説。ラジャーとウィルコは似てるようで少し意味が違う。ラジャーはそのまま"了解"という意味。分かったよ、理解したよ、といった意味合いを持つ。ReceivedのRをRogerと読んでたからそんな意味で使われるようになったらしい。Wilco. はWill complyの略で、これからやるよ、実行するよ、といった意味合いを持つ。指示に対して"これから実行します!"といった意味でよく使われる。しかし航空関連でのみ使われているので、地上無線ではあまり聞かないそうだ。
閑話休題、霞が亜美の代わりに指示を出しているが、これもいつもの光景である。亜美が出す指示をすばやく理解し、必要な計算を霞が受け継ぐ。0から1を亜美が作り、霞が1から100にする。今のトキワ隊はこの体制で対人戦を戦い抜いてきたのだ。
そこに、緊迫した声で無線が入った。
「こちら未来、敵機レーダーで捉えました! 近い! もう一つの分隊は全機ステルス能力持ち!」
「反転! 全速でこっちに戻ってきて! 何機だった!?」
「ウィルコ! 6機でした!」
もう一つの分隊を見つけた未来だったが、お互いにステルス能力を持っていたためにかなり近い距離まで近づいてしまった。確実に未来のこともレーダーで捉えられてるだろう。このままでは確実に未来は落とされてしまう。亜美は未来に全速で撤退するよう指示をした。
「作戦変更! 未来ちゃんからのデータリンクで相手の位置は分かってる! 漁夫の利を狙うのもいいけど性に合わないしね。ガンガン行くよ! 作戦Bに変更! 未来ちゃんと合流後は各自データリンクに従って各個撃破!」
「「「「ウィルコ!」」」」
未来は全速力で敵機から逃げているが、もたもたしていると追いつかれてしまう。編隊飛行は燃費が良くなるほか、速度も速くなるのだ。1機で飛んでいる未来に対して6機編隊の敵。確実に未来との距離は縮まっている。亜美たちは早急に合流するべく、未来の方向、しいては敵の方向へ全力で飛んでいた。
作戦Bは2機と3機に分かれて"ロッテ戦法"と言われるものに近い戦い方をするものだ。3機が敵陣に突っ込んで敵機を追い回す。2機は上空で3機に対して指示を送りつつ後方警戒をする。3機側は後方を気にすること無く指示された機体を追いかけ回すことができ、2機は敵機から逃げつつ3機に対して指示を出し、また後ろから追いかけてくる敵機を見つけたら上空から攻撃する事で安全に撃墜することが出来る。
この作戦では、霞と美穂が2機側、亜美とさくらと未来が3機側である。美穂は逃げながら未来に指示を出し、霞は同様に亜美とさくらに指示を出す。数の差が出るが、後方を気にする必要が無い分動きに無駄が少なくなり、技量の差が如実に表れてくるのだ。
「かすみん、今日はなんだか調子がいいから無茶振りも何とかできそう!」
「美穂、私も負けてられないからどんどん指示送ってね」
亜美と未来はこの戦法が大好きだった。戦闘狂と言っても過言ではない二人は、後方を気にすること無く、誰を狙うかを考える必要もないこの戦法で大暴れするのが大好きなのだ。今日も作戦Bになった途端未来は心の闘志をガンガンに燃やしていた。
「(今日こそ亜美先輩に勝ってみせる)」
ここで勝つというのは撃墜数のことなのだが、未来は今の所1勝すらできていなかった。自他共に認めるゲーマーである自分が、たとえ先輩でも勝てないというのがとても悔しいとずっと思っていた。
「こちら未来、亜美先輩の機体が見えました」
「こちら亜美。こっちも視認したよ。反転して美穂ちゃんに指示を貰って!」
「ウィルコ!」
「よし、花火の中に突っ込むよ!」
そして、トキワ隊にとってのWAC初戦が始まるのだった。
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