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ACE Girls  作者: ふろいむ
第五章 失踪
26/38

5 - 7 裏工作

この次の話で登場人物紹介等をしようと思っています。

第五章はここで終わりになります。

 技術力の調査、という建前で武蔵国への滞在許可を貰うことができた。まずはこっちでのアジトを作らなくては。


 ローコックは武蔵国の首都、東京に来ていた。イニーゴに"極秘任務"をちらつかせ、嫌な顔をされながら建前を許可してもらった。ここまで自由に動けるだなんて、ボスの影響力は計り知れないな。そう思いながら、アジトに適した場所を探していた。


「この民家、誰も住んでいないな」


 ローコックが目をつけたのは、築100年は経つであろう古民家だった。木製の柱に断熱材、土台はコンクリート。屋根は瓦ときたものだ。ローコックはこの星の歴史を良く知らなかったが、まわりと見比べて古いということはすぐに分かった。


 一週間観察し、誰も入っていく人を見ないことを確認すると、ローコックはこの家を改造し始めた。外見は変えずに強度を高くし、中身は全く新しいものへと変わっていった。一階と二階はダミーとして普通の家のようにし、地下に大きな部屋を作り本拠地とした。


 ローコックはアジトを作り終わると、仲間集めを始めた。もちろんローゼンブルク(母星)から連れてくる事などできないので、現地調達である。見張りやすく、そこそこ頭が良くて、力の弱い人がいいなと思いながら人探しを始めるローコック。


 地球は耐洗脳の教育に関してはかなり遅れている。未だに詐欺などというものが横行し、そして簡単に引っかかってしまう。洗脳技術も発達しているローゼンブルクから来たローコックに、地球人を洗脳することなど容易いことだった。


「まずはこれくらいっと……」


 アジトの近くに住む学生や年寄りを中心に洗脳をかけ、メンバーを集めたローコックはメンバーの一人である女学生に質問をした。


「お前は全国模試で2位だったな。1位はどこにいるか知ってるか?」

「1位……私が座るべき全国の頂点……守屋祐希……霞ヶ浦学園……」

「そうか、霞ヶ浦学園か」


 霞ヶ浦学園はここからかなり北に行ったところにあるらしい。少しばかり遠出になるがそんな事は言ってられない。ローコックは準備を済ませると、アジトのメンバーを集合させた。


「よし、お前はこのアジトのリーダーだ。メンバーを使って資金調達をしろ。俺は守屋祐希を連れてくる」

「そしたら私が先輩メンバー……私のほうが上……」


 女学生はぶつぶつと独り言を言いながらもローコックの命令にうなずいた。彼女らはここではまるで魂の抜けたような状態だが、必要な時以外は通常の性格に戻り日常生活を送っている。しかし命令には必ず従い、必要な時になれば奴隷のように働くのだ。もちろんこの女学生も普段は勤勉で友達想いな優しい学生であるが、毎晩アルバイトでお金を稼いで軍資金としている。ローコックは武蔵国のお金を持っておらず、守屋祐希の誘拐と洗脳に必要な資金を調達させていたのだった。




「野党の党首があんなんじゃ、この国はおしまいだなぁ」


 ローコックは霞ヶ浦学園に向かう道すがら、党幹部と飲み会をした帰りの党首を洗脳していた。一緒にいた秘書とボディーガードも纏めて洗脳したので、後は好きなときに好きなように使わせてもらうだけだ。


 洗脳するにも時間がかかるので手当たり次第に洗脳、という訳にもいかない。しかし野党第一党の党首を手中に収められれば影響力はかなり大きくなるだろう。これは今後が楽しみになってきた。


「と、もう電車が出る頃だな」


 不審がられないよう、極力自然な移動をしているローコックは電車で霞ヶ浦学園を目指していた。




◇◇◇




 朝。昨日亜美たちに大見得を切ってしまったので、しっかりとアラームを3個つけておいた。そのおかげかしっかりと3個めのアラームで起きることができた。正直危なかったわ。今は駅に向かっている途中で、次の角を曲がれば駅が見えて――


「すいません、守谷さんですか?」


 いきなり後ろから声をかけられた。刹那、俺は角の向こうに飛び込み身を隠す。考えるまでもなく体は臨戦態勢を取っていた。両側が塀で遮られ、来る時は誰の気配もなかったこの道で後ろから声をかけられるなど普通はありえない。こんな頭(全国模試1位)をしているからか、マイクを突きつけられる事はしばしばあった。それが嫌なのもあって後方確認は絶えずやっていたはずだ。それなのに、一切の気配なく後ろに近づいて声をかけるなどできるはずがない。


「いえ、人違いでしょう。いきなり声をかけられても困ります」

「それはそれはすいませんでした」


 俺は振り返った。飛び込んだときには誰もいなかったはずの角の向こう。さっき後ろから声をかけてきたアイツがいつの間にか回り込んで来ていた。マスクに帽子、サングラスで表情が上手く読み取れない。


 サッと飛び退き距離を取る。こいつは正真正銘ヤバイやつだ。関わってはいけない類のアレだ。適当に濁して駅に向かうべきだな。


「では忙しいのでこれで」


 そう言いながら祐希は駅の方へ歩き出した。歩きはすぐに早足になり、最終的には駆け足、ダッシュになった。こんなところで建前など気にする必要はない。本当にヤバイんだからガチで逃げなければ。


「まあまあ、そう逃げなくてもいいじゃないですか」


 祐希は目を見張った。かなりダッシュをしたはずだ。なのに、どのルートを通っても、どう頑張っても間に合わないはずの路地からアイツが出てきた。


「(こいつはバケモノか!?)」


 とっさに避けようとするが、すれ違いざまに男は液体を投げかける。祐希は避けきれずにその液体を体に受けてしまった。服についた液体は一瞬で気化し、祐希は為す術無くその気体を吸ってしまう。


「(なんだ……これ……)」


 意識は1秒と持たなかった。




◇◇◇




 背中が痛い。


 俺は、暗い場所で目覚めた。意識が混濁していて記憶があやふやだ。ここはどこで、今日は何日だ? 昨日の夜はなにをしていたんだ? 思い出そうとするが、思い出そうにも記憶に霧がかかったような感覚で思い出せない。もしや酒でも飲んでしまったか? まだ酒が飲める年齢にはなってないはずだ。いや、今が何年の何月かさえ思い出せないんだ。もしかしたらもう飲める年齢になっているのか?


 自問自答を繰り返すが、一向に記憶は戻らない。亜美と霞とゲームサークルをやってた記憶はある。美穂と未来も覚えている。さくら先生も。でも最近のことが思い出せない。なんだこれ。ダメだ、どうしようもない。


 ここまで来て、祐希は記憶の方に意識がいってしまっているからか自分の現状について考えていなかった。


「(両手が縛られてる!?)」


 両手が縛られ、足も縛られ、目隠しをされ、耳栓までされている。こんな状況、二つくらいしか考えられない。


「(レイプ目的か、もしくは誘拐か……)」


 どちらにせよ最悪なのは間違いない。ここに来て、祐希は自分に為す術が無いことを自覚した。


「(結局は、この拘束が解かれるまで何もできないな)」


 がごん!


「(……何だ?)」


 唐突に祐希の体が下から突き上げられる。とはいえそこまで強くはなく、ただ揺れただけとも言える。しかし、この一瞬で自分が置かれた環境を祐希は理解した。


「(車か。まだ助かる余地はあるかもしれない)」


 そして縛られた手を頼りに、ドアの位置を探り出した。自分は後部座席の左側に座っているようだ。窓にはカーテンが掛かっている。多分外からは見えなくなっているのだろう。祐希はそのカーテンを思いっきり下へ引っ張った。カーテンを破って、自分の拘束された姿を外から見えるようにすれば誰かが気づいてくれるだろう。


「(後はドアを開けるかどうか……開けても降りられないよな)」


 祐希はドアを開けることはしなかった。そのせいで転落して死ぬことも考えられた。とりあえずはカーテンの先で誰かが通報してくれることを祈るのみだ。


「おやおや、カーテンを破ったら外から丸見えじゃないですか」

「!?」


 いきなり、右側から声がした。耳栓をしているはずの耳に至近距離から声が届く。どうやら耳栓だけではなくイヤホンとしての機能もあるようだった。


「面倒ですが、もう一度眠ってもらいましょうか」


 やめろ、と言おうとしたが、言う間もなく眠ってしまった。




◇◇◇




 ローゼンブルク人が使う洗脳術は、催眠されている時は完全に意識がなくなっている。そのかわり命令に必ず従うだけの仮の意識が入れられ、体を操る。起きたときには眠っている間の記憶は無く、また時間が経たないと眠らされる直前までの記憶が戻らない。さっきの祐希はまさにその状態で、ローコックによって眠らされた祐希は強制的に催眠状態に入れられ、洗脳されていた。そして催眠を解いて、起きてすぐだったので記憶が混濁していたのだ。


 ローコックはそれだけでなくさらに高度な技術を持っていた。洗脳される直前の記憶の改竄である。とはいえ改竄と言っても出来ることは記憶の消去、自分の発言内容の簡単な改竄くらいである。しかし、これのおかげで長期的な洗脳工作を可能としていた。洗脳されたメンバーは、何も疑問に感じること無く日々の生活を送っていた。


 しばらくしてローコックは、洗脳したメンバーのうち"使える"メンバーを集めて東京を出発した。向かう先は南極だった。ASSF(南極サーバ防衛部隊)の隊員を洗脳することで、南極までの足がかりを得ていた。


「これで必要な準備はほぼ整った。あとはお前らが死ぬほど働けば全てが"始まる"」


 部屋に洗脳したメンバー全員を集めたローコックは、そこで今後の目標を口にした。


「まずはローゼンブルク基地に向かう。基地には極秘に持ち込んだ戦闘機械が隠してあるからな。その機械をもって最初に南極の基地を叩く。南極の基地には生きていくために必要な物資、食料しか存在しないはずだ。抵抗は無いだろう」

「その次はサーバ基地だ。サーバは壊すなよ。後で存分に使わせてもらう」

「宇宙基地は制圧しなくても大丈夫だ。あっちの方は仲間が制圧してくれる」


 ローコックは一緒に来たローゼンブルク人たちも一緒に殺そうとしていた。宇宙基地にはすでに潜伏していた仲間がいるらしい。


「サーバを掌握したら、サーバにあるデータを元にこの星に適応した戦闘機械を生産する。後は適当に一個一個侵略! そして定期的にボスと連絡を取って戦略を調整する! 以上!」


 かなり大雑把な計画だが、言っている内容は凄まじいものだった。




◇◇◇




「何者だ!?」

「何故ここに戦闘機械がいる!?」

「防衛用の武器はどこだ!」

「ダメです! 武器庫がロックされています!」

「応戦できません! 逃げるしか無いです!」

「誰がこんな事してるんだ! 早く捕まえろ!」

「無理です! 我々は応戦する武器すら手に入れられなくなってるんです!」


 南極のローゼンブルク基地はパニックに陥っていた。いきなり基地の地下から戦闘機械が出てきたと思えば、仲間であるはずのローゼンブルク人を殺し始めたからだ。武器で応戦しようにも、頼みの武器庫はロックが掛かっていた。何もできないまま基地を追い出され、近くに小屋を建設して監視の任務についていた南極サーバ防衛部隊の監視隊員に助けを要請した。


 隊員は要請に対し、自分らでは対応が難しいことをすぐに察し、本部へ連絡を取った。本部から帰ってきた命令は『隊員を最優先しつつ、ローゼンブルク人を本部基地周辺の仮設基地へ誘導せよ』だった。


「では、我々について基地へ御同行願います」

「もたもたしてられん、俺達の移動機械を使ってくれ」


 ローゼンブルク人が持ちこんだ移動機械に乗って、隊員は本部基地へと向かった。この騒ぎが故意的なものである可能性を考えた上で、しばらくは厳しい対応になるだろうと伝えると、ローゼンブルク人はうなだれながら


「仕方のないことだ」

「全責任は我々にある。本当に申し訳ない」


と言うのだった。完全に意気消沈しているローゼンブルク人だが、その中でも一人、イニーゴだけは苦虫を潰したような顔をしていた。


「あいつめ……」


 そして、今は見えないローゼンブルク基地の方向を睨むのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。誤字脱字、おかしい点などがありましたら指摘していただけると恐縮です。

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