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ACE Girls  作者: ふろいむ
第五章 失踪
25/38

5 - 6 南極でのその後

最近ブックマークが増えて嬉しいです。画面下の評価もしてくれる人がいて感無量です。ありがとうございます!

「ふむ、地球か」


 私は部下から上がってきた資料に目を通す。終末回避対策室というものがあることは知っていたが、正直ここまで大きな権力を持っているとは思わなかった。資料の右上には元帥の名前が書かれており、流石に元帥の命令とあらば逆らうことはできない。


 将軍に誘われてから数年、驚異的なスピードで少将まで上り詰めた私は、新たな植民星の開拓を行う部門でトップを任されていた。我々でも何個か植民星の候補を絞ってはいたのだが、ここに来て上から強制的に決められてしまいてんてこ舞いだ。


「軍隊ならば上の命令は絶対だ。従うほかあるまい」

「では各班に伝えてまいります」

「よろしく頼んだよ」

「了解であります!」


 そう言うが早く、伝令係は部屋を出ていく。するとそこに入れ替わるように一人、見知らぬ客がやってきた。少佐のワッペンを付けているがこんな奴は見たことない。流石に怪しすぎるので腰の銃に手をかけておくが、それを見ても客はニコニコとするだけだった。


「すいませんね。私、統合参謀本部のものでして、極秘任務の最中につき空軍さんにお邪魔させて貰ってます」

「信じろって言う方が無理な話ですね」

「まあそうですよね。実はそこにある名前、私の名前なんですよ」


 そこ? どこを指している? その先にあるのは……先程伝令が持ってきた資料だけだぞ。


「そこに書いてありませんでしたか? 統合参謀本部から一人派遣すると」


 言われるがまま資料にもう一度目を通す。そこには客の言う通り統合参謀本部から視察を一人寄越すと書いてあった。しかし客は極秘任務と言っていたな。こんな資料に書いてある任務を極秘任務とは言わないだろう。他に重要な任務があるため、空軍にいる必要がある。この辞令はフェイクなのだろう。客の服にはここに書かれている名前と同じ刺繍がされていた。


「そういうのは早めに言ってくださいよ、危うく撃ち殺すところでした」

「はは、申し訳ないですね」

「なにかお手伝いできることはありますかね」

「いえ、私が基地内を歩き回れるよう手配していただく以外には」

「よろしい。では後ほど通行許可を出しておく」

「助かります」


 それだけ話すと、「まだやることがあります故」と言いながら客、"ローコック"は姿を消した。




◇◇◇




 さて、ファーストコンタクトは上手くいっただろう。あとは彼らがしっかりとした場を設けてくれるのを待つだけだ。そこで少しだけ科学力の違いを見せつけて、こちらに有利な状況で友好を結べれば完璧だ。


 そういやここに来た理由を聞かれなかったが良かったのだろうか? あのときはすごすごと帰っていったが。まあこちらは攻撃されない限り危害を加えるつもりはないから良いか。


「リーダー、外交官がきました」

「よろしい。向こうが良いと言えば中に入れて構わん」


 なかなか素早い対応だ。この星は一つの権力が全てを支配している訳では無いらしいが、さすがの事態に最優先で対応してくれたのだろう。感謝だな。


「失礼します。武蔵国在南極特命全権大使の坂東椎久と申します。まずは地球へのご訪問、ありがとうございます。我々はあなた方を歓迎し、友好を結ぶ準備ができております」

「こちらこそ、いきなり来てしまって申し訳ない。友好関係を結びたいのはこちらも同じだ。今後ともよろしく頼む。そうだ、ここに来た理由などは聞かなくて良いのですかね?」

「そのことに関しても今回お伺いできればと」

「あーその、なんだ。やっぱり私は敬語が苦手でな。お互い楽に話ができるとありがたい」


 結局、坂東が持ってきた食べ物を食べながら7時間は話し込んでしまった。この国の状況や私の星の状況、ここに来た理由を話し、我々の技術力についてかいつまんで説明した。自在に変形する箱を見て坂東がめちゃめちゃ驚いてたのを覚えている。


「結局、あなた方が来た理由というのは植民星への中継基地と補給基地として地球がベストだったから、という事で合ってます?」

「ええ、その認識で合ってます。我々が要求したいのは宇宙船の着陸基地と資材保管場所、現地職員の居住区域と食料です。こちらは技術力の支援を行う準備ができています」

「ふむ。しかしどこにその場所を作るかが問題ですが……」

「ここではだめでしょうか?」

「南極は現在この地球の生命線でありますので難しいかと。最終的には海上基地から宇宙エレベータ、そして宇宙基地という形でお願いすることになるかと思います」

「それで十分です。本当に助かります。基地建設はあなた方の監視のもと我々で行うことも可能です。そのための資材は多めに積んできましたので」


 そして、坂東を出口まで送り我々の初日は終了した。




◇◇◇




「(なんなんだあの技術力は!? 我々は彼らに感謝せねばならない。彼らが少しでも本気を出せば我々は為す術無く地球を奪われるだろう。友好関係を"結ぶ"とは言ったが、実際の所"結ばせてもらった"ようなものだ。これはすぐに内閣に報告せねば……)」


 坂東椎久は基地へ帰りながら会談で話した内容を反芻していた。全体的に相手の姿勢はかなり好印象で敵意はかけらも見えなかった。しかし本当にそう捉えてしまって良いのだろうか?


「(奴らから見れば我々はアリ同然。少しでも邪魔だと思われたら一瞬で踏み潰されてしまうな)」




◇◇◇




 東京は大忙しだった。武蔵国、ひいては世界の重要施設が集まる武蔵国の首都東京。その一等地にある災害対策委員本庁舎では、大統領と首相が難しい顔をして向き合っていた。


 その部屋の入口には「地球外生命体対応本部」と書かれた看板が掲げられている。「対策」としないのはこちらに対して危害が無いからだろう。部屋の中には二人の他にも多くの人がタブレットやインテリデバイスを操作しながら行き来していた。


「悩んでいてもどうしようもないよな」


 そうこぼすのは大統領の伊庭(いば)来紀(らいき)。5人が立候補した大統領選で8割の得票を得て完全勝利し、それから20年大統領の椅子に座り続けている。ここまで長い間座っていられるのは制度的に象徴大統領であるからというだけではないだろう。その人望、行動力、決断力は誰もが認めるところだった。


「そうだよね……もう開き直るしか無いか〜」


 そして相槌を打つのが首相の下妻(しもづま)冬香(とうか)。大統領が象徴的な存在であるのとは反対に、この国の実質的なリーダーである首相をかれこれ15年は続けている。こちらもまた人望や決断力が評価されているが、実はその年に見合わない"かわいさ"が人気の大きな理由である。大丈夫なのか武蔵国……仕事はしっかりこなすのでまあ大丈夫だと思います。


 二人は小学校時代からの友人で、現在もよく一緒に飲むくらいの仲である。災害大国である武蔵国に幾度となく降りかかる危機をその連携力で見事に乗り越える様は、諸外国からは「夫婦閣下」等と呼ばれるほどだった。ちなみにお互い相手のことを信頼し尊敬しているがそこまで好きではない。そんな二人だが、流石に今回は想定外すぎて対応がままならない状態だった。


「まずは国民にどう知らせるか、だ」

「どう知らせるも何も、『宇宙人が来たので友好関係結びました〜』って言って信じてもらえるわけないよ」

「そうだよな〜」


 はぁ〜と息をこぼす伊庭(大統領)


「もうさ、隠しちゃおうよ」

「そんなの一瞬でバレるに決まってるじゃない」

「彼らの技術力ならなんとかなるんじゃない?」

「……そうか、彼らの協力があれば何とかなるかも」


 下妻(首相)はしばらく考え込んだ後、近くを通ったスーツの男に声をかける。その男は驚いた顔をして直ぐにタブレットを操作し始めた。


「さてさて皆さん、お忙しいところすいませんがご注目ください!」


 伊庭が大きな声でその場にいる全員に呼びかけると、それを聞いた対応メンバーはその場ですっと気を付けをし大統領の方を向いた。当たり前だが大統領だけあって統率力は抜群である。


「我々の基本的な行動がたった今決まった。まず初めに宇宙人どもと対談する。そして奴らの存在は隠し通す! 宇宙人には協力してもらう! 以上!」


 いつの間にかつかつかと前に出てきた下妻がそう言うと、メンバーからは大きな声で返事が返ってくる。そして対談の準備、箝口令に関する書類の作成など、新たな仕事に取り掛かり始めた。同時に南極に連絡を取り、会談の準備を始めるよう指示を飛ばす。


 宇宙人の襲来なんていう大事を準備もなしに公開することは大きなリスクを伴う。下妻は準備期間を得るために宇宙人に協力してもらうことにした。嬉しいことに友好的な態度を示しているのでうまく話を進めれば協力を得ることはできるだろう、と思っていた。


 程なくして、南極から返事が返ってきた。



『ローゼンブルク人から是非にとの返事をいただきました』



「やったわね。私たちは南極に行く準備をするわ。飛行機の準備をお願い!」

「では、私も同行するとしよう」

「頼んだわ。あんたがいると時間稼ぎにちょうどいい」

「時間稼ぎって……」


 二人はそう話しながら対応室を後にし、それぞれの自宅に帰ったのだった(二人とも公邸は使わず、自宅で生活をしている)。




◇◇◇




 この星の一番大きい国、武蔵国。そこの首相からお話があると連絡があった。しかも大統領まで来るという。流石にこんなに早く一国のトップと会えるだなんて思ってもいなかった。既に話の概要は伝えられており、我々をしばらく隠し通したいとのこと。まあそうしたくなるのも分からなくはない。我々はただ協力するだけだ。


「首相及び大統領がいらっしゃいました」

「通せ」


 早速やってきたか。さてさて、どんな奴らなのか……


「こんにちは。寒い中わざわざ申し訳ありません。こちらにおかけください」

「こちらこそ急に申し訳ないわ。こちらは大統領の伊庭。私は首相の下妻です」

「お二人のことはよく知っております。偵察しに来たときからこの星の実質的なトップだと認識しておりました」

「いえいえそんなこと。この星では一つの組織としてまとまることはとうの昔に諦めています。我々はその中の一つの組織のトップであるだけです」

「そうは言っても、武蔵国はこの星で他の追随を許さない最大国。我々がこの星に滞在するために協力する相手としてピッタリだと思ってます」


 まずは軽い話から入り、相手を褒めちぎる。第一印象は大事だからな。それはこの星でもそう変わらないらしいし、このまま友好関係を結びつつ、相手の”お願い”とやらを聞いてあげよう。


「それで、本題の方ですが――」

「ああ、聞いております。我々を秘匿したいと」

「そうです。現時点で世界にあなた方を公表するにはリスクが大きすぎます」


 隣りに座ってニコニコしてるだけの大統領さんは一切しゃべらないな。ただついてきただけではあるまい。敵意は感じられないが少し要注意だ。


 私は視線を使って部下に命ずる。部下はすぐに理解し、一層警戒を強めた。


「――という事で、我々はあなた方に秘匿のお手伝いをお願いしたくここに来たというわけです」

「秘匿、ですか。しかしあなた達の言葉にも『人の口に戸は立てられぬ』ということわざがあるように、簡単に行く話では無いと思いますが」

「その点に関しては、新種の動物が見つかった、などフェイクを使ってどうにかします。どうにもできなくなるまでは隠蔽し、公開の準備を進めたいと思っています」

「では、公開の準備が終われば秘匿は終了するのですか?」

「そうですね。その時が来れば、正式に公表します」


 首相しか話していないが、大体の打ち合わせは大事もなく進んでいった。さて、後は……


「我々は何をすればよろしいので?」

「まずは、人間への不要な接触を控えてもらう事、接触する場合は必ず人間の形態となり、地球で使われている言語を使用すること、それ以外は宇宙空間の基地で生活することです」

「まあ、予想通りと言いますか、それくらいなら大丈夫です」

「ありがとうございます。しばらくあなた方との接触は我々が選んだ数名の監視員のみとさせていただきます。宇宙基地の建設が終わり次第、早急に南極の基地を撤収、宇宙基地へ移住をお願いします」

「分かりました。今日はこれくらいでよろしいですか?」

「はい。本日はありがとうございました」


 そう言うと、二人は礼をして部屋を出た。大統領は一切喋らなかったな……




◇◇◇




 今までの話は、2102年に起こったことである。2103年には宇宙基地ができ、ローゼンブルク人のほとんどが移住した。南極に作った基地はそのまま駐在基地として残し、ASSFに対する大使館のような扱いとなった。それから16年、ローゼンブルク人からもたらされた科学技術によって地球の科学力は大きく発展した。とは言え、いきなりの発展は混乱を招くということで、少しずつの発展となっていた。しかしそれでも地球にとっては大きな進歩であり、その結果フルダイブ技術の習得にまで至れたのだった。


 そこから更に7年。鹿島亜美が大学に進学し、ゲームサークルを立ち上げる。一年かけてメンバーを増やし、部活へと昇格。無事に最初の一年を終えることができた……はずだった。


 修了式。天才少女だった守屋祐希は学校に来なかった。どこを探しても見当たらず警察もお手上げな状態で、亜美たちがスクランブル交差点の広告に見たのは、テログループの宣戦布告動画に映る祐希の姿だった。

ここまで読んでいただきありがとうございました。誤字脱字、おかしい点などがありましたら指摘していただけると恐縮です。


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