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3話 ブラック・クローク(前編)

「ブラック・クローク! ダンテ、君の契約者はブラック・クロークだったのか!?」


 黒い服の女性を見たレミントンは驚いていた。

 レミントンが知っているということは有名なのだろうと了は率直に感じる。


 黒い服の女性は了からすると「魔法少女」などと呼ばれるような雰囲気ではなかった。

 ヒールを含めて175cm以上、明らかに20歳ぐらいの大人の女性の体格であり、素の身長も了と同じぐらいかそれ以上あるように思える。

 

 黒いオーバーニーブーツの上はスカートのようであったが、了は1点気になることがあった。

 下着が見えているのである。

 下着か水着のような白いローライズのソレは、特に風が吹かなくとも正面から完全にチラリと見えるような状況であった。


 スカートは中央よりやや左よりに大きくスリットが設けられ、ヘソの位置あたりまで切れ込みが入っているためだ。


 スリットが入る根元部分には金色の金具が設けられているがこれはチャックではなかった。

 全体的に黒に金色の彩色が施された服を着用している。

 アクセサリー類は全て真鍮のような淡い金色であった。


 そして頭の後ろからは布が垂れているが、鉢巻なのかリボンなのかはわからなかった。

 結構大きいサイズの黒い布が風になびいている。


 もう1つ気になるのが、表情が見えないことである。

 前髪がやや長い影響ではあると思うが、とにかく眼のあたりの部分が見えなかった。

 了からすると鼻と口元しか見ることが出来ない。


 その姿が、彼女をより強烈な存在として認識させていた。


「昔ならいざ知らず、今は担い手が契約者に関する情報をマスターサーバーに登録する義務はありませんからねえ。貴方が知らなくても当然でしょう。それに、貴方も名義登録はしてないじゃないですか」


「あっ……しまったッ!……」


 お前も登録していないから誰と契約したかわからないじゃないかとばかりにレミントンに指摘したダンテであったが、レミントンはダンテがいうブランクの影響なのか、了と契約した情報を登録していなかった。


 了はその会話から、ダンテ側もこちらの名前も情報も何も知らないのだと推察する。

 友人関係ではなさそうではあったが、ダンテとレミントンは知人関係程度のものはあるようであった。


「さぁ、帰りますか。次の地点の情報が来てますし」


 ダンテはこの状況を続けても無意味だと感じたのか、ブラッククロークと呼ばれる女性にチョイチョイと手を使って離脱を促した。


「さっきはありがとう! まだビギナーでヤバかったんだ」


 実質的には横取りと変わらない状況ではあったが、鬼の攻略法を見出せなかった了は素直にお礼を述べた。


「レミントンの契約者。ワタシなりに助言をするならば、器物損壊はあまりしないことです。修復できるといってもEPから差し引かれます。状況によっては赤字もありえますよ」


 ダンテのいうEPとはエーテルポイントと呼ばれ、活動に対する報酬であり、五次元世界での通貨単位の1つである。


 ポイントを用いることでこの三次元世界での現金や様々なアイテムと交換出来、契約者というのはこれを稼ぎながら活動をすることとなる。


「えっ」


 建物は気にしなくていいと言ったレミントンに対し、ダンテはレミントンより高位に位置する担い手らしい的確な助言を与えてきた。


「……その程度の戦闘力のままじゃ……下級ヴェノムでも勝てないよ……」


「うわっ」


 真後ろから女性の呟く声が聞こえた。

 ブラック・クロークであった。

 ダンテばかりに視線を向けていたため、彼女が真後ろに移動してきたことに了は気づかなかった。

 ブラッククロークの移動速度は想像を遥かに超えたものである。


 了の機動力はAという最大ランクであるA++から2ランク低い程度であったが、ブラック・クロークの移動速度は最大速度の了を遥かに上回っていた。


 間違いなくA以上の機動力ではあったが、もしかすると特殊能力か何かなのかもしれないと、了はやや不気味に感じた。


「大人しくアクシオン回収だけしていればいい……この地域は私がいる……」


 そう呟くと、フッという音と共にブラッククロークは了の目の前から消え去った。

 了がダンテの方を振り向くとダンテも消えていた。


 了はその状況に拳に力が入った。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ダンテ達が立ち去った後、レミントンは破壊された建築物やランドクルーザーをなんらかの方法を用いて修復した。


 了が破壊すると赤字になるという意味について問いかけると、ビギナーの現在は問題視されないが、ある程度戦闘を重ねると、不用意な損壊を与えた場合に勝利時の報酬EPが減らされることについて説明した。


 レミントンが気にするなといったのは、現段階では差し引かれることがないためであり、ダンテの話も自分の意見もどちらも間違っていないということを了に説明した。


 わずか15分程度で周囲の建築物などを修復すると、二人は帰路についた。


「それで、ブラック・クロークって何。強いのか?」


 CB400に乗りながら、了はレミントンが発したブラッククロークについての回答を求める。


「ダンテは現状でAランク最高位のA++の担い手だ。Aランク帯はBランクとは大きな壁があるけど、Aランク内だと様々な評価でランクが上下するのでAランク同士ではそこまで大きな差はなかったりするんだが、8年ぐらい前から彼はA++評価をもらっている」


「ふーん?」


「同時期に現れたのがブラック・クローク。ここら辺で彼女の通り名を知らない者はいないと思うぐらいのツワモノ。どういう特殊能力をもっているかもわからないが、今日みたいなヴェノムなら容易く討伐するとは聞いていた……ちょっと、前見て!」


「おっと」


 会話に聞き入って信号が赤になったことに気づくのが遅れた了はやや強めのブレーキで停車する。

 停止線の前で停車できたことに了はホッとした。

 目の前には横断歩道があったためだ。


「じゃあアレが特別強いだけで、俺がめちゃくちゃ弱いというわけじゃないんだな?」


「どうかな……了の近接ステータスに対して随分攻撃力が低かった気がする。原因を調査しようと思う。一旦家に戻ろう。」


 レミントンは今日の活動を切り上げる提案をした。

 了も気が乗らなかったため二人は一旦帰宅することにした。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


 家に着くと夕食の時間帯となっていた。

 了は一人っ子で父親や母親も存命だが、両親は最近居候が1名増えたことを知らない。

 レミントンは物質世界での楽しみの1つに食事を挙げているが、最近了の隣に座ってどこからか持ってきた美味しそうな料理を食べている。


 それらは両親に見えなかったが、了がつまみ食いすることは可能だったため、物質で構成されていることは理解できた。


 ただ、レミントンは食事を横取りされるのは嫌いらしく、つまみ食いすると非常に怒るので数回ほどやって以降は控えていた。


 夕食を採った後、二人は反省会を開いた――

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