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文化祭は波乱を招く

 拙い文章ですが読んでいただけると嬉しいです。

 ジャスト6時、起床完了。私の高校入学祝は一人暮らしだった。親が近すぎて煩わしかったから。必要なものが過不足なくそろったここは私だけの王国。煩わしいとはいえ母が嫌いなわけじゃない。友達がいない分仲いいと思う。友達ができると依存しすぎて嫌われるからいつも独り。

 学校が始まる。闇のような現実。だから朝は嫌い。

 

 「渡辺さん、今日文化祭の打ち合わせするから」

 実行委員が私に言った。休めばよかった。文化祭なんて恐怖でしかない、クラスメイトのみならず過去の知り合い、嫌いな相手。友人なんて他校にさえいない。文化祭で友達さえできるわけがない。ああいやだ。私は衝動的に図書室へ行く。打ち合わせなんて御免だった。

 音楽を聴きながら外を見る、快晴だ。隣に人が来た。クラスメイトの浦戸 達也。はっきりした端正な顔立ちで学年で一二を争うイケメン、理系の学年トップだが、人ぎらいさがにじみ出ている。授業が終わるといつも机に伏せていて、誰とも会話しない。目が合った。彼は言った

 「何を聴いているの?」

 イヤホンを外し答える。

 「遺作」

 「悪くないよ。俺も結構好き」

 今まで小ばかにしたようになにそれ演歌?などと聞かれることもあった。

 「音楽は好きなんだ。クラッシックとロック。」

 それからしばらく間が開いて彼は言った。

 「俺帰ろうかな。残り嫌いな教科だけなんだよ。文系の何が面白いんだ。」

 「じゃあ私も帰ろうかな」

 なんとなく言った一言。

 「そういえば知ってた?俺渡辺さんと駅同じ。一緒に帰る?」

 楽しいと思っていて、断る理由もなく一緒に帰ることにした。

 歩きながら浦戸君は言った。

 「やっぱり似てるとこ多いね俺たち。興味深いなって渡辺さんのこと思ってた。なんか行動が似てるから。こういうの珍しかったから」

 秀才な浦戸君に言われると少しうれしかった。

 

 「今度紅茶おいしい店に一緒にいこう。」

 メールにそう書いてあり、行くという趣旨を返信したところでインターホンが鳴る。母だろう。

 「やあ」

 「神崎君」

 顔をしかめたかもしれない。

 「覚えててくれたんだ。渡辺さん。文化祭の書類を渡しに来たよ」

 「ありがとう」

 「なぜお母さんが一緒か疑問に思っただろう。先生、君が親と一緒に暮らしていると思ってて実家のほう教えてくれたらこういうことだから、君のお母さんが案内してくれたんだ。渡辺さんとも話したかったし」

 白い歯を見せて笑う神崎 涼。学年一のイケメン、モデルのようで涼しげな目元が特徴の特に整った外見をしている。人懐っこい笑顔の人気者で少しうらやましかった。努力家で何でもできる文系の学年トップ。

 「文化祭でないの?」

 「友達いないのに出たって楽しくない。他校にさえいないんだ。どうせ嫌われてる」

 笑顔が固まって彼は考え込む。

 「そうだ。なら僕が一緒に回るよ。それでいいだろう。ただし準備もこれからは出るんだよ。出し物はお化け屋敷になったから」

 嫌な予感がした。次の瞬間

 「まあ、まあ。そうまでしてもらっちゃ断るわけにいかないわね美咲ちゃん。」

 お母さんには逆らえない。おのれ神崎。

 「わかった。約束だよ」


 「すごい、おいしい。このアップルティー最高」

 土曜の午後、店内にはジャズが流れ、周りはすいても混んでもいない。快適なくつろぎやすい場所。

 「渡辺が喜んでくれてよかった。渡辺はおいしそうに食べるよね。」

 「えっ。そう?そういえばお父さんにも言われたな。」

 「ふうん。奢ってやるよ。テストがんばれよ。明日で二週間前だぞ。」

 「ああそうだった。もう世界が終わった。」

 「渡辺の都合で世界終わらせんなよ。渡辺って面白いな。女苦手だけど渡辺は何となく別な気がする。」

 浦戸君は柔らかい笑顔を見せた。

 「ねえ、勉強教えてよ。理系だけでいいから。」

 突如閃いて、口に出す。多分断られるだろうけどなんて言うんだろう。

 「別にいいよ。マジで理系だけね。俺文系って大っ嫌いなんだ。」

 「それは聞き捨てならないね。」

 これは私のセリフじゃない。私たちはそろって声のした方向を見る。

 「やあ渡辺さん、浦戸君。青春だねえ」

 愉快そうに言ったのは神崎君だった。上品なブリティッシュの服を着ている。

 「僕もここにはよく来るんだよ。ここ座っていいかな?」

 私の隣の長いすを指す神崎君。

 「無理。」

 浦戸君は平淡につぶやいた。神崎君は冗談と取ったのか座る。

 「文系を毛嫌いしなくてもいいと思うけどね。世界史は素晴らしいよ、ロマンの塊だ。古典文学には夢がある。それに」

 なに言ってんだろうこの人。

 「それが現実で何の役に立つんだろうな。実際に役立つのは理系科目だ。」

 この寒いやり取り早く終わんないかな、時間たつの遅いわ。

 「浦戸君。残念なことを言うね。君がほしいのは知識じゃなくて金なんだな。」

 「その通りだよ。金さえあれば世の中思い通りさ。」

 10分近く文系理系闘争が繰り広げられていた。私はもはや寒気までしていたが、最後に神崎君は肩をすくめて話題を変えた。

 「ねえ浦戸君。文化祭出てくれよ。頼むよ。君が出たら喜ぶ女子も少なくはないはずだよ。」

 「時間の無駄。俺は客寄せパンダじゃない。」

 神崎君はあきれるポーズをとった。

 「わかったよ。気が変わったら好きにしてよ。じゃあ、渡辺さん。文系は僕が教えてあげるよ。いいよね、浦戸君。」

 「勝手にしろ」

 目も合わさずに言う浦戸君と、無邪気に笑う神崎君。

 「理系は君に勝てないんだよね。ねえ浦戸君、僕にも教えてくれない?」

 浦戸君は顔をしかめて首を振った。神崎君はまた笑った、冗談だったのかもしれない。


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