状況はあまりにも一瞬で変化する。
うーん。おそらくこれから不定期投稿になりそう。
──「どうしてこうなった?」という言葉がある。
いきなりなんだ? と思うかもしれないが黙って聞いてほしい。
「どうしてこうなった?」という言葉は、アニメにマンガ、ライトノベルからネット小説まで様々なメディアで、主人公たちが予想外の事態に直面したとき常に発してきた由緒正しき言葉であり、逆にそうであるからしてリアルではほとんど言う機会に恵まれない言葉である。
だからこそ──
俺は今いるあまりにも豪奢な空間で小さく声を漏らした。
「──まさか自分がそれを言う機会に恵まれるとは、全く予想がつかなかったなぁ。ま、とりあえず言っときますか……どうしてこうなった?」
さて、何故俺がこの言葉を言うような事態に恵まれた(正しくは巻き込まれた)かといえば、話は俺が冒険者になるために、国内最高峰の学校に入学すると宣言し、それから少々の修業期間を経て、入学試験を受け、それが無事終了したところから始まる。
……いや、無事ではなかったか。ともかくその時から始まった。
……それによく考えたら「どうしてこうなった?」って意外と使われてるかも……──ま、いいか。
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「……ええと? 君が? 俺と?」
「? そうだが……」
なんで異世界に来て初めて受ける告白が男なんだ? まさかこれはいわゆる腐った方の「ふじょし」の陰謀なのか?
そんなわけないとは思うがとりあえずここは丁重にお断りしよう!
「えっと、流石に男の人とっていうのは……」
「ん? 男? …………ああ! これはすまない!」
慌てたようにそう言った少年は少し残念そうにしながら、俺の腕から降りると──
「よいしょ」
おもむろにズボンを脱ぎ始めた。
「ちょっ! 何やっ………………て?」
その行動に例え10歳でもその行動はアブナイ! と思った俺は即座に止めようとしたが、直後に起きたよくわからない現象に固まった。
その現象とは、少年がズボンを脱いだ瞬間に足がギュンと伸びたのだ。しかも足は女性のそれだしスカートも履いちゃってる。
全体像を見てみれば、上半身は少年の体、下半身は女性の足という非常に気持ち悪い状態になってしまっている。
……逃げ出していいだろうか。
「ふう、これでよし!」
俺が現実逃避している間に、なぜか上半身も女性のそれになっていた。いや、それが正しいのだがさっきは上半身が少年で……もう、いや、わけわかんない!
「先ほどは混乱させて悪かったな」
いや、今もむしろ、と言うか今の方が混乱していますよ。
と言おうとしたのだが、そこにいた綺麗な女性を見て固まった。
いや、見惚れたからというわけではない。
あ、別に綺麗ではないってわけじゃないぞ。
今目の前にいるのは金髪碧眼の美少女だ。うん、綺麗なのだ、が、とりあえず何者だと思って[神眼]使ったらとんでもない事実が発覚してしまったのだ。
それは──
「それと、名乗っていなかったな。私の名前はレイア=フォン=ピラミッドだ。一応この国の第二王女という位置付けになっている」
──なんと、お姫様第二弾である。
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その後ついて来てくれと言われてしまい、流石に国のトップの身内に逆らうのは愚策であると思ってついて来たわけなのだが……
ほんと、なんでこんなことになってんだ?
場所は非常に豪華絢爛な部屋。言うまでもなく王城の中にある客室だ。
置いてある家具はもうびっくりするくらい派手だ。なんか愚王の作ってる部屋っぽい感じがする。
いや、カイザーが賢王であると言うのは知っているので、この豪華な部屋についても何か意味があるのだろうと思う。例えば、つい先ほどまで戦ったかませ犬くん(名前はなんだったっけ?)が客として来たときにある程度豪華じゃないと文句が出そうなので、そういうのを防ぐため、などだ。
つまりこの部屋に文句はないのだ。
ではなぜ俺はこんなにこの部屋が豪華だ絢爛だと言うのかといえば──
「やばい、落ち着かない」
いや、俺は前世では復讐に明け暮れるまで割とごく普通の人間だったんだよ? それがいきなりこんな場所に連れて来られて堂々としていられるわけないじゃん!
しばらく落ち着きなくそわそわしていると、ようやっとここに連れてきた張本人である美少女と、
「久しぶりだな。実に面白い決闘を見せてくれた少年よ」
「お久しぶりですハルくん。よくもまああっさりと逃げてくれましたね」
なぜか国王と宰相がやって来た。
「どうして国王様(笑)と宰相様がここに?」
「? 今私を呼んだとき後ろに変なものを付けなかったか?」
「? 何のことです?」
「……まあ、い。私がここに来たのは君が以前の決闘以上に面白いことをしてくれたようだから、その話をしたくて来たのだよ」
「はあ」
「私は以前話したことをもう一度」
「うむ、どうやらハルは父上とアヤト殿の知り合いと聞いたぞ。しかも二人ともその実力を認めているという。ますます結婚にしたいと思ったぞ」
「はあ……」
ホントにどうしてこうなった!?
……とりあえず何か普段やっていることをして落ち着こう。落ち着かないと始まらない。
そういえば目の前にいるお姫様をもう一度[神眼]で見てみよう。いろいろと気になるものがあったんだよな。
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レイア=フォン=ピラミッド
《種族》ヒューム
《性別》女
《年齢》14歳
《職業》ピラミッド王国第二王女
《レベル》457
《能力》
HP 01000
MP 01000
STR 1000
VIT 1000
AGI 9999
DEX 9999
INT 1000
LUK 1000
《技能》
[魔乱の呪][極・槍術][武術総合][身体強化][縮地][修羅の境地]
《ボーナスポイント》000
《称号》修羅姫、槍の鬼、柔の極み
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うーむ。これは何というか、すごいな。何がすごいってステータスがすごい。完全なステータス一転秋風タイプだ。
AGIとDEXがすでにカンストしてるってどういうことよ……
おそらく称号に理由があるのだろう。俺はさらに[知恵の書]を使う。
[知恵の書]さんは最近暇だったのでここに来て連続で使っていることに嬉しそうにしながら情報を渡してくれた。
称号:修羅姫
詳細:自らの肉体を苛め抜いた先にある修羅の道に踏み入った姫にだけ与えられる特別な称号。全ステータスに大幅な上昇補正と、技能[修羅の境地]を獲得する。
技能:[修羅の境地]
効果:技能[身体強化]の強化バージョン。この技能を極めるとさらなる力が手に入る。
何というか、物凄くストイックなのが分かる説明だ。ちなみに[身体強化]は魔力、つまりMPを消費することで自らのステータスを上昇させる技能だ。[限界突破]はすべてを強制的に引き上げる力なので[身体強化]とは別である。
……そういえば最近[限界突破]を持ってるやつを戦ったような気がする。誰だったか? ま、気にならない程度の存在なら構わないか。
話が脱線したが次に行こう。
称号:槍の鬼
詳細:[槍術]をひたすらに磨くことに力を入れてきた存在につく称号。全ステータスに上昇補正。
ふむ、[極・槍術]は自力でとったのだろうか? どちらにせよ修羅やら鬼やら本当に自分を追い込んでいるように感じるぞ。
これは尊敬に値する称号だな。
称号:柔の極み
詳細:力を受け流すことや相手を力を利用した攻撃など、所謂『柔』と呼ぶにふさわしい力を持つ者に与えられる称号。『柔』の性質に必要なAGIとDEXが文字どうり極限まで上がる。
なるほど、これがAGIとDEXのカンストに影響しているのか。まあ、『柔』のイメージは確かに研ぎ澄まされた反射神経と卓越した技量が必要って感じだから、あながち間違いでもないか。
ふ~む、俺は割とステータスで押すタイプだから彼女とは逆のスタイルかもな。
別に技術をおろそかにしているつもりはないが、彼女のように極めるほどかと言われると疑問に感じる。
……そっちをしばらく重点的にしてみるのもありか?
それから戦闘中に突然視界から消えた能力はやっぱり[縮地]の能力か。ま、これは修業期間にいやというほど使ったし、使われたから俺には通用しなかったが、それでもなかなかに強力だった。
「……あの、何か不満があったか?」
「へ?」
なんだ? ……ああ、そういえば結婚してくれって言われたんだったか、ふむ、今はちゃんと落ち着いているな。
「……そうか、私には女性としての魅力はない──」
「いや、待って! そんなことないから! びっくりするくらい綺麗だから!」
「そ、そうか?」
思わず敬語を忘れていってしまった言葉にレイアは頬を朱くする。
うっ、なんかかわいい……
──でも、
「でも、結婚はお断りします」
「なぜだ!?」
「まず第一に、私自身はこの世界を見て回りたいと思っているのです。長い寿命を持つエルフの血が入ってますからね、それくらいのことは若いうちに経験しておきたいと思いまして。今回テフィニア学園の入学試験を受けたのもそのためです」
そういえば、なぜ彼女が入学試験のバトルロワイヤルに参加していたのだろうか? あとで聞いてみよう。
「ですから、今仮にあなたと結婚したとしたら、それは自由に動くことがかなり厳しくなるということです。王族の婚約者なんて、他国に旅に出たらそれこそ外交関係での制限が大変なことになるでしょうし」
「それは……」
「第二に、あまりにも身分が違い過ぎて周りが納得しないでしょう」
「それはだいじょ──」
「大丈夫? 馬鹿言わないでください、この国は王政なんですよ? いくら王が賢くてもその王の周りにいる人物が全員賢いなんてありえない、必ず欲に目がくらんだ愚者は存在します。そんな奴らが納得するはずないでしょう。これもまた私の自由が奪われる理由に繋がりますしね」
「……」
「そして最後に、そもそも俺はあなたのことを何も知らないし、あなたも俺のことを何も知らない。確かに外見は魅力的ですし、戦闘面においても一定の敬意をようするに値する存在です。戦うことによってその力をとてつもない努力でつかみ取った人物だというのは分かりましたからね。しかし、それ以外については何も知らない、あなたも同様でしょう? こんな状態で勢いで結婚してしまっても、決してうまくいくとは思えません」
「私は決して勢いでは──」
「戦って、倒されて、結婚してくれなんて勢い以外の何物でもないでしょう。たとえあなた自身がそうではないと思っていたとしても、相手にそう思われている時点でアウトなんですよ」
「くっ」
「というわけで結婚はお断りです」
「……」
俺の言葉にレイアは悲しそうに黙り込む。その表情は不謹慎だがものすごく愛らしく、何より申し訳なく思って、「うん、いいよ」と言ってしまいたくなる。
はあ、女性にこんな顔されてうろたえない男なんているのだろうか?
時々世の男が悪い女に騙されるなんて言うのがあるのは、女の甘えや悲しむ様子をほっとけないからだろうとこの顔を見ると思う。世の男子よ、気を付けろ。お前も例外ではないはずだ。
……ま、冗談はともかくこれはフォローを入れておくか。
「──というのは建前で、本音のところは別にあるんですよ」
「……どういうことだ?」
「別に自由に世界を回りたいというのは嘘ではないですよ? 俺はそれと同時に目標があるんです」
「目標?」
「別に大層なもんではないです。俺の目標は、ただ、もう二度と大切なものを失わないように、守れるような、あらゆる力が欲しいんです」
「力……」
「ぶっちゃけ権力はものすごく嫌いなんですが、いずれそれも手に入れるつもりです。そういう意味では、打算的なところで言えばあなたと結婚すればそれなりの権力を得ることができて有効でしょう」
「……」
「ですが、何度も言いますがエルフの血が入っている俺の生は長い。だからこそ、今、自由というのを失ってまで手に入れるべきものでもないと俺は思っているんですよ」
「……」
「幻滅しましたか? そうです、俺はあまりにも身勝手ですよ」
そう、ぶっちゃけて言えば俺はびっくりするくらい身勝手で自己中心的だ。
「でも、俺はもうこれ以上大切なものを失いたくない。だからこそ、その人たちのすべてを守り通すほどの力が欲しい」
そう、かつてした失敗を、今度こそしないように。
「すべてを背負って、助けてあげられる力が欲しい」
もしかしたら俺の親友は、もし俺が守り通すことができたら、本来あるべき生で何かができたかもしれない、やりたいことを、やりたいように。
だから、もしこの世界で出来た大切な存在が何かを目指していたら、俺は力になってあげたい。
「たとえ余計なお世話だろうが何だろうが、それが俺の身勝手な欲望なんです。」
「……」
「その欲望を満たすのに、今の力では何も足りない。先にあげた三つの問題だって、もし力があれば解決したことも多々あったでしょう」
「……」
「正直、告白されてうれしかったんですよ。あなたみたいな綺麗な人に告白された経験なんて人生で一度もありません。本当にうれしかったんです」
「……」
「でも、だからこそ、あなたを守り通すだけの力がない俺にはその結婚を受けることはできません。俺の身勝手な欲望を満たすだけの力が俺にはないから」
「……」
「あなたが俺に釣り合わないんじゃない。俺自身があなたに釣り合っていないと思ってしまっているから、たとえあなたがそんなことはないと言おうが俺自身が納得していないから、結婚は受けることができません。……ま、今の俺の欲望を聞いてまだ結婚したいなんて言わないでしょうから、もう帰らせてもらいます。国王様はそちらのお姫様からお話をお聞きください。また、今のが俺の本音ですので、あなたの娘さんと交流を持つことはないですよ、宰相殿」
俺はそれだけ言うと立ち去った。
──というか逃げた。
だって俺だいぶ失礼なこと言ったじゃん! こんな事したら普通に不敬罪で殺されるよ!
やっべ、どうしよ……
◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆
あれから少しして四月に入った。
その後国王たちからは連絡などはなかった。助かったのだろうか?
ま、それはそれとして、俺は無事にテフィニア学園に入学を果たした。
今行われているのは入学式だ。
真新しい学校指定の制服を着た少年少女たちは大半が緊張と、これからの未来に大きな期待を寄せた顔をしている。
──さて、お気づきだろうか?
俺は今、先の感想を述べることが出来るような環境にいる。これは明らかに問題だ。
──何が問題か?
先ほどの俺の感想を見てみよう。
俺は「真新しい学校指定の制服をきた少年少女たちは大半が緊張と、これからの未来に大きな期待を寄せた顔をしている」と言ったのだ。
そう、俺は大半の生徒たちの顔を見ることが出来る場所にいる。
つまり、俺は今、ステージ上にいる。しかも、新入生代表としてだ。
「なんでこんなことに?」という思考はよしてくれ、俺も散々そう思ったから。
ま、今考えればわかることだが、なぜあの場所に第二王女でレイアがいたのかというのがその答えだ。
俺はちらりとステージ横にいるレイア王女を見る。
彼女は今代のテフィニア学園生徒会長だ(先程知ったのだが)。ま、生徒会の選出基準は後で学校の仕組みとして説明するが、それは置いておいて、今注目すべきはそんな生徒会の人間がなぜ入学試験に紛れ込んでいたのかという話だ。
つまり、それもまた試験ということだ。
各試験会場に、生徒会やその他委員会のメンバーが一人ずつ紛れ込んで、外にいる試験官とともに内と外から判断しようというもの。
俺がこの話を聞いたときに、「それって偏見みたいなのは出ないのだろうか? 主にかませ犬的な奴がいたりしたときに」と思ったのだが、委員会に入る人間は必ず実力主義者にするようにされているそうで、戦闘においてそういったことは絶対に出ないのだそうだ。ふむ、物騒だが、だからこそ規律が守られるということか。
ちなみに、委員会委員会と言ってるが、これがまた普通の委員会ではないとだけ今は言っておこう。これもきっとどこかで説明することになるだろうしな。
ええと、どこまで話ったっけ? ……ああ、それでレイア王女がいた理由……は話したから、その後か。
で、俺の会場にレイア王女がいたのと同様に、他の会場でもそう言ったことが行われていたらしい。具体的には少年少女に変身して紛れ込んだ未来の先輩との一騎打ち。
この時点で筆記がよほどひどい点数でない限り入学は確定するらしいのだが、こういうことがあった方が面白いんじゃない? というふざけた意見のせいでいきなりぼっこぼこにされる同級生たちがいたそうだ。
ま、上には上がいるのだよと知るいい機会だろうと思ったのでその点については別に文句はない。
が、俺は正直余計なことしてくれやがってという感情があった。
だって、本来先輩たちにぼっこぼこにされるはずのラストバトルで俺は普通に勝ってしまったんだもん。しかも今回出ている生徒の中で二番目に強い相手にだ。
俺は筆記も満点だったのであっさりと主席になってしまった。
つか、あれで二位かよ。上がもう一人いるとは何というか、恐ろしいことだ。
……人間ランキングでどれくらいの位置に入るかな?
などと考えている間に定型文となる挨拶は終了した。
──そしてここからが問題だ。
なぜかこの後に俺自身の言葉が必要なんだとか。ふざけているとしか言いようがない。
俺はそもそも前世で学校のステージに卒業式と合唱コンクール的なもの以外でたった記憶がない。
そんな俺に対して挨拶だと? ふざけてるのか?
ついこの前レイア王女に求婚されたときもふざけてんのかというくらい阿呆な発言したのに、余計に緊張した状態で俺に何をしゃべらせる気なのか、新手のイジメか!
ああ、本当に何も思い浮かばない。こういう時物語の主人公はどうしてたっけ? 「かかって来い!」とか定番なのかな? もうわけわかんねぇ……
……………………
うん、考えるのやめた。どうせ、この後生徒会長を破った存在みたいな感じで絡まれるのは必至だ。
ここ最近の修業でどうやら俺はこの世界でそれなりに面倒事を抱え込む体質だというのは分かったから、防げる面倒事を今のうちに叩き潰しておこう。
そう思ってできる限り堂々とすることにした。ちなみにここまでに割いた思考時間は約0.0001秒。これはここ二か月で体験した戦闘で身に着けた超高速思考のおかげだが、ま、それはいい。
俺は実に堂々と、それこそ不遜とも取れる態度で話はじめた。
「俺は自由が好きだ。誰かに縛られることのない、自由が好きだ」
俺の突然の言葉に生徒たちが困惑する。
ま、当然か、しかし俺は止まらない。
「俺はこの学園で力を蓄えたら、その後は世界を自由に回りたいと思っている」
若干名馬鹿にしたような顔をしたやつがいたが、ま、放っておこう。
「そのためには、この小さな箱庭で最低限トップになる必要があると思っている」
これはわが父の冒険譚と俺がここまでに経験したことからも当然のことだ。
そして、今の言葉でそれなりの人数が俺をにらみつけてきた。いいねぇ、そういうの俺は好きだよ。
……案外俺ってガキみたいな発想だよな。権力を手に入れたときに苦労しそうだ。
「今の俺の発言で腹がったった者たちの挑戦は喜んで受けてやろう」
うん、実は言ってみたかったんだこれ。
でも、そこで終わらせると非常にめんどくさい事態になるから……
「ま、俺に挑もうとする猛者を俺は気長に待ってるよ」
そう言いながら俺は弱めた[威圧(神)]を発動した。
瞬間、世界が凍った。
といった感じの顔をする奴が果たして何人いただろうか、正直数えるのもめんどくさい人数だ。
が、弱めたとはいえ俺の”威圧”を柳に風と受け流したやつもいる。
これは楽しみだな~と思いながらステージを降りた。
よくよく考えたら、俺、出来るだけ平均的な成績でーとか言ってたのに何でこんな状況になってしまったんだろう。
はあ、なんというか、人生って予想もしない方向に変化していくよね……
入学式早々のため息とともに、第二の人生における俺の学生生活がスタートした。
どうか、今ので面倒事を圧倒的な量減らせますように……