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試験は十重二十重の準備が必要。

うーむ。週一ペースが今のところ限界か。年末、新年はもう少し投稿したい。

「おお、流石は倍率100倍の超人気校と言ったところか、物凄い人数だ」


 冒険者になるためにテフィニア学園入学を目標として家族に宣言してから少しの時間がたった。具体的には、能力の覚醒が新年早々で、入学試験が三月の頭だから二か月ほどだろうか。


 その間、家族に魔法や武術の扱い方につてい教わったり、自分でいろいろ研鑽したり、冒険者から騎士になった父さんとそのパーティーメンバーたるお母様方三人衆とともにダンジョンに何度かもぐったりしたのだが、あまりにも普通だったのでそこら辺の事情は省くとしよう。……いや、俺一人でやった修行はそこまで普通ではなかったが、冒険者とは手の内を見せないものだ、修行シーンはここでは省くとしよう。


 今はそれよりも、目の前に集中すべきことがある。


 テフィニア学園の入学試験は、筆記と実技試験がある。異世界転生の学園ものでは定番の試験だな。

 これら二つを行い、好成績を収めた上位2000人が入学を認められる。……これで倍率100倍なのだから、受けている人数は2000000人なのだ、すごい人気だというのが分かる。


 もちろんこの人数をいっぺんに試験するのは無理なので、入学試験は10日間に分けて行われているそうだ。

 これだと初日にスパイらしき人物が割り込んで問題をかっさらうなんて言う不正が起きそうなのだが、そこはファンタジー世界、なんと筆記試験が終わったらテスト問題の記憶が消えて、尚且つテストの問題用紙もその場で燃えて塵となるそうだ。前世の科学な世界のセキュリティーとはまた違った感じで面白い。


 さて、今の俺だがもちろん一人でここにいる。

 ……修行に明け暮れたせいで誰かと交流するというのがなかったからな。他に騎士爵を与えられている人もいるにはいてほんの少し話をしたが、それだけの関係だ。

 そもそも友達ってどうやったらそうなるんだ? ちょっと話をしただけで友達だみたいなのは図々しいと思うし、かといってどれくらい会話しても「この人無理だわ~」というのもあるから判断しずらいし……


「それでは受験者の皆さん、中に入ってください!」


 ……友達とは何ぞや? という哲学的な(ただの非リアでコミュ障なものの言い訳とも言う)思考をしていると、試験官さんが試験会場を開いて声をかけた。

 そこまで声を大きくしているというわけでもなさそうなのによく響くのは、[風属性魔法]で声を風に乗せているからだろう。自然とそれができているあの試験官さんはなかなかの実力者だ。


「──さて、どんな試験になることやら」


 俺はそんな風に独り言ちて試験会場に入った。


 試験は先にも説明したが筆記試験と実技試験の二種類存在し、午前中が筆記試験で午後から実技試験だ。

 この二つについては特にどちらを重視するということはない。もし実技と筆記の点数の比率を表したら1:1だし、100点で評価するなら筆記50の実技50と言った感じである。


 というわけで午前中の筆記試験。


 俺はまず真面目にテストを解いた。

 ──で、その後に[知恵の書]で問題の解き直しを実行。


 カンニングだって? 違うな、某世界的忍マンガでもいかに自分の能力でカンニングするかが重要だと言っていたじゃないか。……まあ、あれは結局最終問題をクリアするだけで合格だったわけだが……

 ともかく、俺は確実にここに受かりたいのだから誰が何と言おうと構わない。

 それに、安全にカンニングできるなら誰だってするだろう? そう思った奴ら、お前たちも同罪だ。


 というか、割とマジでこの筆記試験は満点を取らないとまずいのだ。手段なんて選んでいられない。


 そんなこんなで、カンニングに関する言い訳を繰り返しているうちに午前の筆記試験が終了。


 この後の日程は昼休憩を挟んで実技試験だ。この実技試験が非常に厄介なのである。

 実技試験は減点方式を取っており、満点から生徒の動きや何やらを客観視して判断して何かがまずければ減点するらしい。


 さっき、筆記満点を取らないといけないといった理由はここにある。

 だって10歳の若造がうまく戦闘をするなんて普通は不可能だろう。この実技試験はたいていが半分くらいは減点されると言われているのである。

 それで、実技試験はかなり難易度が高いから、筆記で稼ごうという人物が多くなるので当然平均点が上昇し、今では満点が合格者のノルマになってしまっているのだ。


 ま、今はとにかく飯だ。

 俺はリーフィア母さんが作ってくれたお弁当を頬張りながら、午後の試験に向けて精神集中をはかる。

 あれだ、真面目にやれば落ちることはないと思うのだが、やり過ぎてしまう可能性があるのが否定できない。なんせ俺のステータスは『(測定不能)』だしな。


 うーむ、どれくらいまでやっていいのやら……


「おい、ハル!」


 ……とりあえず魔法は[風属性魔法]と[水属性魔法]だけでいいだろ?


「お~い、ハルく~ん!」


 ……あとは、近接戦になったときだが、[剣術]はまあ使うとして──


「おいこら!」

「……なんだ?」

「え? マジで聞こえてなかったのか?」

「いや、聞こえてたけど?」

「喧嘩売ってんのかコラァ!」


 俺に激高してくるのはこげ茶の髪にこげ茶の瞳、顔立ちは普通よりもややカッコイイと言ったどこにでもいそうな少年──シリウス・ドレイクくんだ。特徴は名前だけやたら中二っぽいこと。あとは、どこか大人びた雰囲気を感じるところだな。……なんだろう、すごく主人公っぽい。

 ちなみに彼と面識がある理由は彼の苗字であるドレイク家も我がクライス家同様騎士爵であるから、そのお付き合いだ。


「で? 何か用なのか?」

「いや、お前がぼっ──」

「ぼっ?」

「……いや、一人でいたから話しかけたんだよ。ありがたいだろう?」

「ふーん」

「いや、『ふーん』ってなんだよ」

「ふーん」

「……おい」

「ふーん」

「聞いてんのか?」

「ふーん」

「喧嘩売ってるんだな? そうなんだろ?」


 俺の適当極まる返答にシリウスくんがまたしても青筋を浮かべる。

 ……この発言の仕方はなんとなく前世を思い出すな。

 それにこのシリウスくん、そうは言いながらも直接手を挙げようということはない。非常に冷静な子だ、称賛に値する。

 これで、もし転生者だったりしたら物語は面白いのだろうが、現実はそういうことにはならないだろう。 ……あれ? これはフラグか?


 なんだか嫌な予感がした俺はシリウスくんをからかいながら適当にあしらいその場を離れる。「ふーん」を連呼していた時にはすでにお弁当はほとんど食べ終わっていたのだ。

 ……俺に離れられてシリウスくんが少し残念そうだったのには申し訳ないが、今の俺は本気で精神集中したいのだ。……主にやり過ぎない方向で集中しなければいけないのだが、どちらにせよ集中しなければいけないことには変わりない。


 そうして実技試験が始まったわけだが……


 ──そこで俺は後悔することになった。


◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆


 やってきた実技試験。

 実技試験はその年によって若干制度が違うらしい。

 例えば前年は入学者たちのトーナメント形式だったそうだ。このトーナメントでマオ姉様は優勝したとのこと。

 ま、あのチート能力で優勝しないほうがおかしいわな。俺でもかなり危ないぞあれは。


 非常識な姉(俺のことは棚に上げているが)は置いておくとして、今年の試験はなんでかよくわからないがバトルロワイヤルだ。

 大体10人程度の人数が同時に学園にある決闘場に入り、そこで複数戦闘をするというもの。

 ルールとしては円形のステージである決闘場から落ちたり、気絶など戦闘不能になったらアウトと言ったシンプルなものだ。

 ……まさか、人数が多すぎていっぺんにやった方が楽じゃん、みたいな思考になったりしたわけじゃないよな?


 最近なんだか嫌な予感がすることが多いなぁなどと思いながら順番待ちをすることしばらくして、ようやっと俺の順番が回ってきた。


 はてさて対戦相手は誰なのやら。俺は参加者を確認する。

 試験官も一人いるようである。あ、あの声を風で届ける魔法を使っていた人だ。っとまずは参加者だ。

 ──人数は11人で、そのメンツは……


「げっ!」


俺は思わず声を出してしまった。

何せそこにいたのは──


「よう! 元気にしていたかこのペテン野郎!」

「……えっと、誰だっけ?」

「マルクァ・マセイヌだ! あれだけのことをぼくちんにしておいて忘れたとか舐めているのか!」

「マルクァ? マセイヌ? ……ああ! そうだったそうだった! やっと思い出した! あの時の!」

「お前ほんとに忘れてたのか!」


 もちろん覚えている。……名前は忘れてたが存在は印象に残っていたので覚えている。主にかませ犬としての印象だが。覚えているには覚えている。

 さて、久しぶりに対面したかませ犬ことマルクァくん。なんだか少し痩せただろうか? 豚が子豚になった感じだ。……あんま変わらないな。

そんなマルクァくんは俺の対応が気に食わなかったのか激昂するも、その後いやらしい笑みを浮かべて言い放つ。


「今日はペテンなんてできないからな! 真っ先にお前を倒してやる!」


 ……なんだか、本当にかませ犬だよなぁ。


 ここまで役に徹することが出来ると言うのは称賛に値するよ。


 ま、それはともかく彼がここ最近でどれくらい強くなったのか見て見ないとな。

 俺は[神眼]を使った。


―――――――――――――――――――――――

マルクァ・マセイヌ

《種族》ヒューム

《性別》男

《年齢》10歳

《職業》ピラミッド王国マセイヌ侯爵家長男

《レベル》000

《能力》

HP 01000

MP 01000

STR 0015

VIT 0015

AGI 0010

DEX 0010

INT 0010

LUK 0010

《技能》

[剣術][火属性魔法][魔法剣][限界突破][成長速度5倍]

《ボーナスポイント》000

《称号》魔法剣士

―――――――――――――――――――――――


 ……………………。


 俺はマルクァ君に尋ねた。


「ねえ、君はここ二か月何をやっていたの?」

「ん? なんだ? ぼくちんの優雅な生活に興味があるのか?」

「うん」

「そうかそうか! ここ二か月はそうだな……まず食材を野菜メインにしたおいしい料理が毎日出てだな」

「あ、いや、もうすぐ試験が始まりそうだから後でお話を聞かせてもらうことにします」

「あ! おい!」


 ……言葉もない。


 他のやつらは最低でもレベルを10は上げているのに、それがないなんて。

 大体、努力すれば強くなれる可能性を彼は持っているのにそれすらしないなんてあほなのか?

 はあ、これは予想以上に早く試験が終わりそうだな。


 ──と思っていた時がありました。


 今俺は、五人の受験者に囲まれ決闘場のステージのふちにいる。

 いわゆる追い詰めれれているという状況だ。


 なぜこんな状況になっているのかは説明するまでもなくマルクァ君のせいだ。

 具体的には買収と言ったやつだろうか? 試験が開始したと同時にこの状況になった。

 権力と金は使いようというが彼はそれをよく分かっているようだ。

 ……はたしてそれで合格できるのかどうかは分からないが。


「なんで端にいたかわからないが、すまないな侯爵家には逆らえないんだ」


 俺がマルクァ君の行動に称賛するやらあきれるやらしていると、受験者の一人が話しかけてきた。

 ふむ、余裕の笑みというやつだろうか?


「……いいから、早くかかって来いよ」

「強がりか?」


 俺の言葉に他の買収されたやつも含めて笑う。

 いや、本当に時間の無駄だから言ったのだが、ま、この状態なら負けないと思うのは普通なのかな。


 そうして、ようやくマルクァ君以外の四人が向かってくる。四人が持っているのは左から順に両手剣、長槍、片手剣と盾、短剣だ。これらの武器は受験者に配られるもので、ちゃんと刃はあるが、特に危ないものがない普通の武器だ。

 ちなみに俺は片手剣と短剣の二刀流。

 ケガするじゃんと思った方はご安心を。

 この決闘場はステージ上で受けたけがなどはステージから出たら直るらしい。どういう原理なんだろうか?

 あと、ステージの外も思いっきりぶつかっても怪我しない設計になっているらしい。ファンタジーはご都合主義にあふれているなー。


 ま、今はそんなことはどうでもいい。戦闘に集中しなければ。


 現在は四人の受験生が俺に向かってきている。

 普通に考えたら四人同時に襲われるのはかなりまずい状況なのだろうが、俺にとってみればこの状況は大した問題ではない。

 ついでに言えば俺が決闘場のステージの端にいたのは、その方が戦いやすいからだ。


 そしてそれはすぐに実証された。


 まず向かってきたのはサイドの二人、両手剣と短剣のやつだな。

 射程の長い両手剣のやつの攻撃が先に届く。俺はそれを左の短剣で受け流し、次に向かってきていた短剣

を持った人物とぶつける。と同時に右手にある片手剣を背中にある鞘に戻す。


「うあっ」

「わあぁ」


 二人が悲鳴を上げた瞬間に右手から[風属性魔法]の風の爆弾のような魔法である《ウインドショット》をかなり手加減したものを当てて場外に落とす。

 さらに正面から来た槍使いは短剣を閃かせ槍を下に叩き落す。

 そして、その行為と同時に片手剣を鞘から抜いて、体勢を崩した槍使いの体に隠れるようにして、盾持ちの片手剣使いの視線から外れて背後に回って、盾持ちの受験者を剣の腹で殴り、最後にまたしても《ウインドショット》をお見舞いして場外に落とす。


 ──あと一人、最後はマルクァ君。


 四人をさばいてずっと後方にいたマルクァ君を見てみると、火の球体が出来上がっていた。


「くそっ! あの役立たずどもめ! しかし、これで終わりだ! ──《ファイアボール》!」


 前回とは違い、今回は四人が攻めてきている間に魔法を用意していたようだ。火球が向かってくる。

 ほんの少しだけ賢くなった? いや、そんなことはないか。これで勝てると思っている時点でアウトだろう。


 さて、今回は真っ当な方法で倒すとするか。


 俺はそう思い左手の短剣をしまい、そのまま左手を火球に向けて、あえて魔法名をつぶやいた。


「──《ウインドボール》」


 左手から風の球体が飛び出す。

 ……本来であれば風は火と相性が悪いのだが、今回はあえてこれを選択した。


 マルクァ君は俺の魔法を見て勝ったと思っているようだが、その次の瞬間にはその顔が驚愕に染まる。

 風魔法と火魔法が衝突すると、その二つが混ざり合ってより大きな炎の球体となりマルクァ君に向かって行ったのだ。


 これは混合魔法と呼ばれるものの応用である。

 混合魔法とはその名の通り複数の属性魔法をうまく混ぜ合わせることによってより強力な魔法にすることの総称で、これができる人はなかなかいないらしい。


 今回はマルクァ君の《ファイアボール》と同じ魔力量の《ウインドボール》をマルクァ君の魔法よりも速いスピードで放ったことで、二つの魔法がうまく混ざり合ったあと、その炎の球がマルクァ君に向かって行ったという形だ。二つの物体が真正面から衝突したとき、速い動きをする物体の方が遅い物体を弾き飛ばすというのと同じ原理が魔法にも適用しているらしい。ファンタジーの代表ともいえる魔法だが、その魔法にも物理法則っぽいものもあるというのを知ったときにはなんだか不思議な感覚だった。


 何はともあれ、これによってマルクァ君に向かって炎の球体が飛んでいるのだが、あほなのかよけようとしない。このままだと燃えてしまうぞ?


 ……仕方ない。


 左手から今度は小さな水の弾丸を発射する。魔法名は《ウォーターバレット》。

 《ウォーターバレット》はマルクァ君に火球が当たる前にそのど真ん中を撃ち抜いて、爆発した。


「ぐああ!」


 爆発によって子豚ちゃんがコロコロ転がり場外に落ちる。

 今のはいわゆる水蒸気爆発というやつだ。水が高温の物質に当たり、水蒸気になることでその体積を一気に大きく膨らませることから起こるらしいが、魔法でやるとなかなかの威力である。俺の方にも軽く爆風が飛んできたからな。


 何はともあれこれで半分倒したわけだが残りは何人だ?


「やあ、最後の相手は君みたいだね」


 と、思ったら誰かが話しかけてきた。他はもうすでにいないようだ。


 ふむ、ラストバトルか。


◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆


 俺に話しかけてきたのは、シリウスくんと似たような、それこそどこにでもいるような少年だった。

 そのたたずまいは他の受験生たちと違う、強者のそれだ。武器はないからおそらく徒手空拳での戦闘だろう。

 この二か月でそれくらいの判断はできるようになっている。これなら俺が五人をさばく間に他の四人を倒してしまったのもうなずける。


 ……これは、武器は使わないほうがいいな。


 ここ二か月で経験した怒涛の戦闘により培われた直感に従って武器を投げ捨てると、それを不思議そうな表情で少年が見る。


「……武器を使わないのかい?」

「その方がいいと判断した」

「……そうか」


 お互いに特に構えといったものは取らないが、それでも緊張感が高まる。


 そして、互いがもうすぐ動こうとするタイミングで、少年の方が「そういえば」と言った。


「僕はこの入学試験の関係者の知り合いなんだが」

「ん?」

「今回のバトルロワイヤルに関して、せめて最後まで勝ち残れるくらいの実力が欲しいって言ってたんだよね」

「……つまり、ここで勝てるか勝てないかで合格不合格が決まるということか?」

「そういうこと」


 そうか、それはなんだか熱き少年バトルマンガみたいで面白いな。


「君はここで笑うのか……」

「ん? 表情に出てたか……ま、御託は言いから始めよう」

「そうだね」


 その言葉とともに少年が向かってきた。すごいスピードだ。他の受験生などと比べることすらおこがましい。


「君は魔法が使えるようだけど、発動させる暇も与えなければいい話だ!」


 そんな言葉とともに少年は拳を放ってくる。しかもそこまで力を込めたわけでもない、牽制のいわゆる右ジャブと言ったところか、ただし恐ろしく速い。

 が、ジャブというのは速さを極めたパンチのため威力は低い。

 それでも、普通の人間が食らえばアウトだろうが俺はこれを左手で受けてめてカウンター。


 しかし、少年は首をひねるだけでかわして、カウンターにカウンターを合わせてくる。

 俺はこれを先ほど少年がやったことと同じく首だけでかわす。同時に左手でカウンターのカウンターにカウンターを放つ。

 しかしこれも躱されてしまった。


 ここからは互いにカウンターの応酬となった。

 互いのパンチを躱し、あるいはいなしてそのタイミングでパンチを叩き込む。

 そして、そのパンチのスピードがどんどん速くなってくる。


 ……やばい、これなんかリアルドラゴン○ールみたいな感じだ。


 俺は変なところでテンションが上がりどんどん拳を出すペースを上げる。

 するとそれに少年も合わせるかのように追いついてくる。

 これは、どこまで行けるんだろうか……


 ──と思ったところで俺の拳が若干だがまともに相手の体をとらえた。


「ぐうっ!」


 かなりの速度と威力で放たれた拳に少年は吹き飛ばされる。しかし、そこは強者か、場外に出される前に衝撃を受け流したようだ。うーむ、やはり強い。俺が戦った中で、人間というカテゴリーにおいて四桁くらいの順位は与えてもよさそうだ。おそらく9783位くらいか。人間というカテゴリーから外すとなると六桁を超えちゃうが、強いことは強い。

 ……というか彼、多分徒手空拳がメインじゃないな。彼の間合いはもう少し遠くにある気がする。


 ま、勝負は非情だ。なぜ、彼が自分の獲物を使っていないかわからないが、俺が勝つ。

 さて、彼を吹き飛ばすくらいの威力で、尚且つステージ上で受け流しきれないほどの威力となると……


 などと考えていたら、少年が突っ込んできた。

 またしても普通の突貫? と思ったが違った。俺の視界から突如として消えたのだ。

 そして、背後に気配がしたと思ったら俺は殴られ──


「なっ!!」


 ──てはいなかった。

 俺は後ろを振り向くことなく右拳を受けてめている。


 ふむ、殴って飛ばそうとか考えていたが別にそんなことをしなくてもいいのか。


 そう思い俺は少年の拳をがっちりつかんだ俺はそのままさらに手首を握ってぶんぶん振り回す。少年が左拳を出してくるがそれも逆につかんでしまい、ハンマー投げのようにぐるぐる回転、勢いがついたところで投げ飛ばしてやった。


「うわああああ!」


 少年が放物線を描いて飛んでいく。さすがに空中では勢いを受け流すことはできまい。

 ……と思ったが、以前それで痛い目を見たことを思い出して、すぐに《ウインドショット》を連続発動して即座に場外に吹き飛ばした。威力は抑えているから衝撃で吹き飛ぶだけだ。


 そのままヒュ~~と少年は飛んでいく。さすがに飛ばし過ぎたか。

 もう少年は場外に出ているし、試験官があんぐり口を開けているが俺の勝ちでいいだろうと判断。

 落ちていく少年を少し飛んでお姫様抱っこし、[風属性魔法]をうまく利用してふわりと地面に着地した。

 その様子を少年は心底驚いた顔で見ていたが、すぐにまじめな表情になると、


「……私の負けだ」


 ポツリとそう言った。……ん? 今私って言ったか?


「ところで、少年。君は許嫁などはいるのだろうか?」


 俺が変な違和感を覚えていると、少年は頬を赤く染めながらぼそぼそと話し始める。

 少年? お前も少年だろ? ……いや、俺もさっきから少年って心の中で言ってたけどさ、あれはほら俺は一応転生者だし。


「どうだろうか?」

「え? ああ、いや別にそんな相手はいないけど」

「そうか! じゃあ、私と結婚してくれ!」


 ………………?

 ハルの修業パートはその時々、ハルの力の一部がちょっとずつ出てきたときにでも出そうかと思います。

 ……本当はクリスマス番外とかやってみたかったけど、話が進んでないしヒロインも出てきてはいるほとんど話をしていないしで今回は諦めかな、残念だ。

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