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4/6

将来は自由な冒険者になりたい。

「勝者、ハル・クライス!」


 ふう、上手くいったな。


 俺の作戦は現在の結果の通り、相手に接近させないまま《ウォーターボール》で顔を覆って溺れさせるというもの。あれだな、NAR○TOの再不○の水牢の術みたいな発想だ。本当は全身を包み込むことができるけど、今の俺はただのちょっと小賢しい少年で通すつもりだからやらなかった。

 今回の攻撃は行きすぎれば普通に溺死するが、ま、今回は気絶した瞬間に《ウォーターボール》を解いたから多分大丈夫だろう。


 さて、なんだか宰相殿がこちらに熱視線を送っているような気がするからとっとと退避しよう。


「失れ──「お父様! やりました! 勝ちましたよ!」い……」


 宰相殿が話しかけて来たが、無邪気な子供のスルースキルで華麗に回避。俺は父のところに向かい、そのまま無邪気にダイブ! そして、ニコッと笑顔で話しかける。


「さあ、お父様帰りましょう! お母様に僕の能力を教えてあげたいのです![水系統魔法]と[風系統魔法]は確実にお母様の血が受け継いでいると思うのです! すごくうれしいので早く帰りましょう!」

「え、あ、いや……」


 お父様が宰相殿に話しかけられているのに気がついているため戸惑っておられる。

 ついでに俺のことをまじまじと見つめているのは、俺のどこか雰囲気が変わったからだろうか。俺自身は、十歳までのハルと前世の冷静さがうまく混じった程度のことなのだが……っとそんなことより早く家に帰りたい。俺の母に俺の能力について伝えたいという感情はあるんだよな。……これは俺自身が選んだ能力のはずだが、やっぱり十歳までのこの世界で生活した記憶のせいだろうか、これは母から譲り受けたものだとも感じているので不思議だ。

 ま、今はそれよりもこの面倒な場所を早く脱したいという感情がより強く出ているのだが。


 などと考えていると、やっぱり宰相殿にお父様が捕まってしまった。


「いいだろうか、ナツキ・クライス騎士爵」

「は、はい! 何でしょうか?」

「ちょっと、ご子息殿とお話がしたいのだ」

「はい、分かりました」

「そうか、すまないな」


 ……父さん権力に弱いな。あんなにガチガチにならなくてもいいだろうに。

 我が父を呆れた目で見ていると、その父に許可を得たサワシロ宰相が話しかけてきた。


「失礼、君はハル・クライスでいいのだよね?」

「……はい、私はクライス騎士爵家六男のハル・クライスと申します」

「……礼儀正しいな君は。ところで、あの《ウインドバレット》と《ウォーターボール》の使い方は自分で考えたのかい」

「……ええ、まあ、はい。何かおかしかったですか?」

「いや、まあ、私もそれなりの魔法使いなのだがね、ああやって人体の弱点を的確に攻撃すると言うのはなかなか見たことがないから。どうしてあの考えが浮かんだのか知りたくてね」


 ……まあ、普通の考えじゃないよな。

 十歳までのハル君の記憶では、この世界の魔法はまさにシューティングゲームのような扱いだ。強い一撃を相手に与えることで敵を倒す。

 もちろん不意打ちのような技やトリッキーな技がないわけではないが、少なくとも相手を呼吸困難にすることや、魔法で溺死させようとすることはほとんどないだろう。そういう意味では、この宰相はいいところをついていると言えるので、本当に賢いのだとわかる。


 さて、どう言い訳したもんか……


「…………普通では勝てないというのは分かっていましたから、お父様がよくうちのお母様に怒られたときにやられている水攻めと言うのを思い出して、それを実行しただけですよ」

「え!? なんでそのことを知って──」

「そ、そうですか………………では、そもそも《ウインドバレット》や《ウォーターボール》を無詠唱で扱えるのかな?」


 あー、それもか。うーんこれは困ったぞ。

 実は俺のステータス、ただ今絶賛成長中なのだ。具体的には技能の方が。

 例えば魔法はすでに全ての技能を習得したし、多重詠唱なんかも獲得している。他にも現在進行形で???ポイント、すなわち無限にあるボーナスポイントで武術や生産職なんかの技能を獲得しているし、その技能の熟練度も絶賛上昇中。

 だから、今の俺は大抵のことを軽くこなせるのだが、どこか技能に動かされている感じもあるのだ。

 一応[心身即時理解]という技能を得ることによって、体や頭が覚えたことを即座に理解してそれを自分の意志である程度使えるようにはなるが、それでもやはり何度もその技を使うことには及ばないわけで、どうしても、自分の力だが、どこか違うと感じてしまう。


 例えば最初に放った《ウインドバレット》も特に意識せずに放つことができたし、人の口の中に入れるなんていう離れ業も[自動照準][狙撃精度上昇]という魔法や弓、投擲などでの狙撃の精度が考えなくても使えてしまうわけだ。《ウォーターボール》も[魔力操作]の技能のお陰で頭にピンポイントで水を作り出すということができたわけだしな。


 と、いうわけだから「なぜ出来るのか?」と聞かれたら、俺の能力を明かさない限りは「出来てしまうから」としか答えられないのだ。


「……そうですね、私の母が魔法を扱える人で、それを見ていたからだと思います」


ちなみに、ボーナスポイントはどうやら頭の中で念じるだけでも消費できるらしく、俺は現在[並列思考]の技能で、ポイントを様々な技能に割り振っている段階である。


「ふむ、そうか……」


 俺が取り敢えず一番無難かなと思う回答をすると、宰相殿は考え込んでしまった。

 ……今の発言、どこか怪しかっただろうか。

 ごまかせたかどうかで内心緊張している俺に対して宰相が考えがまとまったのか口を開く。


「……ハル君、うちの娘のことはどう思う?」

「へ? どう、とは?」

「可愛いと思わんかね?」


 ……何言ってるんだこのおっさん。


「ああ、突然すまないね。君はどうやら非常に賢いようだから、うちの娘とちょっと仲良くしてくれたらいいなぁと思ったんだ」

「は、はあ」


 これはあれか? フラグだろうか? まさかの俺に女の子とのイチャイチャというフラグが立ってしまったのか?


「うちの娘はどうやら魔法に関しての才能がありそうでね」

「そうなんですか」


 ま、これは[神眼]の効果で知ってはいるが。


「ああ、うちの娘は天才なのだ!」


 サワシロ宰相は俺の返答に対してすごく力を入れて詰め寄ってくる。……そういやこのおっさん称号に娘大好き親バカとか書いてたな、やべ、地雷を踏んだか。


「は、はあ……」

「おっとすまない。私は娘のことになると暴走しがちなのだ気にしないでくれ、娘が愛くるしいのが悪いのだ、いや娘は悪くない。あんなにも可愛らしい娘を作り出してしまった神が罪深い、いや素晴らしき方なのだ」

「は、はあ……」

「それでだな、娘は天才で、私が直々に魔法を教えてあげようと思っているのだが、それだけでは足りないと思っているのだ」

「は、はあ……」

「……ちゃんと聞いているのか?」

「え? あ、はい聞いていますよ」


 聞いてはいる。返事がメンドくさくて同じ回答をしていただけだ。……うん、ちゃんと聞いていたぞ、うん。


「そうか、ならいいが……。それでだな、出来れば才能のある同い年の子と切磋琢磨して欲しいのだ。それも、出来るだけたくさんの才能ある子たちとともにだ。私は、今の君が持つ広い視野を持った才能がうちの娘に良い影響をもたらしてくれると思ってな」

「は、はあ……」

「本当にちゃんと「聞いてますよ」…………そうか。それで君はこの事についてどう思う?」

「は、はあ、どうと言われても……」


 本当に「どうかな」と言われてもな。

 俺みたいな前世で中学2年までしかまともに学習して来なくて、さらにこの世界で子供として10年過ごして来たやつに娘の教育について話されても分からんわ。

 つーか、本音を言えば断りたい。だって今は自分自身の能力をきっちり扱えるようになりたいし、そもそもとして俺は出来ればしばらくは権力のないところで自由にやりたいのだ。

 今、そういう相手と繋がるのはメリットもあるだろうが、自身の自由がかなり制限される気がしてならない。


「ハル、いいんじゃないか?」

「お父様……」

「俺も昔は沢山の人達から学び、たくさんのライバルたちと切磋琢磨して強くなったんだ。お前はどうやら相当に賢そうだから、才能のあるやつと今のうちから交流を持っておくのはいいことだと思うぞ」


 俺の父がそれなりにいいこと言っている。

 一見、本当に理解ある父みたいな感じがするが、俺は知っている。自分の息子の中で誰か権力者と繋がって俺を楽させてくれるやついないかぁとか言ってたことをちゃんと知っているのだぞ親父。どうせなし崩し的に仲良くなってくっついてしまえとか考えているんだろう?

 ちなみにこの阿呆な父親がその考えを言ったときにはうちのお母様方から攻められていた。もちろん母は水攻めだ。


 まあ、親父のそんな無粋な考えを抜きにすれば、確かに切磋琢磨するというのは悪くないとは思うのだが……


「……そもそも、宰相様のお考えはその私と同い年の御令嬢様にお話しされたのですか?勝手に決められるというのは、たとえ貴族社会といえど今の段階で強要すべきことではないかと思うのですが」


 そう、そもそも相手が俺と仲良くしたいと思ってくれるかが重要だったりするのだ。俺なんて年齢=ほぼ友達いない歴だったからな。対人にはあまり自信がないら。まして、自分と仲良くなることを望んで無い人間との会話なんて俺には不可能だ。……なんか自分で言ってて悲しくなってくるが、事実は事実なので仕方ない。


「む、そうだな。ちょっと娘を呼んでこよう」


 俺の心の声をうまく隠した言い訳を聞いたサワシロ宰相は一つ頷くと国王と一緒にいる自分の娘さんのところに行く。


 ……どうか断ってくれアヤセさん。なんか、最低だな俺……


「納得いくかぁ!!!」


 俺がコミュ障であるために10歳の娘さんに決断を迫るという愚行を犯し、あまつさえ断ってほしいなどと思ってしまったことに若干の自己嫌悪に陥っていると、何処かの誰かが突然叫んだ。


 叫んだ方を見てみると、そこにはゴテゴテした服を着たいかにもアホ貴族といった風貌の男と、その腕の中に眠っているらしい少年が一人。誰だこいつら?


「む、マセイヌ侯爵殿、何が納得いかないのかな?」


 サワシロ宰相さんが厳しい表情でマセイヌ侯爵とやら……ああ、俺に決闘を挑んできたやつか、忘れてたな……を見る。

 すると、マセイヌ侯爵が一瞬たじろぐが、それでも俺の方を指さして叫んだ。


「あのものが不正をしたのです! でなけらば我が息子が負けるはずがありません!」

「不正? 一体どんな不正をしたというのです?」

「そ、それは……とにかく卑怯な手で私の息子を殺しかけたのは事実のはずです! こんなもので勝敗を込めるのはおかしいと思います!」


 ……はあ、何というか、こういうやつを見ると本当に腹が立つんだよなぁ。


「マセイヌ侯爵、それは「ふざけんなよアホ貴族が」──え?」

「な、貴様ぁ! 不敬だぞ!」

「あ゛? だからどうしたってんだよ? お前は何か勘違いしているようだから言っとくぞ。むしろこの世の中で正々堂々と戦うなんて言うのが起こり得ること自体がまれなんだよ。だいたいてめえも俺よりも能力の高いやつをぶつけてきてるだろうが。それのどこが卑怯じゃないんだよ?」

「う、うぐっ」

「だいたいな? 俺たち貴族に入ってくるお金を作っている平民は、これくらいの。ちょっと頭を使った行動をしていかないと生活をしていくのが大変な奴だっているんだよ。それにこの国の財源の一つであるダンジョンに潜る冒険者たちは正々堂々戦うことなんてほとんどないだろう? お前のその発言はこの国のあらゆるものを否定することにつながるんだぞ? いや、もしかすると世界そのものかもな」


 ……まあさすがに言い過ぎだろうが、それでも世界なんてのは卑怯な行為をいかにうまくやるかで回っている部分があるのも事実だろう。

 前世でも正々堂々やるやつよりも明らかに卑怯な行為でうまくいっている奴の方が多いだろうしな。ま、これは俺の偏見が多分に入っているので本当にそうかはわからんけど。


 さて、言いたいことは言ったわけだが、そのせいで不敬罪なんて言われたらたまったもんじゃないからな、止めを刺そう。


「ああ、それとよくわからないんだけど本来の決闘って互いに何かを要求して、勝者の要求がのまれるってものだよな? で、今回は特に何も要求を指定してなかったわけだ。──つまり、今の俺はお前たちに何でも要求できるってことでいいんだよな?」

「な!」

「……まさか、(まつりごと)に携わることで国民の血税から給料を得ている人間が、敗北したときのことを考えていなかった。なんてことはないよね? それは流石にまずいと思うんだけど」

「ぐ、ぐぬぬ」

「ま、今回は俺が言いたいことを言わせてもらったし、それを要求として手を打つけど。それによって、ここにいる大勢の人間に、騎士爵の六男から手心を加えられたと認識されるわけだから、そこらへんはちゃんと考えて行動した方がいいよ? これで我が家に暗殺者が入ったら問答無用であなた方が犯人確定になるだろうしね」


 多分これでいいはずだ。そもそもここには国王と宰相なんていう国のトップ2がそろっているのだから、よほどの馬鹿じゃない限りは大丈夫だろう。


「さ、帰りましょうかお父様」

「え、あ、おう」


 俺の父親がすごく戸惑っている。ま、当然か、家を出たときと比べてあまりにも変化しているからな。戸惑はないわけがないだろう。

 はあ、言いたいことを言って満足したはいいが、これからいろいろと大変だな……


 その後、俺とお父様は馬車に乗って家に帰った。


 ……何かを忘れている気がするのだが……ま、いいか。


◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆◇◇◆


「ただ今帰りました~」

「おかえりなさい」


 俺が家に着くと、そこには金髪に俺と同じ緑色の目をした綺麗な女性がいた。もちろん、わが母であるエルフのリーフィアだ。


「少し遅かったように感じたのだけど、何かあったの?」


 リーフィア母様が心配そうな表情で俺を見る。

 まあ、それも仕方のないことかもしれない。何せ、リーフィア母さんにとって俺が初めての本当に血を分けた子供なのだから。


 ここでわがクライス家の家族構成を少々説明しておこう。

 まず俺の父であるナツキ・クライスにはナナ、ウエンディ、リーフィア母様の三人の奥さんがいて、ナナお母様との間に長男、次男、と双子の三男と次女がいて、ウエンディお母様との間に長女と四男、五男に三女の三つ子と、末っ子の四女がおり、リーフィア母さんの血を分けた子供は六男の俺一人。

 生まれてきた順に並べると長男(17歳)、長女(17歳)、次男(15歳)、三男と次女(13歳)、四男と五男と三女(11歳)、俺(10歳)、末っ子の四女(8歳)と言った感じか。


 他の人数がやたら多いことについては……まあ、ヤルことヤッた結果だと思ってくれればいい。

 かといってうちの母さんとそういうことをしていないのかと言えばそういうことでもなく、これは単純にエルフの血が入っているものは子供ができにくいという種族的な性質ゆえだ。

 他の人も双子とか三つ子とか、いっぺんに生まれてきたこともあるから、子供の人数が一概にやった回数につながるわけではないので勘違いするなよ。


 ……なんで、俺はこんなことを考えているのだろうか……あれだ、うちの母が愛されていないわけではないと伝えたかったからだな。ちゃんと母さんは愛されているのだ。

 ……もう父親も40近くになっているのに未だに元気みたいだからな。まったくうらやまけしからん。


 リーフィア母さま他、現在俺たちの家に住んでいる家族にわが父が概要を説明した後、俺は他の家族たちから褒められたりしていた。特に母さんは俺が[風系統魔法]と[水系統魔法]を使えることを喜んでくれていた。ステータスはまだ見せていないのになんだかそんな事はどうでもいい雰囲気になってしまっている。


 ちなみに我が家だが、ピラミッド国王の王都セントラルの貴族が住む貴族街と呼ばれる場所の端、国の騎士としての役職もある騎士爵の人間が住まう場所の一角に住んでいる。一部の家族は学校の両に行っているため、今我が家にいるのはお父様とリーフィア母様含めたお母様3人衆、それから一つ上の三つ子の兄姉と俺、そして末っ子の妹だ。


「お兄ちゃんはかっこいいですぅ!」

「はは、ありがとうミツキ」


 ウエンディ母様の娘である妹のミツキはとにかくかわいい。

 ウエンディ母様の特徴である栗色のさらさらした長い髪に、はしばみ色のつぶらな瞳が非常に愛くるしいため、我が家の癒しになっているのだ。


「ああ、ミツキ! 可愛すぎる! ミツキはどこにもやらんぞ! 絶対にだ! ミツキは俺の嫁になるゴバァ──」

「何言ってんのよこのアホンダラ」

「な、何するんだウエンディ」

「私の娘があんたみたいなあほな男の嫁になるわけないでしょ」

「……じゃあ、そんなアホな俺の嫁になって言うウエンディはどうなんだよ」

「……そ、それは、まあ、あんたも別に悪いやつじゃないし? というかそれとこれとは別よ!」


 などというナツキお父様が娘を溺愛して、それをちょっと荒っぽいところがあるウエンディ母さんがツンな態度でいさめるも、結局痴話喧嘩みたいになると言うのが我が家の定番だったりする。


「……そういえばハルは学校を卒業したらどうするの?」

「あ、ナナ母様。それ私も聞きたかった」

「「そうだね、気になるよ」」


 うちの定番な会話を傍目に見ながら、桃色髪のナナお母様が俺に質問してきて、それに三つ子のマオ姉様、カズヤ兄様にカズマ兄様が乗っかる。特にカズヤカズマ兄弟はそっくりで、マナ○ナかザ・○ッチかよとツッコみたくなるほど息ぴったりなのだ。


 ま、それはいいとして、そうだな、10歳になって俺の記憶も元の戻ったことだし、ちょいと今後について俺の考えを説明するのもいい機会だな。


「僕は冒険者になろうと思います。幸い、ここにはいくつものダンジョンが存在していて、そこに潜るための知識を得る学校も存在してますから」


 俺はここにいる家族全員に聞こえるように言い放った。


 俺が新たに生まれ育ったピラミッド王国には、国力として扱われるダンジョンが、全部で5つあると言ったと思う。


 その5つが次の通り。

 1つ目が【ドラゴンロード】と呼ばれる竜種ばかりが出てくるダンジョン。

 2つ目が【ツールハウス】と呼ばれる罠と宝箱に溢れたダンジョン。

 3つ目が【ミート・ミート・ミート】と呼ばれる獣系モンスターや鳥系モンスターが多数生息する迷宮。

 4つ目が【ライト・ダーク】と呼ばれる日が出ている時と日が沈んでいる時とで出現するモンスターが変わる不思議なダンジョン。

 そして最後が【ピラミッド】と呼ばれるピラミッド型の、ゴーレムだけが存在するダンジョン。


 これらの頭文字を、5番目から遡るように呼んで行くと、「ピ・ラ・ミ・ツ・ド」→「ピラミッド」となるためピラミッド王国と名付けられたそうな。

 いや、名前が最後のと被ってるやん。と俺の記憶が戻る前に突っ込んだのは、きっと誰もが予想できるだろう。

 また、この5つはかなり特殊なダンジョンで、ピラミッド王国は別名『繁栄と混沌を持つ冒険の国』と言われていたりするのだが、ま、今はどうでもいいことだ。


 ともかくこの国はダンジョンが多い。そして、それが国を支えているというのは周知の事実なので、国を挙げてダンジョンに潜ることを支援しているのだ。


 その国の支援の一つが国立のダンジョンを潜るための知識や経験を積める学校、名前はテフィニア学園と呼ばれる場所だ。

 ここにはダンジョンで生きていくためのあらゆる知識や経験を得うることができると言われていて、入学早々からダンジョンに制限はあるものの潜ることができるというとても素晴らしい場所なのだ。

 しかも、この学校は普通に教育機関としても有名で、毎年この学校に受ける人が多すぎて倍率が100倍と言う異常な場所だ。


「出来ればテフィニア学園に入りたいと思っているので、今のうちから自分の力をつけておこうと思っています」


 ま、本来俺にはその必要が無いくらいの実力はあるのだが、それでも初めは出来るだけ目立たないように行動したい。

 なので、出来れば国内最高峰の学校の平均的な所ぐらいの成績で入れるだろうなと周りが思ってくれるくらいには訓練したという事実が欲しいのだ。


「うーん。お前の兄たちも狙ったが、結局マオしか入ることが出来なかった学校か……どうなんだろうな」


 俺の父が珍しく神妙な顔をしている。

 ま、確かに我が家の子供達も全員がテフィニア学園に入るんだと頑張ったが、出来たのは1つ上のマオ姉様だけというのが現状だ。というかマオ姉様は我が家の中でダントツの天才で、それでやっと真ん中くらいの成績で入学したと言っていたからな、入学試験を受けるだけでもかなりのお金がかかるから受けさせるだけでも大変なので、渋るのも無理はないだろう。


 しかし、今回のメンドくさい一件のおかげでポジティブな要素を1つ獲得できたのだ。

 本来は最初にステータスを見せるというのが一般的な行為なのだが、我が家ではそれがスルーされたからな。「俺はなんて賢い息子を生み出してしまったんだ!」とか叫んでいたアホな父親を見たときには、もしかして前世の記憶があることがバレたかなとか思ったことを後悔して頭を抱えたくなったりしたくらいだ。……どうにもこの一家は能天気なところがある。


 っと、そんなことを考えている場合じゃないな。


「実は称号を獲得たんですよ。『ステータスオープン』!」


 ようやっと家族にステータスを見せる。まあ偽装したものだけど。

 能力のところは省くとして、称号のところだけ見て見てみる。


《称号》(亜神)、奇術使い、魔法の鬼才、


称号:奇術使い

詳細:あらゆる技を特殊な使い方をすることで他者を倒したものに与えられる称号。INTに大きな上昇補正。


称号:魔法の鬼才

詳細:若くして魔法を高いレベルで扱うものに与えられる称号。INTに大きな上昇補正、及び一定レベルの魔法のMP消費を軽減する。魔法を扱うたびに補正が大きくなる。


 どちらも先の決闘で得た称号だ。しかも割と効果が大きい。

 それに伴って[偽装]でINTのところを3から50に変更している。


 そこまで大きく強くなったわけでは無いが、それでも才能のあるやつで能力が15から20くらいなのだ、姉であるマオ姉様もそのくらいなので、可能性はある。

 ま、マオ姉様はそれに加えてさらに強い技能を持っていることも要因の1つなのだが……


 俺の称号や偽装した能力を見たお父様たちは、少し驚いた表情をしながらも、


「なるほど、これなら目指してみる価値はあるかもな」

「うん、私の血を引いた子供ならきっとやってくれると信じているわハル」


 と言ってくれた。


「はい、よろしくお願いします!」


 よーし、これであとは適当に訓練を頑張って、国内最高峰の学校に平均的な成績で入学してやる!

 そして卒業したら自由な冒険者になるんだ!

次もできるだけ早く出したいと思います

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