4.
今日はいつもより早く家を出た優。転校生を見ておくためだ。
下駄箱に靴を入れ、職員室の前を通り過ぎようとしたときだった。
―――ガラァッッッッ!!
ものすごい勢いで開いた扉に驚いて足を止めたが、それを失策だったと悟るのにそう時間はかからなかった。なぜなら…
扉の先にいたのは、優の担任であり、超絶放任主義者として有名な、えっと、名前は確か…深谷といったか。それと、一緒に出てきたと思われる女子生徒――美人だ――がいた。
深谷は周りを見回してから優の方に向き直る。そして―――
優は反射で飛び退るが、その前に深谷の腕ががっしりと左腕をつかんでいた。
そして、口角をつりあげて
「ちょうどいいところに、山田」
面倒なことになった、と優は軽く舌打ちはするが、逃げ出すことはない。この深谷に目をつけられると、様々な場所で心霊現象が起こる(実話)からだ。七不思議のひとつにもなっている。
「俺、今忙しいんだよなー。でもこれからお前の同級生になる奴の案内をしなきゃなんねーんだよなー」
「がんばってください」
「やってくれたらあのレアオカルト本やんのになー」
「…」
優は、特にオカルトが好きというわけではない。が、学校ではマニアを演じている。ましてや、前に(超高額で買えないと言う事と)この本のよさを熱弁した身であるから…。
「…ちっ」
「よしよし、引き受けてくれるよな?」
「…わーった。教室行くな」
「いや、がkk「あと三冊違うやつな」いいぞ」
「(即答かよ!?)本館&新館一周、成立」
「ああ」
がっしりと握手する男たち。それを見ていた女子生徒は、訳が分からず突っ立っているのだが。
「さて、いくか」
早々に歩き出した優。
…てか、どんだけやりたくないんだよ、深谷。