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「はあ……」
少女は月を見てため息をつく。
「こんなに明るい夜なのに…どうして寝なくちゃいけないのかしら?」
街は祭りのようで、にぎやかな音楽が風に乗って聞こえてくる。
「はあ…」
「どうしましたか、お嬢さん」
心地よいテノールボイス。その声の主を察した少女は、口角が少しだけあがる。
「街はあんなににぎやかで楽しそう。でも、私は子供だから寝てなさい、ですって。つまらないわ。誰かが私を、連れ去ってくれればいいのに…」
物憂げにため息をつく少女を見て、少しからかったように彼は言う。
「では、私が、あなたを連れ去ってしまいましょう」
その言葉にパッと振り向いた少女は、差し出された手を取り、目をキラキラさせる。
「さあ、一夜限りのショーを、どうぞお楽しみください」
「ようやくきてくれたわね。うれしいわ、”ピエロ”」
夜は、まだ始まったばかり。上を見上げれば、丸い月が覗く。
今宵は満月。仮面を被った道化師が、大人から悪を、子供から退屈を奪っていく日。
これは、現代の鼠小僧、”ピエロ”が紡ぐ物語
この作品は作者のくだらない妄想からできています。それでもよろしい方は、これからもよろしくおねがいします^^