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虚無の涙  作者: 心憧むえ
2/7

可能性

少女を病室の前まで連れていき、そこで僕達は別れた。

僕は自分の病室へ戻り、売店で買ったお菓子を食べた。


お菓子を食べた後は、夜が耽るまで小説を読んで眠った。


✱ ✱ ✱


翌朝、僕は見慣れた天井を見て今日も生を認識する。

いつ死ぬかわからないなんて、最初のうちは怖かったけど、慣れというのは全く恐ろしいものだ。

死の恐怖さえ慣れてしまうのだから。


ガラガラーー

いつも通り担当医の磯島健人が病室に入ってきた。

「体調はどうだい?」

「昨日の僕と一緒だよ。明日の僕もそう答えるよ」

「はは、まあそう言うな。」


このやり取りに意味なんてほぼ無かった。最初のうちは紙に僕の状況を書いていたようだったが、最近は手ぶらだ。


「今日はどうするんだ?また売店に行くのか?」

「今日は504号室にでも出向こうかな」

「田中さんのところか」


15年も病院にいると否が応でも知り合いはできてしまうものだ。

田中さんは齢70になろう老人だ。人生の後輩として先輩である田中さんの話をいつも聞いている。


僕はすぐに病室を出てスタスタと田中さんのところへ向かった。

504と書かれた表札のある部屋の扉をノックすると、中から弱ったような声で「どうぞ」と聞こえたので中に入った。


「おー君か。また私の話でも聞きに来たのかい」

「暇なんでね。お爺さんも話相手がいなくてどうせ暇でしょう」

「はっはっ、まあその通りじゃな」


笑い声も弱々しく、僕は胸が痛む。


「今日は可能性の話でもしようかの」

「可能性?」

「そうじゃ、君のその不治の病も治るかもしれんと言う、話じゃ。」


僕は特に驚く事は無かった。爺さんのいうことはどうせ戯言だろうと、思っていたからだ。


「とある一族がいた。彼らは異能の中でも特に変わった異能を持った一族じゃ。その異能とは『完全修復(ルーテロニア)』すべてを修復する力を持っていた。」

「なんだか健人先生と似ているね」

「似て非なるものじゃ。磯島先生のモノとは比べ物にならない。そんな強力な異能を持った一族は滅ぼされたという。それは力の代償が大き過ぎたからじゃ。」

「力の代償?」


「何かはわしも知らんのじゃが、あまりにも危険すぎるために滅ぼされたという。」

「滅ぼされたのか。それじゃあ僕の病気の完治の可能性なんて無いじゃないか」


戯言と思って聞いていたものの、やはり少しは期待している気持ちがあった。


「まだ続きがあるんじゃよ。その滅ぼされたとされていた一族には生き残りがいたらしい。生き残った一族たちは身を隠し密かに生き続けてきた。そうしてその一族の末裔は今もまだ生き続けている、と。」


話が終わった瞬間、部屋のすぐ外で何か不審な音がした。

話にうんともすんとも言わず、僕は気になった部屋の扉を開けることを最優先した。


「誰だ!」

扉を開けてあたりを見渡すもそこには何も無い無機質な廊下が続いていていつもと何ら変わりはなかった。


(気のせいか…)

扉を閉めて部屋の中に戻ると田中さんは少し驚いていた。


「ど、どうしたんじゃい?」

「いや、誰かが外で話を聞いているような気がして……。でもごめん、気のせいだったよ。それにしてもその話が本当ならその一族、僕の前に現れないかなあ」

「密かに暮らしている上に数少ないからの。」

(まあ、いたらの話だけど)


「爺さん今日も面白い話ありがとう。じゃ僕は部屋に戻るよ」

そう言って僕は立ち上がり田中さんの部屋をあとにした。


部屋に帰る前に売店でお菓子でも買おうと思って立ち寄ることにした。

そうして売店の前まで来た時、後ろから引き止められる。


「あの……!」

僕はすぐ後ろを振り返った。そこには見覚えのある人が立っていた。


「ああ、君は昨日の」

そこには、昨日306号室まで連れていった女の子が立っていた。


「どうしたの?」

「き、昨日のお礼がしたくて、でも名前とか聞いてないから取り敢えず売店にいたら来るかなーって思って……」


僕が2日続いて売店に行くことなんてあまりないのに、僕と会えた今日の彼女は少しついているらしい。


「お礼だなんて、ただ病室に案内しただけだよ。」

「そ、それでも、その、お母さんに昨日の事話したら、ちゃんとお礼してきなさいって言うから……」


照れ屋なのか僕の姿を見て怖がっているのか、僕と目線を合わせようとはせず、視線を外して僕と会話していた。


「お母さんに言われたなら仕方がないね。じゃあお礼してもらおうかな。」

「は、はい。それじゃあ何をしたらいいですか…」

「僕の部屋に来てよ。外の話を聞かせてもらえないかな。あまり病院から出たことなくて。」


彼女はお礼をなんだと思っていたのか、ポカンとしていた。

「それだけでいいんですか?」

「僕にとってはとてもとても良いお礼だ。」

「は、はい!わかりました!」


彼女はなにか使命感を持ったように元気よく返事をした。


僕は女の子を自分の部屋に招待したのだ!

ブックマーク、評価の程よろしくお願いします。

次回は6月10日の21時の掲載します。



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