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流星とスイーツと初恋と  作者: ゆりかストロベリー
8/15

身近な存在?遠い存在?

勇人と別れた愛華はレース柄の箱を持ち、寮に向かっていた。上手くすれば寮で、補習を受けていたゆりかと会えるかもしれないのだ。しかし寮へ向かう途中で愛華は1人の泣いている子と出会った。

「ど、どうしたの?」

「・・・」

「ねぇ、隣に座っても良い?私、貴女の事が心配なの」

「は、い」

微かな承諾の返事を聞いて、愛華はその泣いている子が座るベンチに座った。そしてその子が泣き止むまで何も言わず待っていた。

「落ち着いた?」

「はい。もう大丈夫です」

「良かった。えっと、何があったのか聞いても良いかな?」

「ちょっと部活で失敗ばかりで・・・。悔しくて」

「そっか。貴女、本物の努力家なんだね。そうじゃなかったら、上手くいかないからって泣けないよ?」

「そ、うなんですか?」

「うん。だから自分は努力家なんだって自信持って良いと思うな」

「あ、ありがとうございます」

愛華からの言葉に、その子は頬を赤く染めて俯いてしまった。それでも泣き止んだ事は安心できる。愛華は自分が持つ箱を見て思いついた。

「あ、そうだ。良かったらマカロン、食べる?」

「良いんですか?」

「うん。ちょっと作り過ぎちゃって。食べてくれると嬉しいな」

「じゃあ・・・1ついただきますね」

「どうぞ」

その子がマカロンを食べて笑顔になったのを見て、愛華は安心した。自分も小さい頃、泣いた時には兄の聖夢がよく甘い物をくれたのだ。

「どう?」

「とても美味しかったです」

「本当?良かった」

「それにちゃんと『ピエ』も出ていて・・・」

「えっと・・・『ピエ』って?」

「あっ、このマカロンの周りに出来るフリルのようなひだの事です。これが上手く出ないとマカロンが上手く出来たとは言えないんですよ」

「へぇ~。詳しいんだね」

「こ、これでもスイーツは大好きですから」

愛華は初めて聞く単語に思わず聞いてしまった。すると、その子もスイーツが大好きだと言っている。愛華は何となく予測ができた。

「あの、このマカロンはお1人で作ったんですか?」

「ううん。そのマカロンはね、東城君に教えてもらいながら作ったの。あっ、東城君は・・・」

「えっ、東城先輩にですか!?」

「う、うん」

「羨ましいです。東城先輩にマンツーマンでスイーツの作り方を教えてもらえるなんて・・・」

「あれ?もしかして部活って・・・」

「はい。私、スイーツ&甘味研究会に所属しているんです。と、言っても私は入部したばかりの1年生なんですけど・・・」

「えっと、名前を聞いても良い?」

「1年B組の花宮葵(はなみや あおい)です」

「ねぇ、葵ちゃん。やっぱり東城君って部の中でも人気なの?」

「そうですね。女子の多い部ですから人気です。それだけじゃなく部員全員に優しくて、先輩の作るスイーツはプロ並みなんですよ!」

「知らなかった・・・。そういう家庭なのかな?」

「そこまでは分かりませんけど・・・。なので同じ部に所属していても、なかなか近付ける機会がない先輩なんです。東城先輩は」

「そうなんだ・・・」

スイーツ&甘味研究会に所属する後輩からの話で、勇人の事をより知った愛華。それまではただの同級生だと思っていたのに急に勇人が遠い存在に感じた。

「あの、大丈夫ですか?」

「う、うん。東城君とは知り合ったばかりだったから、知れて良かったよ。教えてくれてありがとうね。葵ちゃん」

「いえ。もしスイーツに興味がおありなら、1度スイーツ&甘味研究会を見学にいらして下さい。歓迎しますよ」

「ふふ。その時はお願いね」

「はい。では失礼します」

葵は愛華にお辞儀すると寮の方へ元気そうに走って行った。こうして後輩の話を聞いてあげるのも先輩としての役目。けれど愛華は内心、穏やかではいられない心境になっていた。

「(私・・・どうしたら良いんだろう・・・)」


「はぁ・・・」

その日の夜。愛華は1人、ため息をついていた。今までは自分と何も変わらない同級生だと思っていた勇人が一瞬にして遠い存在のように感じてしまったのだ。

「(あんな事実知ったら・・・どうやって東城君に接すれば良いか分からないよ)」

ため息をつきながら夜空を見上げた愛華。しかし空を見上げても答えはなかなか見つからない。どうすれば良いのか1人悩んでいると机に置いていた携帯が鳴った。

「(と、東城君から!?)も、もしもし」

『あっ、もしもし、愛華。今って大丈夫?』

「うん。どうしたの?」

『明日の放課後なんだけどさ、何か用はある?』

「う、ううん。特にはないけど・・・」

『そっか。あのさ、僕行きたい場所があるんだけどちょっと付き合ってくれないかな?』

「もちろん良いよ」

『良かった。じゃあ明日、ホームルームが終わったら迎えに行くから』

「分かった。じゃあ待ってるね」

勇人からの電話に驚いた愛華。けれど勇人の声を聞いている間に悩んでモヤモヤしていた事が吹っ切れた気がした。と、同時に明日の放課後が楽しみで仕方なくなった。

「(明日が楽しみだなぁ~)」

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