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流星とスイーツと初恋と  作者: ゆりかストロベリー
7/15

2人きりのスイーツクッキング

「(この時間に起きる事って無いから・・・ちょっと眠い・・・)」

翌朝。愛華は鞄を持って誰よりも早く中等部の校舎に向かっていた。昨日、ゆりかのアドバイス通りにメールを送ったところ、『明日の朝6時に調理・被服室で会おう』という勇人からの返信があったのだ。

「あれ?夢美園?」

「あっ、吉澤君。おはよう」

「おぅ。・・・ってか随分と早起きだな」

「何だか目が覚めちゃって・・・。それより吉澤君は早朝ランニング?」

「あぁ。次の本戦までそんなに時間ないからな」

「そうなんだ。あっ、そういえば・・・ゆりかちゃんが言ってたかも」

「また応援に来るって言ってたしな。あっ、それじゃ俺行くな」

「うん。頑張ってね」

春樹と別れた愛華は誰も居ない校舎に入った。あまりにも静かすぎて愛華はついつい学校の怪談を考えてしまった。そのまま愛華は1号棟の2階の外れにある調理・被服室へ急いだ。

「おはよう、東城君。私、遅かった?」

「おはよう。ちょうど良い時間だよ」

「良かった。待たせちゃったかなって思ったよ」

「大丈夫だよ。もう準備できてるから」

「準備・・・?」

「うん。じゃあ愛華は座って待ってて」

そう言って勇人は準備室に行った。愛華は何か手伝おうかと思ったが、あまりにも勇人が嬉しそうだったので大人しく椅子に座って待っている事にした。

「お待たせ、愛華」

「東城君」

「はい。僕のお手製フレンチトーストと淹れたての紅茶。それからデザートにマンゴープリン」

「うわぁ!」


「すっごく美味しかった!ありがとう、東城君」

「愛華が喜んでくれたなら嬉しいよ」

勇人の嬉しそうな笑顔に愛華も嬉しくなった。少しは昨日の出来事を忘れられそうだ。しかし愛華の心は罪悪感でいっぱいになっていた。

「あ、あのさ、東城君」

「何?愛華」

「き、昨日は本当にごめんね」

「もう気にしてないよ。それに愛華が送ってくれたメールで大体の事情は分かったから」

「えっ?」

「愛華は僕がクラスの女子たちに囲まれていたのを見てヤキモチ焼いてくれたんだよね」

「う、うん・・・」

愛華は答えながらも恥ずかしくて俯いた。まだ勇人とはクラス違いの友人という関係であって、たった1人の大切な人という関係ではないのだ。しかし勇人は気にせず愛華の手を握った。

「と、東城君!?」

「僕は嬉しいよ。愛華がヤキモチ焼いてくれて」

「えっ?」

「今まで2人きりでしか僕たち会った事ないからね。愛華がヤキモチ焼くのも分かるよ」

「東城君・・・」

「でも僕が2人きりで居たいのは愛華だけだから。安心して」

勇人の言葉に安心した愛華。ホッとした愛華は自分の家族にしか見せた事のないフニャッとした笑顔になった。これには勇人が顔を赤らめた。

「東城君?どうしたの?」

「な、何でもないよ。(その笑顔は反則だよ・・・愛華)」

「?」

「あっ、それよりメールで言ってた僕に渡したい物って?」

「そうだ。お兄ちゃんからメニューが届いたの。はい、これ」

「ありがとう、愛華」

「それから昨日はマカロン、ありがとう。とっても美味しかった」

「喜んでくれたなら良かったよ」

「マカロンって作るの難しいんだよね?」

「スイーツ&甘味研究会のレシピならそんな事ないよ。それじゃあ僕が教えてあげようか?マカロンの作り方」

「良いの?」

「うん。確か材料はあるはずだから・・・じゃあ今日の放課後、調理・被服室で待ってるよ」


「・・・と言う訳で昨日の事は許してくれたよ」

「良かったね。愛華ちゃん」

昼休み。愛華とゆりかの2人は珍しく外に出ていた。いつも2人が教室に残っているので遊びに加わらなくても良いから、と春樹に連れ出されたのだ。今、2人は中庭の木陰に居る。

「それで今日の放課後、東城君にあるスイーツの作り方を教えてもらうんだ」

「へぇ~。それは楽しそうだね」

「もし良かったら、ゆりかちゃんも一緒にどう?」

「う~ん・・・参加したいんだけど・・・」

「何か用事でもあるの?」

「うん。この間、数学の授業で小テストやったでしょ?」

「連立方程式の小テストだっけ。確か点数の悪かった人は再テストだって言ってたよね」

「私、その再テスト該当者になっちゃったの。そうしたら宮瀬先生が『再テストは受けなくて良い。その代わり個別に1から教える』って言われちゃって・・・」

「そうなんだ・・・。じゃあスイーツが上手く作れたらあげるね」

「ありがとう」

2人が仲良く話しているとフワッと風が吹いた。木陰に居る事も重なって静かで涼しいように感じる。木漏れ日を見ていてウトウトして来たのか2人は少し昼寝をする事にした。

「・・・んで、次もって頼んだんだよ」

「へぇ~。なら僕も頼んでみようかな」

「良いんじゃねぇか?そうすればもっと仲良くなれる」

「そっか。良い事聞いたなぁ。・・・って、あれ?」

「どうした?」

「あそこで仲良くお昼寝しているのって・・・」

校庭から中庭へとやって来たのは春樹と勇人の2人。実はこの2人、入学したての1年生の時に同じクラスだったのだ。今となっては互いに違うクラスだが顔を合わせば話す仲だ。そんな2人が見つけたのは木陰で眠る2人の姫・・・もとい、愛華とゆりかだった。

「ふふ。2人ともぐっすりだね」

「ったく・・・。こんな場所で寝やがって・・・」

「春樹は本当に雪宮さんに優しいね。心配なんだ」

「ま、まぁ、俺は幼馴染だからな。・・・勇人、午後の予定は?」

「ん?4限目は自習で授業ないし、暇だけど・・・」

「よし。ならこの2人が起きるまで一緒に居てやろう」

「良いよ」


「う・・・ん・・・」

「あれ・・・?私たち、いつの間にか寝ちゃってた・・・?」

それから1時間半後。愛華とゆりかの2人は目を覚ました。座って寝ていた割には目覚めが良かったようだ。目覚めてすぐに2人は自分たちの隣に居る姿に気付いた。

「えっ・・・春樹?」

「東城君・・・?」

愛華とゆりかの2人に寄り添うように眠る春樹と勇人の2人。愛華とゆりかの2人が顔を見合わせて首を傾げていると春樹と勇人の2人も目を覚ました。

「あっ、愛華。起きた?」

「う、うん」

「ところで、どうして春樹と東城君は此処に居るの?」

「ゆりか、お前と夢美園の2人が昼寝してたからだ。ったく、校内とは言え外で寝やがって・・・」

「まぁまぁ。雪宮さん、気にしなくて大丈夫だよ。一緒に居ようって言い出したの、春樹だから」

「・・・。とにかく教室に戻るぞ。5限はロングホームルームだからな」

「あっ、ちょっと待ってよ!春樹!」

「僕らも行こうか」

「うん」

そして賑やかに校舎へと戻った4人。その様子を見ていた人物が1人。この人物が愛華と勇人の間に溝を作ろうとはこの時は誰も思うよしもなかった。


「東城君、お待たせ」

「愛華。ちょうど良かったね。用意ができたところだから」

放課後。一旦、寮に戻ってエプロンを持った愛華は調理・被服室に向かった。これから勇人とスイーツを作るのだ。

「此処にあるのがマカロン作りで使う材料と道具だよ」

「思ってたよりは材料、多くなかったなぁ」

「さてと、マカロンは何色作ろうか?」

「えっと・・・昨日、東城君がくれたのが良いかな」

「そうなると昨日のは・・・ココアとイチゴだったから、これとこれ、かな」

「うん。でも・・・折角だし1,2種類くらい新しいのも作ってみたいな」

「そう?じゃあ、此処にある材料の中で好きなの選んで」

「えっとどれでも良いの?」

「うん。大きく作り方が変わる訳じゃないから。それに色んな味があれば目でも口でも楽しめるし」

「じゃあ・・・抹茶と紅茶にしようかな」

「分かった。それじゃあ4種のマカロンを作る、って事で良い?」

「うん」

愛華が頷くと勇人は手際よく使う材料と道具を手元に用意した。常に部活でスイーツを作っている勇人にしてみれば慣れた事なのだ。愛華はつい見惚れてしまった。

「愛華?大丈夫?」

「う、うん!東城君の手際が良いから、つい見惚れちゃったの」

「そっか。・・・えっと、それじゃあ始めようか」

「うん。よろしくね」


「たくさん作ったね」

「うん。上手く作れて良かった」

それから1時間半後。愛華は勇人の手を借りて4種のマカロンを完成させた。味見用のマカロンを残し、ほとんどのマカロンはレース柄の箱に入れた。

「どうかな?美味しい?」

「うん!美味しいよ」

「良かった。これなら、ゆりかちゃんに差し入れしても大丈夫かな」

「大丈夫だよ。あっ、そうだ。はい、これ」

「これは?」

「今日作ったマカロンのレシピだよ。もし自分で作りたいって思ったら使って」

「ありがとう」

「それじゃあ、また明日」

「うん、またね」

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