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流星とスイーツと初恋と  作者: ゆりかストロベリー
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学校の伝説

此処は流星学院。自然いっぱいな土地に建つ全寮制の学校だ。そんなこの学院には、とある伝説がある。それは学院の何処かにある様々な色の流れ星の絵を見つけると運命の人と出会える、というもの。しかしこの伝説を立証した者は居ない。そのため単なる伝説として、一部の女子たちの間で囁かれている。

「・・・っていう伝説があるんだって」

「へぇ~。何だかロマンチック」

昼休み、カフェテリアでこの伝説について話す2人。2人は中等部2年のゆりかと愛華。入学以来の仲な彼女たちは大人しく、人前に出る事を苦手とする。ましてや男子と一緒に居る事などない。

「本当にこれは噂なんだけど、高等部の先輩でこの伝説を現実にした方がいらっしゃるんだって」

「じゃあ伝説なようで現実なんだ」

「そうだね。だけど中等部では今のところ、1人も見つけてないんだって」

「・・・って事は高等部にある可能性が高いって事?」

「どうなんだろう?」

カップアイスを食べながら話し合う2人。中等部の中で1、2を争うほど純粋無垢な心を持っているため、例えそれが伝説であっても信じてしまうのだ。そんな時、愛華と話していたゆりかの頭上に青色のバインダーが振り降ろされた。スパンッという音がカフェテリアに響く。

「痛ぁ・・・」

「大丈夫?ゆりかちゃん」

「うん。何とか・・・」

「でも一体誰が・・・」

「こんなとこでよく呑気のんきにアイスなんて食ってられるな、ゆりか」

「春樹!?」

ゆりかの頭上にバインダーを振り降ろしたのはゆりかの幼馴染、春樹。人を疑う事すらしないゆりかを小さい頃から守って来た、言わば第2の保護者のような存在だ。

「どうして此処に・・・って言うか、何で叩くの!?痛かったよ!」

「お前を捜してた俺の苦労も考えろ」

「ど、どう言う事?」

「お前、今日の放課後は?」

「えっ・・・部活やってないし、愛華ちゃんと一緒に寮へ帰ろうかなって・・・」

「(すっかり忘れてるな)やっぱりか・・・」

「?」

「あっ、宮瀬先生。エスケープ姫は此処ですよ」

「!?」

宮瀬先生という教師の名前を聞いた途端、ゆりかは慌てて席を立とうとした。しかし春樹は睨んでそれを許さない。愛華に至っては一言も発さない。ちなみにエスケープ姫というあだ名は、宮瀬先生が名付けたものだ。実はゆりか、数学が大の苦手でその担当である宮瀬先生を敵と捉えているのだ。そのため逃げる事など日常茶飯事となっている。

「おっ、其処に居たか。吉澤、助かった」

「いえ。ゆりかの行動は常にワンパターンですから」

「さすが、吉澤。雪宮の事で分からない事は無いようだな」

「はい。幼馴染ですから」

「そうか。頼りにしているぞ」

「任せてください。何ならゆりかの捕獲も引き受けるんで」

「そうだな。次の時は職員室までの連行、頼めるか?」

「もちろんです」

春樹は宮瀬先生と仲良く話せる。それは春樹の得意科目が数学であり、教科係を務めているからだ。その話している場を邪魔する訳にはいかない、とゆりかは愛華を盾にしながらカフェテリアを後にした。

「ゆりかちゃん、良いの?」

「良いの。別に春樹は私に用があった訳じゃないんだし」

「(用があるから、捜してたんだと思うけど・・・)」


「あっ、そうそう。その学校の伝説ってね」

「うん」

「もし見つけても騒いだり、SNSにアップしたりはNGなんだって」

「どうして?」

「一応は伝説として存在している訳だし、公にしたら大変なんじゃない?」

「あぁ、なるほどね」

カフェテリアを後にした2人は学園が誇るバラ園に居た。此処なら人目を気にせずゆっくり話せる、と愛華が選んだのだ。ちょうどバラに囲まれた東屋が空いていた事も幸いした。

「ねぇ、ゆりかちゃん」

「何?」

「その流れ星って大体何色くらいあるの?」

「詳しい事は分からないんだけど・・・12色の色鉛筆から茶色と黒色を抜いた数だけあるって言う人も居るね」

「じゃあ10色って事?」

「うん」

「そうなんだ」

伝説と言われているだけあって詳細は分からない。それが尚更、伝説を信じている女子たちの好奇心をかきたてる。すると昼休み終了5分前を知らせる鐘が鳴った。

「うわっ!急いで教室に戻らないと!」

「そうだね」

「次の時間って何だっけ?」

「数学。それに宮瀬先生って私たちの担任だよね」

「終わった・・・」


「よし。今日の授業は此処まで」

『ありがとうございました』

「明後日、確認テストをするからな。しっかり復習しておくように」

『は~い・・・』

「じゃあこのまま帰りのホームルームするぞ。日直、号令」

数学の授業が終わると、そのままの流れで帰りのホームルームとなった。先生が教室を出たところで帰寮しようとしていたゆりかにとっては最悪のパターンだ。帰りの挨拶が済むと、ゆりかは荷物を持って急いで愛華のところへ行った。

「愛華ちゃん、一緒に帰ろう」

「良いよ。だけど帰り支度するの早いね、ゆりかちゃん」

「そ、そうかな?」

「まぁ、良いけどさ」

「あー、楽しく話してるとこ悪いが雪宮、ちょっと良いか?」

「えっと・・・今ですか?」

「あぁ。今すぐだ」

どうしても愛華の傍を離れたくなかったゆりか。しかし先生からの呼び出しに応じない訳にはいかない。そこで荷物を愛華に見ていてもらって、廊下へと出て行った。

「なぁ、夢美園ゆめみその

「どうしたの?吉澤君」

「どうしてゆりかに優しくするんだ?」

「優しくしたらダメ?ゆりかちゃんが優しい事、幼馴染なら知ってるはずだよ?」

「あぁ、もちろん知ってる。ゆりかのお陰で助かった事はいくらでもある。けど、限度ってもんがあるんじゃないか?」

「どう言う事?」

「今日の昼休みみたいに騒ぎが起きるかもしれないだろ」

「そう言う事か。じゃあ次は私も注意してるよ」

愛華は春樹の言葉を自分なりの考え方で捉えた。春樹は本当に大丈夫か心配になったが、愛華を疑うと後でゆりかに怒られるので確認はしなかった。しばらくしてかなり落胆した様子のゆりかが戻って来た。

「・・・」

「ゆりかちゃん?どうしたの?」

「おい、ゆりか?どうしたんだよ」

「愛華ちゃん・・・ごめんね」

「えっ?」

「今日の放課後、昼休みに逃げたペナルティーとして宮瀬先生とマンツーマンで補習する事になっちゃって・・・。だから一緒に寮へ帰れなくなっちゃって・・・」

「別に良いよ。気にしないで」

「本当にごめんね。今度、絶対に埋め合わせするから」

「そんなに気にしないで。例の件は1人で調べてみるから」

「うん。あっ、でも何かあったら言ってね。手伝うから」

「分かった」

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