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ハードボイルドウイザード  作者:        
ハードボイルドウイザード Ⅰ ~ ウイザードは仮想ハーレムの夢を見るか? ~ 終章    うつつかゆめかまぼろしか
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<ハーレム・イリュージョンⅡ>~ジ・エンド・オブ・イベントラッシュデイズ~



<ハーレム・イリュージョンⅡ>~ジ・エンド・オブ・イベントラッシュデイズ~







「ねぇ♥ 何、考えてるの?」


 涼やかなシセリスの声が耳をくすぐり、柔らかな二つのふくらみが背中にあてられる。


 嗅ぎなれた香木に似た香りがただよい、オレを包んだ。


 聞くものによっては冷たく感じられる声質のこえだが、今は甘い響きがこもっていた。


 下着をつけていないのか小さく柔らかな尖りが、背中に感じられる。


「ああっ! ずるい、あたしもっ!」


 やや高めのアルト──ユミカのはずむような声がして、右腕がとられ背中の膨らみよりはやや小振りの胸が押しつけられ、しなやかな白く長い脚がベッドに腰掛けたオレの脚にからむ。


「…………」


 オレは読んでいた本から顔を上げず、そのまま調べものを続けた。


 顔を上げれば、絶世のとついてもおかしくない美女と美少女が挑発するようにオレを見ているだろうことは判っている。


 だからこそ、オレは黙ってやるべきことを続ける。


「あなた達っ! また御主人様のお邪魔をして!」


 扉が開く音がして、清楚と呼ぶのがふさわしい凛としたシセリスの声が二人をとがめた。


 オレを御主人様と呼ぶこの声の持ち主も他の二人に勝るとも劣らない美貌の持ち主だ。

 

「わたしは、彼の雇い主だからいいのよ」


 背中でそう声が答え、小さな尖りがすべるように動いた。


「あたしも恩返しをしてるんだから、いいの」


 右側でそう声がするのを聞いて、今度は左腕にも小さなふくらみが押しつけられた。


「恩返し……します」


 左から聞こえたのは、少し幼さの残るシュリの鈴のような声だ。


 微かに震えるようなソプラノはどこかさびしげにも聞こえるが、決意に満ちている。


 こっちもその声や歳に似合わない妖艶な美しさを持つ少女だということをオレは知っていた。

 

「ああもう、あなた達がそんなだから、真似しちゃったじゃないですか」


「そうね。 人まねはよくないわね。 あなたたちは離れなさい」


「えーっ! そんなのなし ずるいよ」


「……や」


(女三人よればというが、それは容姿や性格に限らずらしい)


 オレは作業を続ける頭のかたわらでそう思った。


 領主達にあてがわれた部屋に入り、本屋で買った乗合魔動車の運行表を調べていたところに。


 酔ったミスリアが薄いネグリジェのような部屋着で入ってきたのを皮切りに。


 これも顔を赤くしたユミカとシュリが、最後にシセリスまでやってきて、部屋の中は華やかな色の部屋着姿の

美女と美少女があふれ、ハーレムの様相を呈している。


  酔っていることを差し引いても彼女達がオレに好意を抱いているだろうことは判る。


 これで気づかないというやつは、そんなふりをしているか、本当の知恵遅れだろう。


 ここが現実で彼女達が本当にオレを慕っているのならまだ許容範囲なのだが……。


 これを陰でほくそ笑みながら見ているかもしれないやつのことを思えば、ムカつくとか反吐が出るといった表現では足りない憤怒が巻き起こってくる。


 例えやつらに看視されてないにしても、この状況で手を出すなど、後先考えないガキか、何も考えないバカか、欲望を満たす為に何をしてもいいと思っているクズでもなければありえない話だった。


 オレはもう何も考えずに生きるほどガキでもないし。


‘下種脳’に成り下がる気もない。


 生きることが欲望を満たすことだなどと胸を張って言う恥知らずなど御免だ。


 すでに何百人もの人間がこのリアルティメィトオンラインの世界に捕らえられていることは確認した。


 彼らの多くはNPCとして記憶や過去を刷り込まれているらしい。


 どうやってASVR内にそれだけの人間を閉じ込めたのか?


 いったいここにオレ達を閉じ込めたやつらの狙いは何なのか?


 依然として何も判ってはいない。


 現実世界が‘下種脳’どもの欺瞞にあふれているように、それを模したここも同じだ。


 だが億を超える人間が参加して造り上げたリアルティメィトオンライン世界を完全に洗脳した人間だけで再現できるわけがない。


 どこかにAI制御されたNPCが見つかるはずだ。


 そうすれば、バグを誘発することも可能だろう。

 人間と違ってAIなら狂わせることができる。


 オレはその感情をコントロールしながら、人という存在を弄ぶことで自らを他者より優れた人間だと名乗り、征服機構を築いて不幸をばら撒く‘下種脳’という害虫を駆除する方法をただ考えていた。



 もう一つの可能性、これがオレのみる狂気の夢でないことを願いながら。




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