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祈り石  作者: 蝸牛
2/2

始まり・2

祈り石。


これが、俺達の集まった理由だ。


この学校には、昔からある言い伝えがあった。学校の敷地内にある石の祠―――「祈り石」に、願いを書いた紙を入れるとそれが叶うというものだ。どこにでもあるようなくだらない噂。・・・ただ少し違っていたのは、その願いが実際に叶うということだった。


それを実現させて来たのが、この「かんなぎ部」である。


設立したのは当時高等部1年生だった黒川先輩。それに幼馴染の堤先輩、中等部からの友人だった赤谷先輩、そして中等部の2年生だった高崎君とが加わって出来たそうだ。宮沢先輩はその半年後くらいから加わったのだと、黒川先輩は付け足した。


願いを叶えると言っても、もちろん限界がある。先輩達が叶えてきたのは誰かと両想いになりたいだとか、楽して成績を上げたいだとか、そういう願いじゃない。いわゆる「トラブルシューター」と言った方が正しいのかもしれない。まぁ、それはまたおいおい分かっていくことだろう。


そして今年、高等部から入ってきた式部君と黄島君、そして俺とがこの「かんなぎ部」へ選ばれたのだ。


初めて話を聞いたのは中学3年生の冬。力試しのつもりで受けたこの学校に合格したとき、黒川先輩から手紙でその話が来た。


この学園の理事長である黒川先輩は今年の合格者を見て俺達の存在を知り、この部への入部を依頼してきたのだ。実を言うと、一度俺はそれを拒否した。入試の時に上位だった俺は特待生ということで学費は免除されていたものの、諸事情で家から遠い私立に通うのは不可能だったんだ。


しかし先輩は食い下がって、それならば、と寮への入居を提案してきた。寮からなら通学は楽だし、特待生だから一人部屋になる、と。何より俺の此処への進学を決定づけたのは「寮の家賃は完全無料」という先輩の言葉だった。意地汚いと思うならそう思ってくれて構わない。


実際、本命の公立高校よりもこっちの方が学力は高く、金銭面や交通面で諦めていた部分があったので、俺は先輩の提案をすんなり受け入れた。


そうして俺はこの学校の、この部に居るというわけだ。だけど俺が選ばれた理由はいまいち分からない。


まだ一度もそのことを聞いていないことに気付き、黒川先輩が話し終えるのを待ってから質問することにした。


「・・・というわけで、俺達の活動はそんな感じ。何か聞きたいことある?」


「あ、あの・・・」


先輩は小首を傾げてこちらを見た。


「ん?何?」


「いや、俺達がこの部に選ばれた理由って何なんですか?」


俺が言うと、何も言わずに先輩はにやりと笑った。小学生が悪戯するときに見せるような、何か含んだ笑顔。


「まぁ、そのうち分かるっしょ。他には?」


案の定、さらりとかわされてしまった。何となく、この人に勝とうというのは無理だと思う。食い下がっても無駄だろうと、俺はそれ以上の追及は諦めた。


「・・・他は無いみたいだね。じゃあ、今日は解散ってことで・・・。」



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