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第八話 親と子

 今回の話は暗いかもしれません。

 タイトル難しい……。



 最初に少し、あの子が登場。その代わり、ルーシェルとノギスは登場していません。

「アデライードさま、私早くルーシェルに会いたいです」


 ぷくっと頬をふくらませながら言う少女。それを見て、そばにいた女性は苦笑した。もう千年以上生きているのに、なぜこんなにもこの子は子供っぽいのだろうか。

 そう思った途端、少女は口の中に溜めていた空気を吐き出す。


「……今、失礼なこと考えましたか? 考えましたよね?」

「ははっ、すまない。頬を膨らませる君が可愛くてな。まあ、それは今置いておこう」


 つい笑うと睨まれてしまった。以前はこんなことをしない子だったから、それだけ打ち解けたのかと思うと嬉しい。会った頃はもっと刺々しい雰囲気の子だった。……今も、人間に対しては非情なのだが。

 自分のしようとしていることに罪悪感を感じながらも、女性は少女に笑いかけた。


「君はまだ、ルーシェルに会わないでくれ。あれ(・・)をもっと弱らせてからだ。人間たちもあれがいないと困るだろう。君の復讐はそれで達成される。皆殺しにするより、こうやってじわじわと苦しめたほうがいいんだよ。わかってくれるな」


 不満そうな顔で少女はうなずく。女性は愛しそうにそれを見つめ、彼女の頭をなでた。気持ちよさそうに目を細める彼女に言う。




「良い子だな。……ノエル」




     * * *


 セリアが家に着くと、なぜかそこには両親の姿があった。久しぶりにみる両親は、ギラギラと目を輝かせてセリアのことを見てきた。

 まさか、ルーシェルに会っていることがばれたのだろうか。それとも、雨が降らないことに対して、何か話があるのだろうか。……心を読む限り、後者のようだ。

 口に出さず、心の中だけで座れと言う父に従い、素直に椅子に座る。


「……どんな話をしにきたのか、お前ならわかっているだろう?」

「はい」

「相変わらず気味が悪い奴だ。なぜお前のような奴が生まれ、『巫女』になったのか……。今はどこに行っていた」


 汚い物でも見るような目。隣を見ると、母も同じような目でセリアを見ていた。

 ルーシェルは一度もしなかった目だった。しばらくルーシェル以外には会っていなかったから、忘れていた。思わずびくっと身をすくめる。


 どうやって説明しよう? どこに行っていたか正直に話したら、ルーシェルの封印が解けたことが知られてしまう。洞窟に魔女が封印されているのは、この辺りでは有名な話だ。かといって、セリアはルーシェルに会う前、昼間は滅多に外に出なかった。ノギスに会った時は、何となく散歩をしていたが。両親もそのことは知っているはず。

 ここは、少し散歩をしていただけだと言っておこうか。

 口を開こうとすると、父がため息をついた。


「まあいい。お前、龍神さまにきちんとお祈りしているのか。雨が降っていないのは、お前が何か無礼を働いたのではないか?」

「そんなっ! ……実は龍神さまの身に何か起きたようなのです」


 確信を持ってそう告げると、父は声を荒げる。


「何!? なぜそれを早く言わないのだ! 何が起きたのか、はっきりと説明しろ!」

「私も説明はできません。ただ、龍神さまのお力が弱まっているとしか。龍神さまの声がここ最近聞こえないのです。昨夜も祈りをささげたのですが、耳を澄まさねば聞こえないような、小さな声しか聞こえませんでした」


 それを聞いた途端、父は家を飛び出していった。おそらく、村長にこの話をしに行くのだ。後にはセリアと母だけが残る。

 母はセリアを睨みつけた。


「せっかくその瞳の色に産んであげたのに、なぜ巫女の役目を果たせないの? 龍神さまのお声が聞こえないのも、貴女のせいじゃなくて?」


 それだけ言うと、父の後を追いかけるように家を出ていった。いや、実際に追いかけるのだろう。それを、どこか遠くのことのようにセリアは見ていた。



 貴女のせいじゃなくて?



 頭の中で母の声が響く。

 考えたこともなかった。今回のことは、龍神さまの力が弱まっているせいだと思っていた。だが、もしかしたら自分の『巫女』としての力が弱まっているのかもしれない。そんな巫女の話は聞いたことがないが、十分に有り得る話だ。心が読める巫女だって、セリアが初めてなのだ。


 巫女の力が弱まるのではなく、生き物の心を読めなくなったらいいのに。龍神さまの声が聞こえなくなるのは嫌だ。先ほど会っていた本物の母より、龍神さまは母親らしかった。龍神さまも生き物の心が読めるから、セリアの気持ちもわかってくれる。

 巫女になどなりたくなかった。そう考えてしまうセリアを、黙って見つめてくれて。しばらくしたら、優しくなでられるような感覚がおとずれる。それをされるといつも泣きたくなって、最初の頃は泣いてばかりいた。今では我慢できるようになっているが。


 本当に、龍神さまの身に何が起きたのだろう。

 そこでふと、母の言ったことを思い出した。


(……その瞳の色に産んであげた、か)


 そんなこと望んでいない。そう母に言えたら、どんなに楽だろう。

 だが怖いのだ。両親に何か言われることが。もうセリアはあの人たちのことを、親とも思っていないのに。両親だって、セリアのことを自分の子だと思っていないのかもしれない。

 だって――











 両親は今まで一度も、セリアの名を呼んだことがないのだから。

 セリアの名前を付けたのは、もちろん両親です。生まれる前に決めていました。ですが、変な能力がわかってからは呼んだことがありません。最後のところを正確に言うと、セリアが物心ついた時から、ですね。

 セリアに名前を教えたのは村長です。セリアのことを恐れてはいますが、村の中ではましな方です。

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