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魔女と巫女の物語  作者: 藤崎珠里
後日談
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後日談 БЩΞ‡Щ_Й〃λ[下]

 耳を澄ませば、ルーシェルとセリアの小さな寝息が聞こえてくる。

 それを確認して、ノギスは立ち上がった。そして、本を読んでいるクロードに話しかけた。


「さっきの話、本当か?」

「……聞いていたのか」


 聞いていた、と言うよりも、聞こえたと言ったほうが正しい。何やら話しているようだったので、邪魔をしないように外で待っていただけだ。

 聞こえてきた内容は、とても信じられるものではなかったが。


「本当だ。魔女が人間になる方法は、存在する」


『人間になりたいに、決まってる』


 ルーシェルの言葉を思い出す。あの言葉は、心の底からの願いだった。それなのに彼女は、ノギスとの契約が破棄されるかもしれないのなら、と断ったのだ。

 本来なら、家に入ったときすぐに文句を言いたかった。言えなかったのは、ルーシェルの顔を見てしまったから。怒られるのではないか、と怯えるような顔。ノギスが外で聞いていたことをわかっていたのだろう。

 あんな顔をされたら、何も言えなくなってしまうではないか。


「契約が破棄されたって構わん。あいつを、人間にしてやってくれないか?」


 クロードがうなずかないということはわかっている。彼は、ノギスの願いよりもルーシェルの願いを優先させる。

 思った通りクロードは無言で首を横に振って、また本を読み始めた。


(……俺が死んだらルーシェルだって悲しむ)


 眠っているルーシェルを見る。のん気な寝顔だ。

 人間に、彼女だってなりたいはずなのだ。

 じーっと見ていると、誰かが扉を叩き、中に入ってきた。


「こん……にち、は」


 ミオはルーシェルたちが眠っていることに気付くと、声を小さくした。

 クロードのほうを見て、彼女は面白くなさそうな顔をする。


「せっかくアタシが我慢して、今まで来ないであげたのに……」


 そんなミオのぼやきを無視して、クロードは黙々と本を読む。


「もう、これじゃあノギスしか話し相手がいないじゃない」


 ミオはむくれながらこちらへ寄ってきて、ノギスと目線を合わせるためかしゃがみこんだ。

 彼女にしたらただ見ているだけなのかもしれないが、何だか睨まれているように感じた。何も言わずにしばらくノギスを睨んでいたミオは、急に眉をひそめた。


「どーしたのよ、何かあったの?」

「……何も」


 ミオは勘がいい。だから何かあったことはわかっているだろうに、「ふ~ん?」と納得するふりをしてくれた。

 彼女は何かを思い出したように、持っていた袋から干し魚を取り出した。


「ほら、アタシが買ってきたんだから無駄にしないでよね。早く食べなさいよ」


 早くしないとルーシェルを起こすわよ、と脅されては、食べるという選択肢しか残されていない。元々食べるつもりだったのだが。

 ぽいっと無雑作に床へ投げられた魚に、がぶっと噛み付く。あまり美味くないが、ミオを怒らせないためにも食べきった。

 ミオは満足げにうなずいて、ノギスの耳の後ろをなでてきた。

 こうやってノギスの世話を焼くのは、きっと彼女が使い魔をなくしているからだろう。そうわかっているから、ノギスは抵抗せずにされるがままになった。


「で、結局のとこどうなの。何かあったんでしょ」


 ミオはまた同じことを尋ねてきた。何でもないと言えば、しつこく訊いてこないミオにしては珍しい。やはり勘がいいからだろうか。訊いてほしくないことと、本当は訊いてほしいことを理解しているようだ。


「……魔女が、人間になる方法があるらしくてな」

「は?」

「ルーシェルは、契約が破棄される可能性があるならなりたくない、と言った」


 ああなるほど、とミオは呆れた声を出した。


「ルーシェルっぽいわねぇ。人間になっても、あんたがいなきゃ嫌だってこと?」


 自分でもそうだとわかっていたが、他人に言われると何となく照れくさい。ついミオから顔を背けると、今度はのどをなでられる。


「でもどっちにしろ、あんたはこのままじゃ死ぬじゃない。ルーシェルはまだ気付いてないの?」

「……どうだかな」


 先ほどのルーシェルとクロードの会話を聞いた限り、気付いているのだろう。そうは思ったが、はっきりとは答えなかった。

 ミオは立ち上がって、クロードに言った。


「ねぇクロード。ルーシェルにどう言われても、ルーシェルを人間にしなさい」


 本から顔を上げた彼に、更に言う。


「絶対よ? アタシがあんたを脅したってことにしたら、もしノギスが死んでも恨まれるのはアタシだけだから」

「断る」


 クロードは即座に答えた。それを聞いて、ミオがぴきっと青筋を立てる。彼女もクロードがそう答えるとわかっていたはずだが、思ったよりも苛ついたのだろう。

 何を思ったか、クロードは立ち上がってルーシェルとセリアが眠る寝台に近づいた。


「……脅されずに、自分自身の意思でやる」

「っそれって!」


 ミオの大声に、せっかく眠っていた二人が目を覚ましてしまった。

 うっすらと目を開けた二人は、寝台の近くで立っているクロードを見て不思議そうにしている。次いでミオに気付き、驚いたように目を見開いた。


「あら、起きちゃった? 丁度いいから、やっちゃって。もしものことを考えて、ルーシェルとノギスは最期の挨拶をしときなさい」

「え、え? ノギスと? 最期の挨拶? やるって何を……!」


 気付いたのか、ばっとルーシェルは体を起こした。


「クロード、しないよね?」

「気が変わった」


 そんな、と絶望に染まった顔をするルーシェル。

 そんな顔をするほどのことだろうか。どうせ自分は、ルーシェルよりは先に死んでしまうというのに。やはり彼女は、そのことに気付いていないのかもしれない。

 一人だけ何も知らないセリアが、困惑した声を出す。


「何だか、私だけ仲間はずれ……?」


 遠慮したのかその声は小さく、おそらくノギス以外は聞いていなかっただろう。

 説明するつもりもないので、ノギスは寝台に飛び乗った。ルーシェルの視線を感じながら、彼女の目の前に座る。


「ルーシェル」

「やだ! ノギスが死んじゃうなんて……」

「死ぬと決まったわけじゃない」


 もし死んだ時のために、何かを伝えようと思ったが。結局言葉にできず、何を伝えたいのかもわからなくなってしまった。

 何も言えなかったのは、ルーシェルに力強く抱きしめられているからでもある。


「ぷっ……そ、そろそろ、いいかしら?」

「ミオ。何で笑ってるの」


 涙声で言いながら、ルーシェルは噴き出したミオを睨んだ。


「気にしないで。……そうね、もうちょっとでわかるから。ひとまずルーシェル、ノギスを放しなさい」


 笑みを隠そうとしているようだが、隠しきれていない。

 ルーシェルなら、誰に何を言われてもしばらくは放してくれないと思っていた。だが予想に反して、ルーシェルはしぶしぶとノギスを放した。

 ミオはそれを見てにっこりと笑うと、目を瞑った。


「――к‡П ζи 」


 魔法だ、とはわかるものの、何の魔法かはわからなかった。

 どうやら魔法の対象はノギスだったらしく、頭の中が変な感じがする。何かが変わった気もするが、それが何かがわからない。ただ、何だかとても懐かしい気がした。

 首をかしげながら、ルーシェルがミオに訊いた。


「ミオ、今のって?」

「さあ、何でしょうかねぇ。ま、これでルーシェルが人間になったとしても、ノギスが死ぬ可能性は零になったわ。さっさとやっちゃって」


 ミオの行動の意味をわかっている者は、この家の中にはいなかった。皆訝しげな顔で、ミオのことを見つめている。アデライードがいれば、今の魔法が何なのかわかったのかもしれない。

 ほら、とミオに急かされ、クロードが戸惑いながらも口を開いた。


「いくぞ」

「まっ」


 て、とルーシェルが叫んだが、すでに遅い。


「БЩΞ‡Щ_Й〃λ」


 辺りに、金色の光が広がった。

 魔法では光はでないし、術の場合は真っ白な光が出る。そのどちらでもないから、術と魔法が合わさったものというのは本当なのだろう。

 眩しくて、目を閉じる。この光が収まったら、ノギスの生死がはっきりする。

 死ぬ可能性が零になった、というミオの言葉。彼女は何も説明してくれないので、信じられなかった。死んだら死んだで仕方がない、と思う。


 光が収まっても、ノギスは生きていた。

 目を開けてルーシェルを見ると、彼女の髪の毛と瞳は『幻影』の術をかけている状態のようになっていた。茶色い髪と、緑の瞳。

 ルーシェルはぱちぱちと目を瞬かせた。


「終わっ……た?」


 そう漏らした自分の声で我に返ったのか、はっと髪の毛を確認する。それが終わったら、今度は瞳の色を確認するためか窓に近寄った。

 しばらく呆然としていたが、急にルーシェルはこちらへ走ってきた。


「ノギス! 生きてるよね!?」

「見ればわかるだろう」


 そっけなく答えると、ルーシェルの顔はぱあっと輝いた。嬉しそうに笑いながらも、緑の瞳からは涙があふれ出ている。

 『幻影』の術で少しは見慣れたものの、これからずっとこの色なのだと思うと不思議な感じがする。

 ルーシェルは先ほどと同じように、ノギスをぎゅっと抱きしめた。


「ノギス、ノギス、ノギス……!」


 苦しいし、照れくさい。

 ひどいとは思ったがルーシェルの顔を手で押しのけて、にやにやと笑うミオへ尋ねる。


「俺に、何をした?」

「あの魔法、普通は知らないわよねぇ。……『奪取』の魔法、よ。こう言えば、何となくアタシがしたことわかるでしょ?」


 『奪取』ということは、何かを奪い取ったのだろうか。

 よくわかっていない様子のノギスに、ミオは「だから」と言う。


「契約を奪い取ったの。ルーシェルからあんたを奪った、とも言えるわね」

「え!?」


 ルーシェルが大声を出して、ミオとノギスを交互に見た。


「そんな魔法があるって……。それじゃあ、契約なんていらなくなっちゃうよ」

「使い魔が死んだとき、必死で探したのよ。他人から使い魔を奪えば、アタシと同じ悲しみを味あわせることができるんじゃないかってね」


 ふんっと鼻を鳴らしながらミオは言う。あんまりな理由に、ルーシェルの顔が引き攣った。ノギスの顔も、傍目にはわからないだろうが引き攣っていると思う。


「ま、結局使わなかったわ。奪うんじゃなくて殺したほうがいいって思って。それもやめたけどね。……で、どう? ノギス。久しぶりの魔力は」


 言われて、はっと気付く。

 彼女に魔法をかけられたとき、懐かしい気がした。その正体が、魔力だったのだろう。ルーシェルからはずっともらっていなかった。

 思えば、腹も減っていないしだるさもない。

 以前であれば当たり前の状態だが、今のノギスにとっては絶好調とも言える状態だ。


「あっ……。ノ、ノギス。その、」

「あらルーシェル、やーっと気付いたのね? セリアも気付いてたのに、あんたはいつ気付くのかしらって思ってたのよ」


 ルーシェルの止まっていた涙が、また出てくる。ミオにしては冗談のつもりでいったのだろうが、彼女はそうは取らなかったのだろう。


「ずっと一緒にいたのに、気付かなくてごめん……。さっき気付いたばっかりで。セリアも、ミオだって気付いてたのに」

「気にするな。お前のことだから、気付いていないと思っていた」

「……ノギス、それはひどいわよ」


 ミオが苦笑いを浮かべた。

 悪気ない言葉だったが、ルーシェルを傷つける要素があったらしい。彼女は更に泣きそうになって、必死に涙をこらえていた。

 気にするな、に何か問題があるとは思えないから、きっと後の言葉に問題があったのだろう。


「あー……とりあえず、気にするな」


 しっぽで、ルーシェルの頭をぽんぽんと叩いてみる。


「ごめんね……」

「これ以上謝ったら、口を利かなくなるがいいか?」

「だ、駄目!」


 慌てて首を横に振って、ルーシェルは口を閉ざした。口は閉じていても、全身から「ごめん」という言葉が伝わってくる気がする。

 ノギスは大きくため息をついて、ルーシェルの頭をしっぽで強めに叩いた。


「わっ、何で?」

「気にするなと言ってるんだから、気にするな」


 ルーシェルはむっとした顔をして黙り込んだ。顔を見れば、何を考えているかなどすぐにわかった。


「ルーちゃんって、やっぱりわかりやすいわ。……それで、何がどうなってこんな展開に? 誰か……うーんと、一番説明してくれそうなミッちゃん、説明して」

「アタシ? めんどくさいから嫌よ。……する、説明するから、その顔はやめてちょうだい!」


 どんな顔をしているのかとセリアを見るが、いつもどおりの顔だ。見逃してしまって少し残念だ。

 嫌そうにミオはセリアに説明を始めた。

 それをちらりと見てから、ルーシェルを見る。どんな姿になっても、やはりルーシェルはルーシェルだな、と思った。


     * * *


 ミオとセリアをちらりと見たノギスは、ルーシェルを見てきた。

 気にするな、と言われても、そう簡単にできるはずがない。誰も気付いていなかったのならともかく、セリアもミオも気付いていたのだ。気にするなと言われてすぐにそうできるほど、ルーシェルの気持ちは軽くない。


(……でも、ノギスが生きててよかった……っ!)


 先ほどミオの言葉に傷ついたときとは違い、嬉しさからまた泣きそうになる。ノギスはそんなルーシェルの頭を、今度は優しくぽんぽんとしてくる。

 これは、叩かれているのだろうか。それとも、なでられているのだろうか。素直ではない彼のことだから、おそらく叩いているように見えてなでているのだろう。ノギスになでられることなど、滅多にあることではない。涙をこらえていたのに、彼のせいでこぼれてしまった。


 金色の光が広がったとき、もうノギスに会えなくなるのだと思うと悲しくてたまらなかった。魔女のままでいたいと言ったにも関わらず、ルーシェルを人間にしようとしたクロードとミオに、怒りがわいた。

 それなのに光が収まったときルーシェルがまずしたのは、髪の毛と瞳の色を確認することだった。それよりも先に、ノギスの生死を確認しなければならなかったのに。

 しかしノギスの「見ればわかるだろう」というそっけない答えを聞いて、自分への怒りなど吹き飛んだ。


「ノギス……ほんとに、本当に、生きててよかった!」

「しつこい」


 抱きつこうとすると、べしっとしっぽで叩かれた。

 うう、と叩かれた箇所を押さえると、ノギスは怒ったように顔を背ける。照れ隠しだというのがすぐにわかって、自然と笑みが浮かんだ。泣いたまま笑うのは、何だか変な感じだ。


「これからもずーっと一緒にいようね!」

「……無理だと思うぞ?」


 なぜ、という疑問が頭をよぎったが、すぐに理由がわかる。


「そっか。ノギスの主は、ミオになっちゃったもんね……」

「別にいいわよ、今まで通りで。アタシは別に使い魔が欲しかったわけじゃないもの」


 セリアへの説明が終わったのか、ミオが言う。

 今まで通りでいいのなら嬉しいが、本当にいいのだろうか。今まで通りだと、ノギスはルーシェルと一緒に暮らすことになる。ノギスはミオの使い魔なのに、と思ったのが伝わったのか、ミオはひらひらと手を振った。


「いいって言ってるでしょ。……ルーシェルが死んだとき、ノギスが悲しむだけよ」

「あ……」


 ノギスだけではない。

 ルーシェルは人間になったが、ミオは魔女のままなのだ。彼女を人間にしようにも、使い魔が死ぬかどうかわからないままでは何もできないだろう。ミオが『奪取』の魔法を使ったのは、ノギスが死なないようにするためなのだから。


(僕、だけ)


 自分だけ、人間になってしまっていいのだろうか。

 そんなことを考えているとセリアが近づいてきた。彼女は背伸びをすると、思い切りルーシェルの頬を引っ張った。


「ひあいよへいあ!」

「痛くしてるの。ノギス君とミッちゃんの気持ちを考えたら、落ち込んだりできないはずだわ」


 セリアはルーシェルの頬から手を離し、微笑んだ。


「ルーちゃんはもう、人間なの。人間になっちゃったんだから、余計なことは考えちゃ駄目。人間になっても、ルーちゃんはルーちゃんでしょう? 今まで通りのルーちゃんでいなきゃ」

「セリア……」


 ルーシェルはまたも泣きそうになった。今日は涙腺が緩みすぎではないだろうか。

 セリアは、ルーシェルより遥かに年下だ。その彼女に元気付けられるのは、情けない。今まで何度そう思ったことだろう。もう今更な気もする。


「泣きすぎよ、ルーちゃん」

「うぅ、セリアたちが悪いんだ……」

「人のせいにしないの」


 どちらが年上なのか、本当にわからなくなる。


「……でも、ディーちゃんがいないときにこんな大事なことをしちゃって、よかったのかしら」


 あ、とここにいる全員が声を漏らした。

 確かに、エデがいないときにこんなことをしては駄目だったかもしれない。明日来てこのことを知ったら、絶対に彼女は怒るだろう。主にクロードを。クロードも「あ」と言ったということは、何も彼女に話していないのだ。


「す、過ぎたことは仕方ないわよ。エデにはアタシが謝るわ」

「いや、俺が謝っておく。エデには話しておくべきだった」

「ううん、私が……何も知らなかったのに謝る必要あるかしら?」


 セリアは小さく首をかしげたものの「まあいいわ」とうなずく。

 しばらく三人は、誰がエデに謝るかを争っていた。そんな争いをするくらいなら、皆で謝ればいいと思うのだが。それではいけないのだろうか。

 結局関係のないセリアは謝らないで、ミオとクロードがエデに謝ることになった。


「……俺も謝ったほうがいいのか?」

「ノギスも? いや、どっちかって言うと被害者なんだし、謝らなくてもいいんじゃない?」


 そう言うと、ノギスは何かをもごもごと言った後、諦めたようにうなだれた。彼がこういう反応をするということは、本当は謝りたいのだろう。


「でも、謝りたいなら謝っておけば? すっきりするから」


 少し考えた後に、そう付け足す。謝るか謝らないかは、人に尋ねることではない。自分で考えることだ。


「……そう、だな」


 表情はあまり変わったように見えないが、きっとノギスは今ほっとした。

 何となくノギスをなでると、嫌がられる。


「なでるのは、あいつのほうが上手いな」

「あいつ?」


 彼の視線の先には、クロードとセリアと話しているミオ。

 なでるのが下手なのはノギスがなでさせてくれないからだ。ミオが上手いのは、前の使い魔がたくさんなでさせてくれたからだろう。

 そう理由を付けてみるが、ルーシェルは落ち込んだ。


「……ノギスのこともすぐに気付いたし、ミオのほうがノギスの主に相応しいのかもね」


 ノギスは慌てたように、首を横に振る。


「そう言う意味じゃない。その、えっと、だな」


 言いづらそうに、ノギスは顔を背けた。

 続く言葉を待っていると、ぽつりとつぶやく。


「主と認めるのは、昔も今も……これからも、ルーシェルだけだ」

「……ノギスー!」


 皆、今日はどれだけルーシェルを泣かせたいのだろうか。

 また叩かれるかもしれないと思いながら、彼に抱きつく。しかし、心配した衝撃は襲ってこなかった。照れたようにしながらも、ノギスはルーシェルの腕の中でじっとしている。

 腕からノギスの体温と鼓動が伝わってきて、ああ生きてるんだなと思う。







 それが、たまらなく嬉しかった。




 今回の話、どうでしたでしょうか? 少しどころじゃなくご都合展開に感じてしまったとしたら、申し訳ありません……。


 後日談は、あと一話で終わる予定です。また長い時間がかかるかもしれません。それでも待っててあげる、という方、気長にお待ちいただければ幸いです。

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