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魔女と巫女の物語  作者: 藤崎珠里
後日談
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後日談 雪の日[下]

 遅くなりました、すみません。[下]はあまり長くないと書いたのに、長めになってしまいました。多分登場人物が自己紹介を始めてしまったからですね。思えば、この小説も登場人物が多くなったものです。


 何だかまだまだ後日談が続きそうなのですが、もう完結済ではなく連載中にしたほうがいいんですかね……。

 空が茜色に染まり始めた。冬なので暗くなるのは早いから、エデの店に着く頃には真っ暗になっているだろう。一昨日とは違い、雪が降っていないのが残念だ。

 セリアはルーシェルと歩きながら、大きくため息をついた。真っ白な息が広がるのが面白く、何度もため息をついてしまう。

 いや、ため息をつく理由はそれだけではないのだが。

 ちらっと隣を歩くルーシェルと見ると、同じ瞬間にルーシェルがこちらを見る。『幻影』の術をかけたままなので、緑色の瞳を視線がぶつかった。


「……セ、セリア。やっぱり怒ってる?」


 びくびくしながら尋ねてくるルーシェルに、つい首をかしげてしまう。自分がいつ怒っていたというのだろうか。やっぱり、と言ったということは自分の態度に何か原因があったわけで。

 ああそうだ、とすぐに原因を思いつく。これからあの男に会うのが嫌で、ルーシェルに対しても口数が少なくなってしまっていたのだ。

 ルーシェルに怖がられているのはあの男のせいか。

 自分でも理不尽とはわかっていながら、あの男に対する嫌悪感はなくなりそうにない。だからこんなふうに、何でもかんでも彼のせいにしてしまうのだ。


「大丈夫よ、ルーちゃん。ルーちゃんには怒ってないから」

「僕には、って……。他の人には怒ってるってことだよね?」

「さあ、どうでしょう」


 そっけなく返事をしながらまたため息をつくと、空気が白く染まる。どうして寒い日は息が白くなるのか、よくわからない。いつか誰かが研究して、どういう理由なのか調べてくれたらいいな、と考えながらもちらちらと頭に浮かぶのはあの男の顔。

 あの男の顔が頭に浮かぶたびに苛ついてしまう。思い出すだけでこうなのに、実際に会ったらどれだけの嫌悪感を抱くのだろうか。

 どうもあの男のことを考えると、自分の性格が変わってしまうように思える。


「……嫌いなのに理由は必要ない、かあ」


 小さくつぶやくと、ルーシェルが「ん?」とセリアのほうを向く。苦笑しながら首を横に振ると、多少はあの男に対する苛立ちがなくなってきた。

 嫌いなのに理由はない。自分で言っておきながら、理由がないなんて有り得ないと思う。

 セリアは両親に嫌われてきた。それは、セリアが生き物の心を読めたからで。

 その力がなかったら、両親は自分を嫌わなかっただろう。それどころか、愛情を持って接してくれたに違いない。

 両親に好かれたい。そう思っていたのは、いつだったか。ずっと前のことだった気もするし、つい最近のことだった気もする。どちらにしろ、あの人たちに好かれようと努力していた事実はあるのだ。


「はあ……」


 そろそろこの遊びにも飽きてきた。

 エデの店までの暇つぶしに、何をやろうか。ルーシェルとはあの男のせいで気まずい雰囲気だから、会話が弾みにくいだろう。かといって、それ以外にやることもない。龍神さまはもうとっくに集合場所にいるだろうし、ノエルとアデライードも同じくだ。メリアとは一緒に行く約束をしていないため、一昨日積もったままの真っ白な雪に足跡を残していくのはセリアとルーシェルのみ。可哀想だが、ノギスは今回も留守番を任してきてしまった。日に日に彼の扱いがひどくなっている気はしても、それをセリアは変えようとはしなかった。


(ノギス君もいないんだから、ルーちゃんと話すしかないんだけど……)


 一昨日の夜から、ルーシェルは異様にびくびくと怯えているのだ。怯えるルーシェルも可愛いのだが、そんなに怯えられると少しへこんでしまう。そこまで自分は怖いのだろうか。確かにあの男のことを考えると、ルーシェルが怯えるような感情を抱いてしまうのは認めよう。だが、それを表面に出している気はないのだ。


「人が多くなってきたね……」


 ルーシェルのつぶやきに、きょろきょろと辺りを見る。セリアたちが住んでいるのは町のはずれのほうだから、町の中心に行くに従って人が多くなるのは当たり前だ。

 だが今日は、この間……一週間ほど前にセリアが市場に行ったときよりも、さらに人が多かった。一昨日ルーシェルは市場に人がたくさんいた、と話していたが、少し驚いているところを見ると一昨日よりも人が多いのだろう。

 エデのお店は貸切にしてくれているようだが、こんなに人が多い書き入れ時に店を閉めてしまっていいのだろうか。恋人が愛を誓い合う行事なのなら、飲食店には恋人たちがたくさん来るだろう。稼げるときに稼がなくて、店を経営していけるのだろうか。


(私が何か言えるわけでもないけどね)


 他人が口出しする話ではない。

 自分でそう考えて、少しだけズキッと胸が痛くなった。

 他人。そう、セリアとエデは他人だ。セリアとルーシェルだって。友人であっても、他人には違いないのだ。セリアにとって他人でないのは、あの人たちだけ。


(……何で今日はあの人たちのことをこんなに思い出すんだろう)


 その理由はきっと、自分はわかっている。

 聖誕祭という行事は、アスメリ村にもあった。セリアが知ったのは、確か五歳のときだった。龍神さまが「他の奴らは毎年聖誕祭を祝っているというのに、今年も我が巫女は祝わないのか?」と訊いてきたから。そのときまで、聖誕祭という言葉さえ知らなかった。

 一緒に、祝いたかった。親しい人同士で祝うこともあるのだと訊いたとき。

 頭に浮かんだのは、両親の顔。


 一緒に祝ってくれないのだろうな、とわかってはいながらも、その年の聖誕祭の時期になったら期待して。両親が、あの人たちが、一緒に祝おうと誘ってくれることを。有り得ない。そのことがわかっていてなお、セリアは両親と祝いたいと思った。

 だがその淡い期待が呆気なく打ち砕かれても、そこまで悲しくはなかった。

 ああやっぱり。

 そんな諦めの心。五歳でここまで諦めることに慣れてしまっていたのは、自分だけではないだろうか。もうその頃から、両親から愛情を注いでもらうことを諦めていた。


(それなのに、どうして今は)


 こんなに欲張りになってしまったのだろうか。

 ルーシェルと一緒にいたい。ノギスやエデ、クロード……皆と、一緒にいたい。聖誕祭を祝いたい。誕生日も祝いたい。ずっとずっと一緒にいて――笑って、泣いて、時には喧嘩もして。

 そんな普通の、幸せな生活を望む。

 それがどんなに欲張りなことか、セリアは理解している。普通なんてものは存在しなくて、世の中の人が普通だと思っている生活は、とても幸せな生活で。

 その幸せな生活を今送っているのだと思ったら、自然と笑みがこぼれた。あの男、アーサーのことを考えてもそこまで不快に感じないほど、セリアは何だか嬉しくなった。

 隣で、ルーシェルが安堵の息をつくのがわかる。息が真っ白に広がったから。セリアが微笑んだことに気付いて、安心したのだろう。


「……セリア、人がまた多くなってきたから、はぐれないように手を繋ごうか」

「そうね」


 にっこりと笑って、差し出されたルーシェルの手を握る。そういえば一昨日の雪合戦で霜焼けになってしまったと言っていたが、平気なのだろうか。ノエルにもらった薬をつけていたが、悪いが彼女の薬は危ない気がするのだ。今度誰かに、役に立つ薬の作り方でも教えてもらおうか。

 ルーシェルの手の温もりで何だか心も温かくなってきた。ルーシェルにばれないようそうっと横を向いて、目に浮かんだそれを繋いでいないほうの手で拭う。

 嬉しくて泣くのは、初めてだった。


     * * *


 ルーシェルたちが店に着くと、もう皆集まっていた。ノエルの髪と瞳、アデライードの髪の色も変わっていて、何だか新鮮に感じた。一人どこかで見たようで知らない者が混ざっているが、あの人がシルヴァだろう。メリアの服はいつも市場で売っているときとは違っていて、よそ行き用なのだということがわかる。アーサーとアンソニーの姿もあって、彼らを見たセリアの機嫌が急に悪くなった。

 それを気にしないようにルーシェルは店の中をじっくりを見た。ルーシェルの家の窓より少し大きめの窓の外は、もう真っ暗になっていた。


 エデの店の中には、なぜか木が飾ってあった。天辺には星型の飾りがあり、葉の部分にも綿がふわふわとついていて、赤や青などの玉もぶらさがっている。他にも靴下や人形がいくつもあり、髪飾りに使うような細長い布も結んであった。

 全部合わせたらいくらになるのだろう、とルーシェルは少し気が遠くなった。星型の飾りは何でできているかわからないが見るからに高いし、綿なんて一般庶民が買えないほどの高級品だ。

 そういえばセリアの誕生日の贈り物を買うとき、ぽんっと金貨一枚渡された。もしかして、エデはお金持ちなのだろうか。


「あ、やっと来た!」


 エデが入ってきたルーシェルたちに気付き、声を弾ませた。

 不思議そうにルーシェルが木を見ているのがわかったのか、笑顔で説明する。


「何でかわかんないけど、聖誕祭のときってこういう木を飾るんだ。まあでも、全部の家で木を飾ってるわけじゃないかな?」


 全部の家がこんな木を飾れるほど、裕福なわけがないだろう。

 ルーシェルはおそるおそる木に近づいて、綿に触ってみた。そしてがっくりする。思い描いていた感触とは少し違ったのだ。もっとふわふわしていると思っていたのに、この綿はふわふわしていながらごわごわだった。

 エデがおそらくシルヴァであるだろう人物の腕を掴み、ルーシェルたちの前に来させた。


「ほらシルヴァ、ルーシェルとセリアだよ。さ、挨拶して」

「……シルヴァだ。こいつがいつも世話になってるな」


 兄弟だからか、どことなく雰囲気がクロードに似ている。無愛想にそれだけ言ってシルヴァは黙った。

 この無愛想さ、つい最近同じような人に会った気がするのだが。

 どこで会ったか思い出そうと、失礼にならない程度にシルヴァの顔をじっと見る。クロードに似ているから会った気がするのかもしれないが、それは違うと思うのだ。絶対にどこかで会っているはず……。


「あっ」


 そこでようやく思い出す。


「一昨日ぶつかってきた人!」

「……あ」


 そうだった、つい最近会ったような気がしたのはそのせいだ。

 シルヴァは一昨日メリアの店で指輪を買っていた、あの男だった。どこかで見たような人だと思ったのはクロードに似ていたからなのだろう。


「一昨日はすまなかった。急いでいたものでな」


 謝罪の言葉が「悪い」の一言だったのを気にしていたのだろうか。気まずそうに、シルヴァは頭を下げた。

 エデが目を丸くして、ルーシェルとシルヴァを交互に見る。


「え? えっと……つまりは一昨日、シルヴァがルーシェルにぶつかって。もう知り合いだったってことかな?」

「知り合いっていうのは違うと思うけど。だって僕はこの人がクロードのお兄ちゃんだってことも、『シルヴァ』って名前だってことも今日知ったんだよ?」


 それは知り合いだと言えないだろう。知り合いというのは互いに相手を知っているということで、ただすれ違った人が知り合いになるわけがない。それだけで知り合いになるのなら、ルーシェルはステルダの住人ほとんどと知り合いになってしまう。


「どこら辺でぶつかったのかな?」


 答えようと口を開くと、メリアに目で制された。

 不思議に思いながら、ルーシェルはエデに首を振った。


「ごめん、どこかは忘れちゃった……」

「そっか」


 軽くそう言って、シルヴァに嬉しそうに何かを話しかけるエデ。恋する乙女、の言葉がぴったりの顔をしていた。目は熱に浮かされたようにとろんとしているように見えるし、頬も赤く染まっている。シルヴァのことを好きだということを教えてもらっていなかったとしても、明らかにシルヴァに好意を寄せているとわかってしまう。

 そういえば、シルヴァはエデの気持ちに気付いているのだろうか。

 あまり表情の変化がわからないシルヴァを見ていると、気付いているのか気付いていないのかわからなくなった。


「……ルーシェルっ」


 メリアの小さな声が聞こえる。声のほうを向くと、メリアがエデのことを気にしながら手招きをしていた。

 何となくそろそろと移動して、メリアの近くに行く。


「……何ですか?」


 大きな声を出してはいけない気がして、ルーシェルは小声で尋ねた。こちらとは違い、エデははしゃいだような声を上げて話している。

 エデをちらちらと見ながら、メリアは言いづらそうに答えた。


「シルヴァが指輪を買ったのは……クリスラっていう女の子のためでね。エデにそれは知られたくないんだよ」

「……なるほど」


 エデはシルヴァが好きで、シルヴァはクリスラという子が好きなのだろう。だとしたら、シルヴァはエデの気持ちに気付いていないに違いない。

 ルーシェルは複雑な気持ちで、シルヴァとエデを見つめた。エデの恋が成就することは、おそらくないのだろう。


(あれ? でも何で、シルヴァさんはそのクリスラって子と一緒に祝わないんだろう?)


 メリアなら知っているのだろうか。

 ルーシェルが訊こうとしたとき、エデが皆に言った。


「じゃっ、皆集まったことだしそろそろお祝い初めよっか!」


 訊くのは後でいいか、とルーシェルは椅子に座った。右隣にはセリアが、アーサーを睨みながら座る。エデが机に料理を並べ始めた。


「並べてる間に、一人ずつ自己紹介でもしたらどうかな?」


 この場にいるのは十一人。ルーシェルは全員知っているが、一応自己紹介をしておいたほうがいいのだろう。

 誰からするのだろうか、と待っていると、なぜか全員の視線がルーシェルに集まった。確かにルーシェルは全員を知っているのだからやりやすいのだろうが、それならセリアやクロード、エデだって同じだ。自分じゃなくてもいいだろうに。

 少し不満に思いながらも、ルーシェルは立ち上がった。


「僕はルーシェル。えっと……何を言ったらいいんだろう? とりあえずよろしくね」

「じゃあ次は私ね。私はセリアです。親しい人や親しくしたい人には愛称をつけます。……シルヴァさん、シラさんって呼んでいいですか?」


 シルヴァがうなずくのを見てから、セリアは座る。先に立ち上がっていた自分が後に座るのはどうしてだろう、と思いながらルーシェルは座った。

 セリアはアーサーのことは愛称をつけずに『アーサー』と呼んでいる。それは、アーサーと親しくないという遠回しの拒絶なのだろうか。遠回しではないかもしれないが。

 そしてノギスのことも『ノギス君』、メリアのことも『メリアさん』。この一匹と一人とは親しくなりたいと思っていないわけではないと思うのだが……どうなのだろうか?

 ルーシェルが考えている間に、セリアの右隣に座っていたノエルが立ち上がる。どうやらルーシェルからだんだんと右に自己紹介をしていくらしい。


「あたしはノエル。ルーシェルの友達よ。よろしくしてくれなくて構わないわ」


 つんけんとした態度で自己紹介を終えるノエルを、苦笑いして見る。セリアとエデには「よろしくお願いするわ」と言ったくせに、それ以外の者には「よろしくしてくれなくて構わないわ」なんて。ノエルが素直になれる日は、いつ頃なのだろうか。

 次の自己紹介の順番はアデライードだった。


「私はアデライードだ。ノエルの……まあ、保護者のようなものだな。素直じゃない子だが、よろしく頼む」

「アデライードさまは保護者じゃないでしょう。貴女が保護者だったら、私はどれだけ、だるだるでゆるゆるでのんべんだらりなんですか」


 アデライードは自分を睨むノエルを見て、苦笑して椅子に座る。

 ノエルは、アデライードのことを尊敬しているのではないのだろうか。尊敬している人……魔女に、「だるだるでゆるゆるでのんべんだらり」と言うことはないと思う。だがアデライードの前ではノエルの一人称が『あたし』から『私』に変わるし、一体ノエルはアデライードのことをどう思っているのだろうか。

 幼女の姿の龍神が立ち上がった。


「我は……ルージンだ。アデライードがノエルの保護者ならば、我は我がみ……じゃなく、セリアの保護者のようなものだ。こういう宴のようなときにしか会わんとは思うが、よろしく頼むぞ」


 流石にメリアやアーサーたちの前では龍神と名乗らないらしい。龍神をなまらせてルージンにしたのだろう。

 龍神のことを知らない者たちは、怪訝な表情で龍神を見ている。それはそうだろう、とルーシェルは苦笑いした。こんな幼女の姿をしているのに、龍神よりも年上に見えるセリアの保護者だと言ってのけたのだから。知っていなければ、この表情をして当たり前だ。

 自己紹介の順番が回ってきて、戸惑いながらもアーサーは口を開いた。アンソニーが膝に座っているためか、立ち上がらず椅子に座ったままだ。


「えっと……僕はアーサーです。こっちは弟のアンソニーです」

「よろしくおねがいします!」


 セリアを視界に入れないようにして、アーサーとアンソニーを見る。あのとき助けなければアンソニーは今ここにいなかったかもしれないと思うと、不思議な気持ちになった。

 兄であるアーサーの膝に乗って、大きな声で「よろしくおねがいします!」と言うアントニーは可愛かった。注目されているのが嬉しいのか、にこにこと笑っている。その顔を見ていると、ルーシェルも自然と笑顔になった。隣から不穏な気配を感じるが、きっと気のせいだろう。そう思いたい。


「じゃあ、次は私の番だね。市場で主に指輪を売ってる、メリアだ。たまに他のものも売っているから、ちょくちょく店を覗きにきてくれたら嬉しいよ」


 ちゃっかりと店の宣伝をしたメリア。指輪以外のものを売っているとは知らなかったため、ルーシェルは素直にちょくちょく店を覗きに行こうと思った。もっとも、そんなことを言われずとも暇さえあればメリアの店へは行くのだが。

 その次の順番のクロードが、嫌そうに立ち上がる。


「クロードだ。よろしく頼む」


 やはり、兄弟は似ているものらしい。おそらく、シルヴァも彼と同じような自己紹介をするのだろう。


「クロードの兄の、シルヴァだ。よろしく頼む」


 予想通り、シルヴァはクロードにそっくりな自己紹介をした。

 間髪を入れず、エデが頬を膨らませてシルヴァに抗議する。


「何さその二人揃っての自己紹介は! つまんない、つまんなすぎるよ! ちょっとは工夫したらどうかな!?」


 そんなことを言われても、クロードとシルヴァは困るだけだろう。

 エデの言葉にクロードはむすっとし、シルヴァはため息をついてエデに言った。


「そうは言われても、俺の性格じゃ工夫なんてできないぞ」

「そこを何とかするのがシルヴァの仕事! さあどうぞ、「クロードの兄のシルヴァだぴょん」とか何とか面白いことをやってみてよ」


 クロードの兄のシルヴァだぴょん。

 家の中に沈黙が流れる。

 ルーシェルは、シルヴァがそんなことを言っているところを想像してみた。が、挫折。全く想像できない。代わりに頭の中でクロードに言わせてみる。ついでに兎耳も頭に装着。


『クロードだぴょん』


 意外と似合う。

 似合う、けれども。


 ルーシェルは思わず噴き出してしまった。兎耳をつけたクロード。想像するだけで大爆笑だ。

 止まらなくなって、「あはははは」と声を上げて笑ってしまう。

 ルーシェルにつられてか、周りの皆もだんだんと笑っていく。ついにはクロードとシルヴァ以外の皆が笑い出してしまった。クロードが笑わなかったのは、もしかしたらルーシェルが頭の中で「クロードだぴょん」と言わせていることを、うっすらとわかったからなのかもしれない。

 お腹が痛くなるまでひとしきり笑った後、ルーシェルはシルヴァに希望した。


「だぴょん……だぴょんっ……!! シルヴァさん、ぜひ言ってください!」

「断る。……さっさと料理を食べよう。冷めるぞ」


 そこでようやく、とっくにエデによって料理が並べられていたことに気付く。龍神だけが気付いていたようで、さっさと一人で食べ始めてしまっていた。

 まだ笑っている顔で、エデが言った。


「シルヴァの言う通り、早く食べよっか」


 それを合図に、皆は料理を口に運び始める。

 時々「ぷっ」と誰かが噴き出すと、次々と笑いが伝染してシルヴァが止めるまで笑い声は続いた。

 にぎやかな家の中を見ながら、ルーシェルは感謝した。


(誰かわからないけれど、ありがとう。君の誕生日を祝う、っておかげで、こんなに楽しい日を過ごさせてもらって)


 それから同時に、「おめでとう」と小さく言う。皆すっかりと聖誕祭が『誰かの誕生日』だということを忘れているようだから、ルーシェルだけは言ってあげたかったのだ。







 窓の外では、また雪がひらひらと降り出していた。



 だぴょん。何か適当に思いついたのを書いたら、ルーシェルたちが爆笑しました。そこまで面白くはないような……。

 そして何気に、エデだけは自己紹介していないです。

 ……十人の自己紹介書くだけで大変でした。


 可哀想なのがノギス君。名前しか登場していません。いつか番外編でノギスが活躍する話を書いてあげたい……。


 なぜか書いているうちに「これって伏線かな?」と思うものを張ってしまったので、次も後日談になりそうです。

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