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魔女と巫女の物語  作者: 藤崎珠里
後日談
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後日談 指輪の意味

 他の話を書いている合間に、後日談を書きました。……新しく二つ書き始めるなんて、やめればよかった。いえ、まだ連載してはいないんですが……。

 とりあえず、しばらく書いていなかったのでこの話っぽくなくなっているかもしれません。

 その日ルーシェルは、そわそわして眠っていられなかった。

 まだ薄暗い洞窟をぼんやりと見渡す。この洞窟は昼間は明るいが、朝はまだ薄暗いのだ。


(……誕生日、か)


 クロードの話では、昨日あの三人は贈り物を買いにいったらしい。そんなことを言って彼女たちに怒られないのかと思ったが、クロードはどうせ言わなくてもわかっているだろうと言った。

 セリアの誕生日を祝った日の話で、自分の誕生日に何か用意してくれることはわかっていた。だが、実際にそうだと言われてしまうと駄目だ。いつもならこの時間にはまだ寝ているのに、目が冴えてしまっている。

 ルーシェルはため息をついて、自分の使い魔に声をかけようとした。


「あれ……ノギス?」


 洞窟内で寝ているはずの、ノギス姿が見えなかった。しかも、セリアもいない。こんな朝早くどこへ行ったのだろうか。ルーシェルの眠りは浅かった。少し誰かが動いただけで目が覚めそうなものなのに、なぜ二人(?)がいなくなったことに気付かなかったのだろう。


 こんなことができるのはアデライードだろうか。もしかして誕生日を祝うための準備をしている、とか。彼女だったら、ルーシェルを起こさずにノギスを連れて行くことも可能だ。

 そう考えると、またそわそわしてしまう。どんな贈り物を用意してくれるんだろう、エデは何の料理を作ってくれるんだろう、と。


(きっと、クロードもお祝いしてくれるよね)


 セリアには何も用意していなかったが、自分にはどうだろう。


(……いや、別に何か用意してほしいとは思ってないけど)


 ただ祝ってくれるだけでも十分だ。カリマが死んでからは、誰も祝ってくれなかった。そもそも、自分でも誕生日の存在を忘れていたのだから。だからノエルにも、誕生日を教えていなかったのだろう。

 祝ってくれるだけで十分、と思いながらも、本当は何か形として残るものがほしかった。

 ルーシェルの寿命と、人間の寿命。セリアたちが死んでも、ルーシェルとノギスは生き続けるのだ。知り合いは、ノエルとアデライードだけになってしまう。


(思い出だけだと、いつか忘れてしまうかもしれない。僕がもっと、記憶力がよかったらな……)


 それだったら、ただ一緒にいてくれるだけでいいのに。セリアたちが死んだ後、残るのは思い出だけ。その思い出が薄れてしまうのは、絶対に嫌だ。

 セリアとエデ、ノエルは贈り物をくれる。だが、クロードは? くれるだろうか。


(……くれなかったら、いじけてやるもん)


 先ほどと考えが変わっていることに気付きはしても、もとの考えに戻そうとは思わなかった。クロード()()には、絶対にもらいたい。

 洞窟の外に出ようと歩き始めたルーシェルは、ふと動きを止めた。


(クロードだけには?)


 セリアたちの贈り物はいらないのだろうか。

 いや、そんなはずはない。彼女たちの贈り物を楽しみにしているから、こうしていつもより早く起きてしまったのだ。

 だとしたら、なぜ自分はクロード()()にはと考えたのだろう。そんなことを考えるなんて、クロード以外にはもらわなくともいいと考えているようだ。


(む、何だろう。今ここにセリアとかエデがいたら、絶対にやにやされる気がする)


 そういう場合は、ルーシェルがいくら考えても理由はわからないのだ。

 考えても無駄だと首を振って、ルーシェルは歩を進めた。

 こんなに早く起きたことはなかったが、外の空気は気持ちがよかった。たまにはこういうのも、悪くないだろう。


「ルーシェル」

「ん、何クロード」


 洞窟の中からの聞きなれた声に、思わず普通に返事をして振り返る。振り返った後に、これはどう考えてもおかしいだろうと気が付いた。先ほどまで、確かに洞窟には自分しかいなかったのに。それに、あのセリアの誕生日にしかルーシェルの名を呼ばなかったのに、こんなにあっさりと呼んでしまうなんて。


「……ク、クロードが何でここにいるの!?」


 ルーシェルの声が上ずったのを、おそらく彼は気付いていないだろう。

 思った通り、尋ねられたことにただ困惑しているだけのようだった。


「なぜ、と訊かれても、『移動』の術を使ったとしかいいようがないのだが。今日はお前の誕生日だから、と楽しみにしていたエデがここにいるかと思ってな。今日の朝、自分の家に来いと言ったくせに、エデがどこにもいないのだ」


 『お前』と言われたことに若干落ち込む。


「……ノギスとセリアも、朝起きたときにいなくなってたんだ」


 きっと何か関係している、と言うとクロードは納得したようにうなずいた。だが、うなずいた直後に首をかしげる。


「お前の誕生日を祝う準備をするのなら、俺も呼ぶのではないか?」

「あ、そうだね。……何でだろう。クロードは忘れられてた、とかかな」

「……その可能性もあるな」


 自分で言っておきながら流石にそれはないだろうと思っていたのに、クロードが肯定したのに驚く。

 そこまでクロードへの扱いはひどかっただろうか。ノギスもいるのなら、忘れられているということはないはずだ。あの白猫はしっかりしているから。


「いや、忘れられてた可能性はないと思うんだけど……? 何か理由があるんだよ、きっと」


 絶対と言い切れないのが悲しい。ノギスがしっかりとしてるとは言え、その可能性は零ではないのだ。


「と、とりあえず、待ってようよ! 洞窟で待ってれば、いつかノエルかアデライードさまが迎えに来てくれる、はず」


 そういえば、ノエルやアデライードの『移動』の魔法の対象は自分だけではないのだろうか。アデライードだったら、魔法を改良しているとは思うが。『探知』の魔法と『移動』の魔法をあわせてしまうような魔女なのだから。

 それだったら心配しないでいい、と安心する。


「す、座って待ってようか」

「ああ、そうだな」


 アデライードはいつ頃迎えにきてくれるのだろうか。ルーシェルは洞窟の中に戻り、椅子に座った。


「…………」


 この気まずい沈黙をどうにかしてほしい。しかも、どうやらこの沈黙を気まずいと思っているのはこちらだけらしい。クロードはルーシェルのように緊張せずに、ただ椅子に座ってじっとしている。

 何を話そう。

 必死に頭をめぐらせる。だが、クロードとの共通の話題はない。話せることといえば、今日がルーシェルの誕生日だということだけだ。


(でも……。クロードは僕への贈り物買った? なんて訊けないし)


 そんなことを言ったら、ルーシェルがクロードからの贈り物を期待しているようではないか。実際、期待しているのだが。

 アデライードが迎えに来てくれるまで、ルーシェルは沈黙に耐えたのだった。


     * * *


 ルーシェルとクロードを()で待ちながら、少しだけセリアは腹を立てていた。


(まさか、クロ君の誕生日が昨日だったなんて)


 昨日買い物に行ったとき、エデが思い出さなかったらクロードの誕生日を祝わないところだった。セリアがルーシェルの誕生日を訊いたときに、教えてくれたらよかったのに。そんなことを教えるクロードはクロードではないが、そう思うのはやめられない。

 幼馴染なのにクロードの誕生日を忘れていたエデもエデだ。彼女が思い出してくれたおかげで、満足のいく贈り物が買えたのだが。


「……ふふっ」


 思わず口から笑い声が漏れてしまう。あの二人は、一体どんな反応をするだろうか。ルーシェルはこの意味がわからないと思うが、クロードはわかるだろう。ルーシェルは無邪気にそれを受け取り、クロードは戸惑いながら受け取りそうだ。もしかしたら、少し怒りながら。それでも受け取ってくれるのが彼だ、と思う。


「何笑ってんのよ、気持ち悪いわよ?」

「ごめんなさい、ちょっと用意した贈り物のこと思い出して」


 殺気。


 命の危険を感じて体を仰け反ると、どこから出したのか今までセリアの首があった場所をナイフが通過していった。


「ちっ。はずしたか」


 今、ノエルは本気でセリアを殺そうとしていた。

 ノエルの舌打ちに青ざめながら、近くにいた龍神さまの手を握った。子供は体温が高いから、龍神さまの手を握るとほっとした。


「いいと思うんだけどなぁ」


 エデが残念そうにつぶやく。

 セリアがあの贈り物を買ったとき、エデとノエルは正反対の反応を見せた。エデは目を輝かせてうなずき、ノエルは殺気を出して首を振ったのだ。

 つぶやきが聞こえたのか、ノエルは顔をしかめた。


「よくないに決まってるじゃない。言ってなかったかしら? 私はルーシェルが今も大好きなの」

「そんなの知ってるわ。ね、ノギス君」

「……俺を巻き込むな」


 セリアはもともと知っていたが、ここにつれてこられることを知らなかったノギスは機嫌が悪い。ノギスも主に似てよく寝るのだ。それなのにまだ日が昇る前に起こされ、つれてこられたら機嫌が悪くなって当然だ。

 それだけが理由ではないが……。


「白猫。ノエルとセリア様にその口調は何なのだ」


 黒い狼。以前、ルーシェルと話したそれがここにいる。どうやらこの狼は使い魔なのに白いノギスを、忌み嫌っているらしい。だからノギスもこの狼が苦手なのだろう。名前はアベルと言っただろうか。自分より上の存在には丁寧に接するが、ノギスのようなものにはこういう態度を取るのだ、とノエルが苦い顔をして説明してくれた。

 ノギスはアベルをちらっと見て、顔を背けた。何を言っても無駄だと、理解しているのだろう。うむうむ、とセリアの横でなぜか龍神さまがうなずいている。

 その時、城の扉が勢いよく開きアデライードが入ってきた。


「主役の二人の登場だ!」


     * * *


 ぽつんと建っている、とは嘘でも言えないような草原に建つ城。

 ルーシェルとクロードがつれてこられた所は、王族形無しの城だった。いや、実際にどこかの城を見たわけではないが。

 口をぽかんと開けて、その城を見上げてしまう。


(何これ……)


 城だ。それはわかっているのだが。これで門がないのだから、何となく違和感がある。

 横で微笑んでいるアデライードを見る限り、彼女が魔法で創ったものだろう。こんな大きなものを創るのは、いくら魔法でも大変だ。莫大(ばくだい)な魔力が必要になる。城を創るなんてそんなことをする魔女は、アデライード以外にどのくらいいるだろうか。


「……アデライードさま。一応訊きますけど、僕とクロードの誕生日のため、なんですよね?」


 クロードの誕生日が昨日だったと知ったのは、つい先ほどだ。本人も忘れていたようで、アデライードが言ったときしばらく首をかしげていた。


「そうだが?」

「そうだが、って……。どうしてこんなものを創る必要があるんですか?」


 大体は想像がつくが。


「楽しいから以外に、何か理由があるか?」

「お願いだから、きょとんとした顔で言わないでください」

「なぜだ?」


 ルーシェルはがっくりと肩を落とした。この魔女は本当に、突拍子もないことをやる。ノエルは時々変になると言っていたが、いつもの間違えではないだろうか。会ってから今まで、ずっと変な気がするのはルーシェルだけか?


「ま、とりあえず入るぞ。せっかく日が昇る前から準備したんだ」


 アデライードはそう言って、城の扉を勢いよく開ける。


「主役の二人の登場だ!」

(主役って……何か恥ずかしいんだけどな)


 城は、中もすごかった。何がすごいのか言えないくらいすごい。外は立派でも中は……というのを少し期待していたのに。

 長い食卓には、真っ白な布地がかけてある。一瞬ノギスへの嫌味かと思ってしまった。

 その上には、花と料理。この間食べたエデの料理を思い出して、出てきたよだれを手でふく。

 誰かに気付かれなかったかと心配になるルーシェルに、龍神とノギス以外の皆が駆け寄ってきた。


「ルーちゃん、誕生日おめでとう!」

「おめでとう、ルーシェル!」

「…………おめでとう」

「おめでとうございます、ルーシェル様」


 少し遅れたのはノエルだ。セリアを睨んでいるが、なぜだろうか。

 その横に黒い狼がいるのを見て、ルーシェルは懐かしさがこみ上げてきた。アベルと会ったのは何年ぶりだろうか。昔何度か会っただけで、ノエルは滅多にアベルと会わせてくれなかったのだ。


 アデライードには迎えに来てもらった時「おめでとう」と言われたため、残りはノギスとクロード。ノギスは期待できそうにないから、クロードの顔をこっそり見る。


(あれ? そういえば、これはクロードのためでもあるんだよね?)


 なぜルーシェルにだけおめでとうと言って、クロードには言わないのだろう。これが扱いの差なのだろうか。


「クロード、誕生日おめでとう」


 可哀想になってそう言うと、クロードがため息をつく。何なのだろう、そのため息は。

 皆クロードのことは無視していた。無視ではないのかもしれないが……。クロードが本当に忘れられていたのではないかと、疑ってしまう。忘れていたのを誤魔化すために、クロードの誕生日を祝うことにしたのではないか、と。


「私が贈り物を渡すのは最後ね」


 セリアが一歩下がって言う。理由を尋ねる前に、エデから何かをもらった。小さな瓶に、液体が入っている。怪しい薬かとも思ったが、そんなものを贈り物にはしないだろう。


「えっと……これって何?」

「香水だよ。使い方は後で教えるとして……次、ノエル」


 ノエルが持っているものは、意外なものだった。自分でもそう思っているのか、心なしか顔が赤くなっている。


「はい」


 ぶっきらぼうに渡されたそれは、可愛い猫のぬいぐるみ。白猫なのは、ノギスのことを意識してのことだろう。ふわふわな触り心地が気持ちいい。これは高かったのではないだろうか。


「ありがとう、二人とも」


 笑顔で言うと、エデは満足そうな顔で笑った。ノエルは、ぬいぐるみで喜んでくれるのかずっと気にしていたに違いない。ルーシェルがお礼を言ったのを聞いて、ぱあっと顔を明るくしていた。慌ててそれを隠そうとしているのが微笑ましい。

 次にセリアが、にやにやと笑みを浮かべながら、先ほど下がった分一歩前に出る。嫌な予感がして、ルーシェルはつい身構えてしまった。


「これは、ルーちゃんとクロ君二人に」


 渡された箱を、パカッと開けてみる。クロードも隣で箱をもらっている。

 中に入っていたのは、指輪。クロードの箱には何が入っているのだろう、と見てみるとおそろいの指輪だった。


「交換してから、左手の薬指につけてね?」


 にっこり笑うセリア。

 左手の薬指につける、おそろいの指輪。その意味がわからないほど、ルーシェルは馬鹿ではない。小さい頃、カリマがつけていた()()指輪が羨ましかった。


「交換すればいいのか?」

「……クロードって、やっぱり馬鹿だったんだね」


 素直に交換しようとするクロードを、冷たい目で見る。


(というか、どうして結婚指輪……まあ、結婚なんてしてないけど? セリアが意味を知らずにそう言ってるってことは……)


 絶対に有り得ない。それは、皆の顔を見ればわかる。この指輪を見る、ノエルの殺気がこわい。

 まさか、クロードがこの指輪の意味がわからないとは。彼が真面目なせいなのか、馬鹿なせいなのか。

 セリアがこちらを見て目を瞬かせる。


「え? この反応ってことは……私が考えてたのと逆?」

「へぇ。……ナニヲカンガエテイタノカナ?」


 笑顔で訊くと、セリアは青ざめた。


「ル、ルーちゃんがさっきのノエちゃんより怖い! こんなの予想してなかった!」

「怖い? まあ、怒ってるから怖くて当然じゃない?」


 こんな騙されるようなことは嫌いだ。からかわれるのより。

 結婚指輪を贈り物にするということは、覚悟はできているのだろうか。

 青い顔をしているセリアに近づいて、微笑む。


「セリア、覚悟はできてるよね?」

「へっ――痛っ!」


 眉間をおさえて涙ぐむセリアに、すこしすっとした。


(ふーんだ、僕の中指の威力思い知ったか)


 昔は、カリマによくやられたものだ。実際にやったのは今回が初めてだったが、見よう見まねでも結構な威力があるらしい。


「クロード、僕と指輪は交換しないでね。セリアとエデの思う壺だから」


 くるりと振り返って、クロードに言う。もし必死な形相になっていたとしても、彼には気付かれないから安心だ。

 ぎこちなくうなずくクロードに、ほうっとため息をついた。


「……さ、エデが作ってくれた料理食べよっか」

「うむ、その言葉を待っていたのだっ!」


 見えないくらいの速さで、龍神が椅子に座りさっそく料理を口に運ぶ。

 ルーシェルも椅子に座ってから、ちらりとまだうめいているセリアを横目に見る。そこまで強くやった気はないのだが。

 ノエルがそのセリアを見て、満足げにしているのはなぜだろうか。


「うぅ……」


 涙にうるんだ目で、よろけながら椅子へと歩くセリアに少しやりすぎたか、と思う。


「ごめんね、セリア。ちょっとやりすぎちゃった?」

「ちょっとどころじゃないわ! すごく痛い……」


 自業自得だ。

 ルーシェルがそう思ったのがわかったのだろう、セリアがキッと睨んでくる。


「まさかこういう展開になるとは思わなかったの。予想では、クロ君が知っててルーちゃんが知らないと思ってた。……痛い」

「ごめん、まあとりあえず食べよう」


 龍神のことを指さすと、しぶしぶセリアはうなずいた。これだけの間に、龍神がほとんど食べてしまっている。その小さい体のどこにそんなに入るのだろうか。

 食べ始めたしばらく後、セリアがルーシェルに不意打ちをくらわせた。


「――でも、その指輪はつけてね?」


 むぐっ、と飲みこもうとしたものを詰まらせてしまう。慌てて紅茶を飲むが、熱くて口の中をやけどしそうになった。

 ひりひりする口を押さえながら、くぐもった声を出す。


「わかったよ……。セリアからの贈り物だからね。大切にする」

「じゃあ、クロ君と一緒に毎日つけてくれる?」


 おもむろにセリアの眉間に攻撃する準備を始めると、彼女は慌ててクロードに話しかけた。


「クロ君は? ルーちゃんとおそろいで嬉しい?」


 どうしてここで嬉しいかどうか訊くのだ、と思いながらもついつい耳を澄ましてクロードの返答を待つ。


「……嬉しいが?」

「聞いた!? ルーちゃん。嬉しいって! クロ君が嬉しいって言ったわ!」


 興奮して大声を出すセリアの眉間を、今度こそ攻撃する。先ほどよりは力をこめずに。

 それでも十分痛かったらしく、ほんの少し涙目になった。


「クロードはわかってないんだよ」


 わかっていたら、こんなことは言わないはずだ。


「……ルーちゃん、顔あ――」

「そんなことより、セリア。龍神さまに全部食べられちゃうよ?」


 言葉を続けさせないよう、話を逸らす。

 自分でも、顔が熱くなっているのはわかっているのだ。おそらくここにいる皆が、ルーシェルの顔が赤くなっていることに気が付いているだろう。


(……何でだろう?)


 どうやらクロードは贈り物を用意していなかったようだが、それでも。

 何だか、すごく嬉しい。










 どうしてこんな気持ちになるのか、ルーシェルはわからなかった。



 エピローグと同じくらい長めでした。


 アベルを本編に出すのを忘れていたので、出してみました。……少ししか話してないです。

 しばらくは無理ですが、後日談をあと少し書いて番外編に移りたいです。

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