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第三話 友達

 一日あいた上、短いです……。

「友達になろう? ルーちゃん」


 セリアは不安げにそう言った。その言葉をルーシェルは頭の中で反芻する。



 トモダチニナロウ



 しばらくした後、ようやく意味を理解した。

 友達になろう。

 彼女はそう言ったのだ。だが、意味を理解してもなぜセリアがそんなことを言い出したのかわからない。

 ルーシェルは魔女。そして、セリアは人間だ。少し変わった能力があっても人間なのだ。

 魔女と親しくした者は殺される。それが千年前は当たり前のことだった。


(もしかして、今はもう魔女は恐れられていないのかな?)

「ううん。残念ながら今でも、魔女は異端の存在よ。友達になったりしたら、村の人たちに殺されるのはわかってる。たとえ私でも。……それでも、私はルーちゃんと友達になりたいの。嫌、かな?」


 嫌ではない。だがセリアのためにも、これは断らなければならないだろう。セリアが自分のせいで殺されるのは嫌だ。それに彼女の立場というのはわからないが、彼女が死んだら、村人が困るのではないだろうか? なぜだかそんな気がする。

 この近くだったらアスメリ村か、ネオプレン村か……。もしくはこの千年の間にできた村か。どの村であっても、ルーシェルが村人が困るなんて考える必要はない。だがやはり、困らせたくないのだ。それがルーシェルのいいところでもあり、悪いところでもあると自分でも思っている。


「私が住んでいるのはアスメリ村よ。きっと千年前よりずっと大きくなってるけどね。今じゃ小さな町よりずーっと大きいもの。私はアスメリ村の外れに住んでるの。そのおかげで、私はこうしてルーちゃんに会いにこれるんだけど。


 ……ねえルーちゃん。ルーちゃんは何でそんなに、優しいんだろうね? 私がルーちゃんだったら、人間を恨んで、そんな心配しない。むしろ、困らせてやれって思うわ。ルーちゃんが薬を渡した人たちも皆、ルーちゃんのことを優しいって言ってたね」


 なぜそれを知っているのか、と考え、すぐに彼女の能力を思い出す。確かにセリアの前で、あの人間たちのことを考えた。その人間たちが皆、自分のことを『優しい』と言ったことも。

 それを言われるたびに、ルーシェルは苦しくなった。優しくなんてないのだ。ただ、殺してしまったあの人間に対しての償い。誰かに優しくしたら、きっと許してくれるんじゃないか。そう考えて。

 そんなことは有り得ないとわかっていても、そう考えてしまう。結局は、自分のためなのだ。罪から逃れたいだけ。


「……私はルーちゃんと友達になりたい。ルーちゃんといると、私は安心できるの。自分のためなのは、私も同じよ。それでも駄目なの?」

「君とは友達になれない。昨日は言い忘れたけど、もうここへ来てもいけない。……セリア、もう帰ってくれないか?」


 きっぱりと断ったルーシェルを、セリアはじっと見つめる。どうしても考えを変えないのがわかったのか、泣きそうな顔をして洞窟をの外へ走っていった。

 ノギスが呆れたように言う。


「いいのかよ。お前もあいつと、友達になりたいんじゃなかったのか?」

「ノギス、僕は一言もそんなこと言ってないよ? ……まあ、友達になりたかったのは確かだけど」


 彼が胡乱気に見てきて、つい本音を漏らしてしまう。

 魔女の友達なら一人いる。だが、生きているのかわからない。魔女の寿命は短くて百年、長くて一万年くらいだ。魔女は十六歳の頃に体の成長が止まる。ルーシェルも封印されていた時期を除き、二百年以上生きているが姿は十六歳のままだ。あの魔女だって十六歳くらいの姿だったが、実年齢はルーシェルと同じくらいだった。もう死んでいてもおかしくはない。

 他に友達と呼べるのは、ノギスくらいだ。ノギスはおそらく、ルーシェルのことを友達ではなく主と見ているだろうが。


 封印される前だったら、ルーシェルの噂を聞いて来る人間がいた。だがルーシェルが封印されたことは、あの変態が人間に知らせたはずだから、もう人間は来ないだろう。

 もし魔女の友達――ノエルが死んでいたら、話し相手がノギスだけになってしまう。セリアはルーシェルの心を読んだのだし、きっともう来てくれない。


(寂しいけど……仕方、ないか。ノエルが死んでなければいいな)


 あの騒がしい友達が聞いたら、もっと騒がしくなるだろうことを考え、ルーシェルはため息をついた。そしてふと、彼女に関する嫌なことを思い出す。


(……人間嫌いって、そう直らないよな)


 ノエルは大がつくほど人間が嫌いだ。過去に何があったのかは知らないが、とにかく目に入った人間を殺してしまうほど。ルーシェルがやめてほしいと言ったから、相手が何かノエルにしなければ平気だと思うが……。

 ノエルとは、仲が良かった。ノエルはルーシェルが人間に封印されたのを知っているのだろうか? ノギスは無事だったのだから、彼の口から聞いているかもしれない。

 ルーシェルは蒼白になった。あのノエルが、このことを知ったら人間を滅ぼしかねない。人間がまだ生きているということは、まだ彼女は知らないのだろうか。


「ノギス。……聞くのが怖いけど、ノエルに僕が封印されたこと話した?」


 おそるおそる尋ねると、ノギスはうなずいた。


「話したぞ。聞いた途端、お前が封印されていた壺を破壊しようとして大変だった。俺が止めなければ、お前はあいつに殺されてたぞ。感謝しろ」


 なぜだか偉そうに踏ん反り返るノギス。


「……話したんだ。で、ノエル、何か言ってなかった?」

「『封印が解けたら、あたしにわかるよう魔法かけといたわ』とか言ってたな」

「気持ち悪いよ」


 意外にノギスの物真似は上手かった。だから余計に気持ち悪く感じる。

 ノギスは感謝されなかったからか、気持ち悪いと言われたからか、ぷいっとそっぽを向く。また怒らせてしまったかとあわてたが、しっぽを振っていないから怒っていないのだろう。


(……僕の封印が解けたことを知ってるんだよね? なのに何で、ノエルはここに来ないのかな?)


 ノエルだったら、封印が解けた途端『移動』の魔法を使うと思う。まあ、もし来ていたらセリアは殺されていたかもしれないが。いや、かもではなく絶対に。

 とりあえず、深く考えないでおこう。ノエルが来なかったおかげで、セリアは殺されなかったのだから。








 ノギスのしっぽがパタパタし始めた。




 タイトルが友達なのに、ルーシェルはセリアと友達になれませんでした。……タイトルつけるの苦手です。

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