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第三十一話 ありがとう

 前回の話をセリア視点からです。短め……?

 早く、ルーシェルの所へ行きたい。


 ぼうっとした頭で考えるのは、そればかりだった。

 それ以外に考えたのは、両親が無事かどうか。たとえ親と思っていなくたって、自分のせいで死んでしまうのは嫌だ。いや、おそらくセリアがルーシェルと会っているのを村人に伝えたのは両親だから、殺されてはいないだろう。

 だから、両親のことなんて考えたのは一瞬だけだった。後は全て、セリアにとって一番大切なひとを思った。


(ルーちゃん……)


 会って、ありがとうと言わなければ。幸せだった、と言いたい。

 彼女はどんな顔をするだろうか。泣いてしまうのだろうな、と思う。だが、セリアが泣かないでほしいと頼めば、ルーシェルは泣かない。

 それでも、笑顔は見せてくれないかもしれない。最期には、彼女の笑みを見たいのだが。


「……セリア!」


 呼ばれた方を見ると、ルーシェルが顔を青くして立っている。ノギスもあせったような顔をして、立っていた。

 どうしてここにいるのか、という疑問はセリアの頭には浮かばない。とにかくルーシェルに会えたことが、とても嬉しかった。


「ル……ちゃ……」


 出した声は、自分の声じゃないと思うほどかすれていた。これではルーシェルを心配させてしまう。この顔を見れば、今でも十分心配させていることがわかるのだ。

 彼女を安心させるように笑って、ふらふらとルーシェルに近づく。だが途中でぱたりと倒れてしまった。立ち上がろうとしても、力がでない。

 ルーシェルが、倒れた自分に駆け寄って膝をついた。


「セリア!」

「だい…じょ……ぶ」


 ルーシェルは、全く大丈夫そうに見えないからこんなに心配しているのだ、とでも言いそうな顔をする。

 それも当然だ。今のセリアは、自分でもなぜ生きているのかわからない。

 村人たちから必死で逃げて、最後は矢を射られて倒れてしまったのだ。村人たちは魔女と知り合いのセリアを恐れてか、死んだかどうかは確認しなかった。それが不幸中の幸いだろう。確認されていたら、確実に殺されていた。それから人がいなくなったのがわかって、重い体を酷使してここまで来たのだ。何度も倒れそうになっても、ルーシェルに会いに。


「ルー…ちゃ、ん…」


 ルーシェルの姿が、かすんでよく見えない。本当に彼女はここにいるのだろうか、と不安になって手を伸ばすと、ルーシェルはセリアの手を掴んでくれた。


「何、何? セリア、どうしたの!?」


 セリアは安心して微笑んだ。


「…………」

「聞こえない、セリアもう一回言って!」


 ルーシェルはセリアの口に耳を近づけた。彼女に聞こえるよう、できるだけ大きくゆっくりと言う。


「わた……し、ルー…ちゃん……とあえ、て」

「うん、うん」

「しあわ…せ、だ……ったわ」

「だったって何!? そんな死んじゃうような言い方、やめてよ……。まだこれから、いーっぱい話して、遊んで……」


 ルーシェルは、顔を歪めた。理解したのだろう、セリアがもう助からないと。

 ルーシェルの性格だったら、もっと理解するのが遅いと思っていた。そんなことを考えていると知ったら、彼女は怒るだろうか。こんな時でも。


「僕を……置いていかないで、セリア……」


 置いていく。

 置いていかれる方はもちろん辛いが、置いていく方だって辛いのだ。

 この間思った通り、セリアはルーシェルとクロードの先を見ることができないようだ。それに、ルーシェルとエデから、誕生日の贈り物を受け取っていない。二人は何を買ったのだろう。

 まだ色々心残りがある。だが、置いていかないというのはもう無理だ。


「な……か、ない…で」


 泣き出してしまったルーシェルの頭を、掴まれていない方の手でなでる。ルーシェルはなでられるのが好きだと言っていた。最期くらい、彼女に喜んでほしい。

 ルーシェルは目をぎゅっとつぶった。涙を堪えているのだろう。やはり、セリアが考えた通り、頼めば泣かないでいてくれるのだ。せっかくだから、笑顔を見せてくれればいいのに。

 そこでふと、彼女の綺麗な黒髪に、血がついてしまったことに気が付いた。


「あ……血が…つい、ちゃ……ね」


 ルーシェルは首をぶんぶんと振る。その動作は大きくて、セリアの今の目でも十分確認できるくらいだった。


「いいよ、そんなの! セリアが辛くないなら、もっとなでてほしい」

「そ、っか」


 もう目を開けているのも辛くなって、ルーシェルの頭をなでながら目をつぶった。


(……目をつぶってても泣いてるのわかってるよ、ルーちゃん)


 ルーシェルとは友人になって一ヶ月も経っていない。だが、彼女のことはよく理解している。セリアが目をつぶっているから、泣いても気付かないと思ったのだろうか。残念ながら、その予想ははずれだ。

 セリアに聞こえないよう嗚咽は堪えているようだが、泣いていることくらいすぐわかる。ルーシェルが、自分を心配させないようにしていることだって、すぐわかる。


(あ……もう、駄目かも)


 最期に、もう二度と会えなくなる前に、ルーシェルに伝えなければ。


「あり……が、と」


 ありがとう。それしか言えなかったが、本当はもっと伝えたかった。


 ルーちゃんのこと、大好きだよ。

 ルーちゃんのおかげで、私は楽しかった。幸せだった。

 クロ君とディーちゃんとは、ずっと仲良くしてね。もちろん白猫君も。最期くらい、名前を呼んであげたほうがいいかな? 省略はしないで……。ノギス君と、ずっと一緒にいてね。

 あ、クロ君とルーちゃんはどうなるかな? 私が思ってた通りになるかな? そうだったら嬉しいな。ってルーちゃんには意味がわからないか。

 ……せっかくルーちゃんとディーちゃんが贈り物を用意してくれたのに、受け取れなくてごめんね。私が無理してでも行っていれば、受け取れたのに。

 だけど、最期に謝るのは駄目ね。今までありがとう。

 最期に、ルーちゃんの笑顔が見たかったな……。









 …………………………





 書けたので早めに投稿しましたが、今日中にもう一度投稿できるかはわかりません。

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