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第十五話 憧れ

また遅れてすみません……。

これから更新速度もっと遅くなるかもしれません。

 朝起きると、洞窟内の椅子にクロードが座っていた。寝台から上半身だけ起こして、ぼんやりと彼を見る。クロードはまだ、ルーシェルが起きたことに気付いていないようだった。ルーシェルの隣では、ぐっすりとノギスが眠っていた。


「ふぁ……」


 あくびをすると、クロードはこちらを見た。自分がなぜこんなことをしなければならないのか、という憮然とした顔をして。

 彼がここにいることに何の疑問ももたず、ルーシェルは「おはよう」と言う。聞こえなかったのか、クロードが何の反応もしなかったので、また言った。


「おはよ、クロード」

「……は?」


 挨拶をしたルーシェルを、今度は訝しげに見てきた。こんな顔をされるようなことをしただろうか? 朝起きて頭が働いていないルーシェルは、なぜクロードがこんな顔をしているのかわからなかった。


「ん?」


 クロードがこの洞窟にいる。そのことに違和感を感じ、ルーシェルは首をかしげた。もう一度大きなあくびをし、彼の顔をじっと見つめる。


(……あれ? 何でクロードがここにいるの?)


 昨日眠るまでのことを思い出してみる。

 セリアが来て、ノギスが壺を探しにいった後クロードが来た。そしてまた来ると言いクロードが帰ると、戻ってきたノギスと喧嘩をして、セリアが気絶してしまって、目を覚ましたセリアが帰った後にすぐ眠った。


(また来るって言ったって……。来るの早すぎだと思うんだけどな?)


 丸一日も経たずに、こんな朝早く来るとは思っていなかった。

 ルーシェルは、歩いてクロードの向かいの椅子に座った。


「来るの早いね? それで、何をしに来たのかな?」


 昨日、彼はなぜルーシェルを封印せずに帰ったのだろう。あの変態のようになれないと言われ、落ち込んだせいだろうか?

 ルーシェルが尋ねると、クロードは気まずそうに顔をそらした。


「……フィルマンさまが、どのような方だったのか訊こうと思ってな。一族に伝わる話だけではよくわからない。少々あの話は美化しすぎている気がするのだ」

「へぇ。どんな話か聞いてみたいけど……今は僕が話さなきゃね」


 あの変態が、どのような人間だったのか。それはもう、クロードには言ってあるはずだ。

 一言で言えば、変態。

 それ以外に言いようがない。


(まあ、クロードみたいに魔女を異端視していないだけいいのか)


『魔女だろうが何だろうが、女性には優しくしないと』


 ルーシェルが何だかほっとするような笑みを浮かべ、あの男はそう言った。

 ふと、彼の不機嫌そうな顔を見る。あの変態と瓜二つなのに、こんな顔をしていると別人に見えた。昨日初めて見た時はあの変態と間違えたが。


「あの変態は、君と本当にそっくりだったよ。もちろん外見だけだけどね。あの変態は……『魔女だろうが何だろうが、女性には優しくしないと』とか言うほど、女には甘かった」


 先ほど思い出した言葉をそのまま告げると、クロードはがっかりした顔をした。


「幻滅するな」

「理想と現実は違うからね。クロードは、僕があの変態に封印されたこと知ってる?」


 答えは聞かなくともわかっているが、一応そう尋ねる。ルーシェルが封印されて、その封印が解けた時に丁度ここへ来るなんておかしい。大方、あの変態が封印する際に何か術を使っていたのだろう。


「ああ。フィルマンさまがお前を封印した壺に、『感知』の術をかけたのだ。封印が解けた時、我が一族にわかるようにな」

「一つ疑問があるんだけど。僕が封印されてた壺って、一体どこに行ったの?」


 この洞窟に、ルーシェルが封印されていた壺はなかったのだ。封印が解けたのはここなのだから、絶対にここにあると思っていたのだが。


「あの壺は封印が解けると、消滅することになっている。そのような術はないのだが……。昔からそうらしい」


 クロードが不思議そうに言う。

 『消滅』という魔法は存在する。だが、術は人を守るものだ。そんな危険な術が存在するはずない。

 あの変態なら、そんな術を自分で作ってしまいそうだが。手紙に書いてあった『蘇生』の魔法だって、あの変態が作ったのではないかと思えてくる。


「ま、それはおいといて」


 寝台の方をチラリと見ると、それに反応してかノギスの耳がピクリと動いた。


「いつまで寝た振りしてるつもりかな? ノギス」

「……ばれてたか」

「当たり前でしょ? 君の寝た振りはわかりやすいんだから」


 ノギスが寝た振りをしている時、必ずしっぽがまっすぐに伸びているのだ。もしその癖を直されてしまったらわからなくなるから、彼にそのことを教えたことはない。

 ノギスを見て、クロードが驚いたように言った。


「使い魔なのに白猫なのか?」


 その質問に、思わず顔をしかめてしまう。

 使い魔という存在を知っている者だったら、当然のものだ。

 だが、この質問をされるのは快いものではない。白猫が使い魔で何が悪いのだ。ノギスのことを否定されているようで嫌な気持ちになる。


「そういうところが君とあの変態の違うところだよね。あの変態はそんな質問しなかったもん」


 使い魔という存在を知っている者だったら、当然の質問。それでも、あの変態はこんな質問をしなかった。


「……教えてほしい。俺とフィルマンさまの違いを」

「お?」


 真剣な顔で頼まれてルーシェルは戸惑った。こんな反応をされるとは思っていなかった。


「違い、ね? 昨日も言った通り人間と魔女を差別するようだと、あの変態のようになれない。……って、さっき幻滅したって言ってたのにまだあの変態のようになりたいの、かな?」

「幼い頃からの憧れだったからな、フィルマンさまは。そう簡単に気持ちが変わるわけがないだろう」


 少し自慢そうに言ったが、ルーシェルにはよくわからない。

 幼い頃からの憧れ。

 そんな感情を知らないから。


(誰かに憧れる……それってどんな感じなのかな)


 知りたいとは思わないが。憧れて、その人物に裏切られた時を考えたら。


「人間と魔女を差別する、か。……お前がそう言うのなら、しばらくは毎日ここを訪れよう」

「ま、毎日? 何のために?」

「魔女と共にいたら、差別するようなこともなくなるだろう? だからだ」


 クロードが毎日ここに来る。

 そのことを考え、げんなりしてしまった。性格は全く違うとはいえ、あの変態にそっくりなクロードがここへ来る。それは、大が何個も付くほどあの変態が嫌いなルーシェルにとって、とても迷惑な話だった。


(まあ、クロードに差別するなって言ったんだから、僕も差別しちゃだめだよな)


 そう自分を納得させる。封印されるよりはましだ。ルーシェルは、セリアが死んでしまうまで封印される気はないのだ。いや、ノギスを独りにさせるのは嫌だから、封印されたくない。


(そういえば、セリア今日は遅いな)


 なぜこんな日に限ってセリアは来ないのか、と少し恨めしく思ってしまう。












 結局、昼頃にセリアが来るまで、ルーシェルはクロードと話していたのだった。





 見直しをしていないので、もしかしたら変なところがあるかもしれません。

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