6. シーン FINAL side B
─── シーン16 FINAL・学園ダンスホール 4回目───
きらめくシャンデリアの下。
ダンスホールでは、貴族の令嬢令息がたちが、華麗に踊り舞っている。
すべては、ここから始まった。
理不尽に、斬られ斬られて、ぶった斬られ続け。
ここまで死ぬこと、42回。〝しに〟って、何の冗談だ。
毎回同じ、ピンクのフリフリドレス。
前世で10歳若くても、結婚式でさえも着ないであろうこの衣装。結構悪くなかった。ありがとう。
もうイベントは始まっている。脳内の段取りは完璧だ。
あとは度胸と気合だけ。
スワロゥス王子殿下と、側近オルフォスが楽団の際で並んで立っている。
私は今までのあざといパターンを全てやめ、ごく普通に近づいた。
「王子殿下、オルフォス様。ご挨拶をどうかお許しください」
丁寧にカーテシーをキメつつ、ごく普通に貴族らしく。
オルフォスは動かない。何より、二人を連ねて呼んだことに少し戸惑っているようだ。
「どうしたんだい〝アンジェ〟。ダンスのパートナーなら構わないよ。次の曲でどうだい」
愛称が出ている。ここまでの積み重ねが生きている。
よしよし。狙い通りだ。
「ありがとうございます。しかし私は、オルフォス様に少し御用が」
「……どういうことだ」
オルフォスが怪訝な顔をする。そして殿下も、爽やか笑顔の眉を少しピクリとさせたのを、私は見逃さない。
「オルフォス様、どうか王子殿下のお手を取っていただけませんか。ダンスのパートナーとして」
「なっ……何故」
「殿下がお待ちだからです。この学園最後の舞台で、最愛の人と想いを遂げあうために」
二人とも、驚きの目を限界まで開いて私を見ている。
そう。私は気づくのが遅かった。
令嬢たちが誰も殿下をダンスにお誘いしなかったことに。
そして唯一〝ヒロインだと勘違いした私〟が突撃して、斬られる。
私は、二人の神聖な間柄を、単に邪魔していただけだったのだ。
ひょっとしたらこれも、未コンプなシーン2%の内に入っていたのかもしれない。もしそうなら、これを以てフルコンプなはず。
ほら、もう私そっちのけで見つめ合ってる。
二人を見守ろうと、自分の顔がおのずと柔らかい笑みを浮かべていくのがわかる。
「ふふ。もう、じれったいですねっ」
私はさっと二人の手を取り、つなぎ合わせた。
抵抗はない。私になされるがまま、ついには両の手をがっしりと取り合った。
「さあ。次の曲が始りますわ。お二人の華麗なるステップを、どうか皆様にお披露目くださいませっ」
私が促すまま、二人は頷き合う。
バイオリンの合図とともに、弦楽器隊が一斉にワルツを奏でる。
フロアの中央へ躍り出た二人。男性カップルによるステップは、それは力強くたおやかで、勇壮で優美で。
ホールに居た他の貴族子女たちも、二人を囲むようにして、誰彼なく手を取り合い、一斉に踊りだす。シャンデリアのきらめきに彩られながら。
ああ……何て圧倒的で、美しいエンディングの光景だろう。
しかも二人とも、めっちゃ笑顔なんですけど。
ちょっぴり妬けつつ。
私は42回ぶった斬られまくったことも忘れ、この尊い光景を一等席で、ただただ見守り続けていた。
「だけど……このあと私、いったいどうなるんだろう」
~Fin~




