2. シーン01
─── シーン01・シャンデルデ学園 朝の廊下 1回目 ───
生き返った、らしい。
気が付けば、ゲームの別の場所にいた。
ここもよく知っている。学園の廊下。
王子との、最初の出会いがあるところだ。
両腕をあげると……エンジ色のジャケットの裾が。
学園の制服だ。
そして教室の窓に映った私の顔、アンジェラリーナ。
はい、アンジェかわいい。ツインテかわいい。
いや、問題は顔じゃない。
どうやら早速〝始まった〟ようだ。
「きゃあーっ、王子殿下ぁ───っ」
「やあみんな、おはよう」
きらっきらの笑顔をふりまき、挨拶をするスワロゥス王子殿下。
本来なら「ああ、スワちゃん……」と両手を合わせて拝むところだけども。
ぶっわ───って、全身の毛穴という毛穴から冷や汗が噴き出し、光速ダッシュで教室へ滑り込む私。
「……はあ、はあ。もうちょい猶予が欲しいんだけどっ」
さあ、どうする私。
本来なら、
「教室から慌てて出たところでドンして、尻餅をつきながら『ぅ、う……ぐすん。痛いよぉ~』と目を潤ませる」
っていう、あざとさ全開の正解をたたき出すところだけど。
このゲームは〝ヒロインのアクションをテキストで手入力する〟回答方式。
AIが内容を判断して、正答にあるアクションの95%に達してたらクリアっていう。
スマホゲーのクセに、めちゃくちゃシビアで面倒くさい仕様なのよね。
かといって何もしないと、突然心臓発作を起こしてゲームオーバー。
デス オア ダイな選択しかないの。涙目。
つまり、何もアクションせずにスルーすることは不可能。
心臓ばっくばく、冷や汗だっらだら。
こわい、こわすぎる。
だけど、やるしかない。私は前を向いていくっ。
「実績:死亡回数 3281回」。
ユーザーランキングでトップになるほど、このゲームを極めまくった私を、なめるんじゃないわよっ。
取り巻きの女生徒たちのきゃいきゃいという声が近づいてくる。
あざといのがダメなのなら、正攻法でいく。
礼儀正しく、さりげなく。それでいて目を見ながら、響くように挨拶の言葉を投げかける。
ぃよっし。整った。いざ、出陣。
教室を出て、前方5m。王子殿下が居る。
慎ましやかに目を上げる。
ふっと、目があった。今だっ。
「おはようございます、殿下。今日もご機嫌麗しゅ───」
スッと、殿下の背後から黒い影が。
出た、側近。
「氷の騎士」オルフォス、登場。
「無礼者っ!」
「ぐバぁああああ───っ!」
白無垢の壁に、真っすぐ延びる血しぶき。
ああ、また、死んだ。
挨拶した、だけなのに……
てかさ。
なんで……
何で既に、抜刀してんのぉ……───




