エピローグ
地下に造られた薄暗い部屋。机にはあらゆる資料が散乱していて、使用済みの試験管がいくつも転がるお世辞にも綺麗とは言えないそんな場所で、回る椅子に座り組んだ足を机に置く研究員はため息を吐く。
「もー、何してんのさグリムくん。君がエイジくんを足止めしてくれたら、今回の実験は失敗に終わらなかったと思うんだけど〜」
研究員、サウザーの言うこともごもっともだ。
あの時あの場所にエイジが現れなければ、雪崩れ込んできた魔物が町を蹂躙して終わりだったのだから。
そうなればカイトの覚醒もなく、ラバンが負けることもなかった。つまり、実験は継続できた訳だ。
そんな文句を言われている当の本人は、右腕に出来た傷に回復ポーションを垂らしながら答える。
「別にわざと見逃した訳じゃないさ。エイジが切り札を自らの意思で使っただけだよ」
ジョーカー、それを聞いたサウザーは机を蹴って椅子を走らせ、楽にグリムの元まで移動する。
到着すると足を組み、サングラスをカチャリと触りながら興奮を隠せないニヤけ面で言う。
「その話を詳しく聞かせてくれよ!エイジくんの切り札、それを使わせただけで実験成功より価値がある!やはり、エイジくんは自らの意思でアレを使う事が出来た訳だ!」
あの時、グリムの鎌はエイジに傷を付けることができなかった。理由は彼等の話す切り札が原因だ。
そこにカウンターを貰ったグリムは右腕に傷を負い、近くに来た魔物とエクスチェンジで逃げられた。
「嗚呼、実に待ち遠しよ。完全覚醒した君の魂を頂くその日がね」
グリムが笑い、机の上に置かれた資料にナイフを突き立てた。
その資料には、希虎英志と金剛鉄、この世界では聞き馴染みの無い妙な名前が書かれており、最後の一文には更におかしな事も書かれている。
上記二名は異界よりの来訪者と断定する。