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契約の刻印

悠は、試験を終えて教室を後にし、静かな廊下を歩いていた。心の中にまだ残るリリィとの戦闘の余韻が、少しだけ疲れた体を重くしている。それでも、今日の試験で一歩前進できたことに満足していた。


「…アカレ?」


ふと、心の中で呼びかけると、軽い空気の揺れが感じられた。その瞬間、悠は目を細め、周りを見渡した。


そして、突如として現れたのは、青白い光を放つ影。悠の目の前に浮かび上がったその姿は、まるで空気そのもののようで、淡く、透明な輪郭を持っていた。しかし、確かにそこに存在する。見える。触れるような感覚が、悠の身体を包み込んだ。


アカレだ。


「やっと見えるようになったんだね、悠!」


アカレは浮かんでいる姿そのままに、無邪気に声をかけてきた。透明感のあるその存在は、まるで小さな子供が自分の力を喜んでいるかのように見えた。


「アカレ…君、なんだか嬉しそうだね。」


「うん、嬉しい!だって、君が僕を見えるようになったんだよ?これからいっぱいお話しようね!」アカレは嬉しそうに言って、目をきらきらと輝かせた。


悠は思わず笑みがこぼれた。まるで小さな子供のように、アカレは無邪気に飛び跳ねるような仕草を見せる。その姿に、どこか親しみを感じた。


「でも、どうして今、僕が君を見えるようになったんだろう?」


「それはね、契約したからだよ!僕、君と契約したから、僕も少しだけ君の世界に来れるようになったんだ!」アカレは空中でくるくると回りながら答えた。


「そうか…」悠はその言葉を噛み締めながらも、まだ実感が湧かない部分もあった。自分の目の前に浮かぶアカレが、実際には精霊であることを信じるのは、まだ少し不思議な感じがする。


「それにね、君が見えるようになっただけじゃなくて、君も少しずつ僕の力を使えるようになるんだよ!」アカレは嬉しそうに言った。「これからいっぱい練習しようね!」


「うん、でも…どうやって使うんだろう、僕はまだ何もわからないよ。」


「大丈夫だよ!」アカレは自信満々に言うと、悠の顔の前でふわっと踊るように近づいた。「君には僕がいるからね。ちょっとずつ教えてあげるから、楽しみにしてて!」


その無邪気な笑顔に、悠は思わず胸が温かくなるのを感じた。こうして、アカレと共に歩む道が少しずつ、少しずつ現実のものになっていくのだろう。彼はその瞬間、心の中で小さな決意を固めた。


「ありがとう、アカレ。これからもよろしくね。」


「うん!これからいっぱい一緒に冒険しようね、悠!」アカレはさらに輝くように笑い、悠の周りに軽やかな風を吹かせた。


悠はその言葉に応えるように、目の前のアカレに優しく微笑んだ。彼が今感じているのは、ただの精霊との契約以上のものだ。それは、きっとこれからの大きな冒険の始まりを示すものだろう。


そして、悠はアカレと共に歩んでいく未来に、わずかながらの希望と確信を感じていた。

精霊は普段体の中で眠っています(多分断言)

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