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契約の果てに視るもの

試験当日。アストレア学院の闘技場には大勢の生徒や教師が集まり、試験の行方を見守っていた。悠は試合場の中央に立ち、目の前の対戦相手——リリィと向き合う。

リリィは学院の上級生であり、試験官として悠の実力を測る役割を担っている。彼女の背後には、燃えるようなオーラを纏った炎の精霊「カゲロウ」が浮かんでいた。

「悠君、準備はいい?」リリィが剣を抜きながら言う。

悠は軽く息を整え、構えを取った。

「もちろん。」

試験官が合図を出した瞬間、リリィが地面を蹴った。瞬く間に間合いを詰め、炎を纏った剣が悠へと振り下ろされる。

(速い——!)

悠はすかさず水の魔法でバリアを展開するが、炎の剣はそれを焼き切るように突き破り、悠の頬をかすめた。

「くっ……!」悠はすぐに後方へ跳び、距離を取る。

しかし、リリィは動きを止めない。追撃のために剣を振るい、炎の刃を飛ばしてくる。悠は水の魔法でそれを迎撃しようとするが、火と水がぶつかり合い、蒸気が視界を覆った。

「悠君、そんな遠くからじゃ私には勝てないわよ!」

霧の中からリリィが飛び出し、悠の真正面へと迫る。悠は反射的に水流を繰り出すが、リリィは剣を振り回しながら炎を纏わせ、水を一瞬で蒸発させた。

「まずい——!」

悠はさらに距離を取ろうとするが、リリィの追撃が速すぎる。悠が魔法を発動する前に、リリィの剣が肩を掠め、熱が肌を焼くような感覚が走る。

「悠君、そろそろ終わりにしましょうか?」

リリィは剣を地面に突き立て、炎の魔法陣を展開する。そこから無数の火柱が立ち上がり、悠を包囲した。

(このままじゃ負ける……!)

悠は必死に考える。真正面からの戦いでは、どうやってもリリィの方が強い。しかし、悠には悠の戦い方がある。

「なら、こっちから仕掛けるしかないか——!」

悠は地面に水を撒き、それを一気に凍らせる。リリィが踏み込めば、足を滑らせて体勢を崩すはず——そう思った瞬間、リリィがためらうことなく飛び込んできた。

「甘いわよ!」

リリィは炎を足元に纏わせ、氷の上でも滑らずに突進してきた。悠は驚愕しながらも、水流を操作して霧を発生させ、視界を遮る。

(ここからが本番だ——!)

悠は霧の中で素早く動き、相手の死角を取るように立ち回る。そして、リリィが攻撃を仕掛けてくる瞬間を見極め、水の鞭を放つ。

「なっ……!」

水の鞭がリリィの足元に絡みつき、一瞬だけバランスを崩させた。その隙を突き、悠は水流を渦巻かせて彼女の体勢をさらに崩す。

「このっ……!」

リリィは剣を振るうが、悠は氷の上を滑るように移動し、その攻撃を回避する。そして、最後の一手として、水を圧縮した刃を作り出し、リリィの喉元へと突きつけた。

「これで終わりだ。」

静寂が訪れる。試験官が試合終了を宣言し、観客席からはどよめきが上がった。悠の戦術が評価され、彼の入学が認められることになったのだった。

そしてその後、悠は自分のそばにいる精霊を見つめた。長い間そばにいてくれた存在。だが、まだ名前がなかった。

悠はそっと手を伸ばし、優しく語りかける。

「お前、ずっと俺を助けてくれてたよな……。アカレって名前はどうだ?」

精霊は小さく光を揺らし、まるで嬉しそうに輝いた。

「アカレ……僕の名前?」

「ああ、アカレ。これからも頼むぞ。」

アカレは嬉しそうに悠の周りをくるくると飛び回る。

こうして、悠は正式にアストレア学院の生徒となり、アカレと共に新たな道を歩み始めるのだった。


—続く—

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