闇の精霊の居場所
悠は仮面をつけ、冷徹に戦闘を繰り広げながら、少しずつ自身の目的地を見定めていた。だが、彼の心に常にひとつの疑念が湧き続けていた。それは、闇の精霊に関することだった。
闇の精霊――その存在が、学院崩壊の原因の一端であったことを悠は知っていた。かつてアカシックレコードに関わる者たちが、その力を利用しようとしたこと。そして、その精霊が目覚め、再び力を取り戻すのを阻止しなければならないこと。それが悠の最終的な目的となりつつあった。
ある夜、悠は地下のバーで情報を集めることにした。ここは、街の裏社会が集う場所。情報が飛び交うこの場所には、悠にとって有益なものが転がっているかもしれない。仮面をつけた彼は目立たないようにしながら、次々に出会う人物と話を進めた。
「おい、君……そこの仮面の男。」
一人の男が声をかけてきた。無愛想な顔をしているが、その目にはどこかしらの確信が込められていた。
「闇の精霊のことを知りたいのか?」
悠は驚きと共にその男を見つめた。どうやら、この男はただの情報屋ではなく、闇の精霊に関して何かを知っているようだった。
「君は……?」
「名前はアウル。闇の精霊に関わる者として、この街に生きる者の一部だ。」
アウルは少し笑いながら続けた。
「闇の精霊は、ただ復活を待っているわけじゃない。その居場所は、アカシックレコードの力によって封印され、消えたと思われていた。でも、あれは違う。封印されたのではなく、隠されただけだ。」
悠の心が高鳴る。アカシックレコード――それは、彼が以前聞いたことがある言葉だ。学園で、総長が言及していたことを思い出す。
「隠された場所……それはどこだ?」
悠はすぐに聞き返した。アウルはしばらく黙っていたが、やがて静かに答える。
「地下だ、だがそれは単なる場所の一部に過ぎない。闇の精霊が眠るのは、封印された『アカシックの間』という部屋だ。だが、そこに到達するためには、精霊の力が必要だ。」
悠はその言葉を重く受け止めた。精霊の力――つまり、アカレの力だ。アカレは悠の精霊であり、彼の隣で共に戦ってきた存在。その力が闇の精霊を封じる鍵となる可能性があるというのだ。
「アカシックの間……それがどこにあるか、知っているのか?」
アウルは首を横に振った。
「その場所は、誰にも簡単にはわからない。ただ、ひとつだけ言えるのは、その場所に辿り着くためには、精霊の力を試さなければならないということだ。闇の精霊が目覚めることを防ぐためには、その力を抑える術を知る必要がある。」
「どうすればその術を知ることができる?」
「それについては、長い時間をかけて調べる必要があるだろうな。だが、君が本当にその力を求めるなら、今すぐにでも動き出さないと手遅れになるかもしれない。」
悠はアウルの言葉を胸に刻み込んだ。闇の精霊が再び力を取り戻せば、全てが終わる。それを防ぐためには、アカシックの間に辿り着く必要があった。だが、その道は簡単ではない。彼はアカレを連れて、未知の場所へと向かう覚悟を決めた。
その時、アカレが悠の肩に降り立った。
「どうしたの? 何か大変なことが起こるの?」
悠はアカレに目を向ける。
「いや、ただ……闇の精霊を封じるための場所がわかっただけだ。」
アカレは少し考え込んだ後、にっこりと微笑んだ。
「じゃあ、行こう! 一緒にね!」
悠はその微笑みに心を温められるような気がしたが、同時にその思いを胸に、次なる戦いへの準備を始めなければならないことを感じていた。闇の精霊との戦いは、すぐそこまで迫っていた。