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影の中へ

学院崩壊の後、悠は名実ともに追われる身となり、世界中を放浪しながら生き抜くことを余儀なくされた。ある晩、街の片隅で彼はひとりで立ち尽くしていた。星明かりの下、彼の顔に浮かぶのは、かつての平穏な日常を取り戻せないという諦めに近い思いだった。


「もう、終わりなのかな……」


深い吐息と共に呟く。その言葉を周囲に響かせることはなく、ただ静寂に消えた。手にしたのは、以前に学院を離れる際に遠坂と安田に渡した短い手紙だけだ。彼らとの別れは未だに胸を締め付けるが、悠はその時、自分の行く先が決して戻らないことを知っていた。


「すべてを終わらせるために、何かを始めなければ……」


思い詰めた表情のまま、悠は自分の懐から小さな箱を取り出す。それは、学院崩壊の後、誰にも知られずに手に入れた仮面だった。金属製で、しっかりと顔全体を覆う形。目元だけがわずかに開いている。誰が作ったのか、どこで手に入れたのかもわからない。しかし、この仮面には奇妙な安堵感があった。


「これをつけて、誰にも見られないように生きる……。」


仮面を顔にかぶる瞬間、悠はまるで自分自身の一部が変わっていくような感覚を覚えた。これで、もう誰にも正体を知られない。彼は誰にも縛られず、自由に動くことができる。アカシックレコードの陰謀も、あの学院の崩壊も、これで一旦リセットできるかもしれない。


だが、仮面をつけたその夜、悠は不穏な気配に気づく。暗闇の中で何かが動いている――その直感が彼に危機を告げていた。どこからともなく現れた数人の影が悠に迫ってきた。


「誰だ?」


仮面をつけた悠が、冷静にその場から距離を取ろうとする。


影たちは一歩、一歩と悠に近づいてきた。彼らはただの通りすがりの街の住人に見えたが、悠はそれを無視することはできなかった。仮面をつけた彼には、もう隠れる場所も、逃げる場所もないのだ。


「君が……悠だな?」


その言葉が悠に投げかけられた瞬間、悠の心臓が一瞬止まった。まさか自分を追っている者がいるとは。どこから、その情報が漏れたのかもわからない。


だが、彼は動じなかった。これからの戦いにおいて、悠はただ一つの信念を胸に、前に進む覚悟を決めていた。それは、この世界の運命を自分の手のひらで切り開いていくこと。


「そうだ、僕は悠だ。だが、君たちは何者だ?」


仮面越しに悠は冷静に応じる。彼の手は、すでに振り向いたと同時に鞘から刀を抜く体勢に入っていた。この世で生き残るためには、戦いを避けては通れない。それがどんな理由であれ。

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