静かなる異変
その日、アストレア学院の空気はどこか重く、ざわめきが広がっていた。生徒たちは理由もわからぬまま、無意識に警戒心を抱いていた。
「最近、妙な噂を聞かないか?」
遠坂大地が低い声で話しながら、悠と玲奈の方を見た。
「噂?」悠が首を傾げる。
「地下に何か不穏な気配があるとか、誰もいないはずの廊下から声が聞こえるとか……そういう話さ」
「それ、ただの怪談話じゃないの?」玲奈が冷静に答えたが、大地は真剣な表情を崩さなかった。
「いや、実際に教師の何人かが行方不明になってるらしいんだよ」
その言葉に悠も玲奈も一瞬息をのんだ。確かに、最近になって特定の授業が急に休講になったり、教職員の数が減っている気がしていた。
その時だった。
――ドォンッ!
遠くで爆発音のような音が響き渡った。
「今の……何?」玲奈が驚いて周囲を見回す。
「……わからない。でも、すぐに確認しに行かないと」悠は剣を握りしめながら立ち上がる。
「お、おい! 何か危ないかもしれないぞ!」大地が止めようとするが、悠はすでに足を動かしていた。
学院内に広がる異常な静けさが、不吉な何かの始まりを告げていた。