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迫る影

悠は食堂での違和感を引きずったまま、午後の授業に向かっていた。玲奈や大地と別れ、静かな廊下を歩いていると、ふと背後から視線を感じる。


(……誰かが見ている?)


さりげなく振り返るが、廊下には他の生徒たちがいるだけで、特に怪しい人物はいない。しかし、このところ感じる違和感が、確実に増していることは間違いなかった。


「……気のせい、じゃないな。」悠は小さく呟く。



午後の授業は魔法実技だった。基礎魔法の応用として、各自の属性を活かした魔法制御訓練が行われている。


「では次、遠坂大地!」


指導役の教師が名を呼ぶと、大地が前に出て、地面に手をかざした。魔力が込められた瞬間、足元の地面が波のように隆起し、模擬標的へと飛ぶように押し寄せる。


「ふっ!」


大地が拳を握ると、その波のような岩が一瞬で硬化し、標的を押しつぶした。


「うむ、見事だ。次、安田玲奈!」


玲奈が静かに前に出ると、周囲の風が彼女を中心に渦巻き始める。そして、手を軽く振ると、突風が生まれ、標的に向かって鋭い刃のような風が放たれた。


「風刃……!」


玲奈の攻撃は正確に標的を切り裂き、吹き飛ばす。


「ふむ、非常に安定した魔力制御だ。よく訓練されている。」


教師が満足そうに頷き、次に悠の名前が呼ばれた。


「では、悠。君の水の魔法を見せてくれ。」


悠は前に出て、標的を見据える。


(水の流れを操り、斬撃として飛ばす。今の自分にできる最適な攻撃……)


悠は静かに魔力を込めると、手を振ると同時に水流が生まれ、それが刃のような形状に変化した。


「……!」


標的を切り裂くと、水の刃はそのまま消えた。


教師は少し驚いた様子を見せながらも頷く。


「水流を変形させ、斬撃にするか。なかなか面白い応用だな。だが、威力を上げるには魔力制御をさらに鍛える必要がある。」


悠は内心で苦笑する。やはり、まだ水の魔力制御が完全ではない。今のところ、遠隔攻撃としては有効だが、持続的な攻撃には向いていない。


(……もっと、制御を磨かないと。)



授業後、悠は玲奈と大地と共に廊下を歩いていた。


「悠、お前の魔法、だんだんキレが増してるよな。」大地が感心したように言う。


「そうか? まだまだだけどな。」悠は肩をすくめた。


「でも、あの水の刃はかなりの速度だったよ。もしもっと精度を上げられれば、強力な武器になるんじゃない?」玲奈も分析する。


「……そうだな。」悠はそう答えながらも、考え事をしていた。


その時、すれ違った生徒たちの中に、先ほど食堂で見た上級生の姿を見つけた。彼らは悠たちに気づくと、一瞬目を細め、そのまま足早に通り過ぎていく。


「……なあ、さっきの奴ら。」悠が小声で言うと、大地も頷いた。


「ああ、俺も気づいた。昼休みにもいたよな?」


玲奈も少し表情を曇らせる。「確かに……。ただの偶然?」


「……いや、たぶん違う。」悠ははっきりとした口調で言った。「誰かが、俺たちを監視している気がする。」


玲奈と大地が互いに顔を見合わせた。


「……警戒した方がいいな。」大地が低く言う。


悠は頷いた。この不穏な気配の正体を突き止める必要がある。だが、まだ確証はない。


(何が起きている……?)


悠の胸の中に、わずかに不安が広がっていくのを感じていた。

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