精霊学の授業
アストレア学院に入学して数日。悠はまだ新しい環境に慣れようとしていたが、今日は特に重要な授業がある。「精霊学」——契約者である悠にとって、避けて通れない科目だ。
教室に入ると、すでに生徒たちが席についていた。遠坂大地と安田玲奈も近くの席に座っている。
「お、悠! 今日は精霊学だな。契約者の君にはピッタリの授業じゃないか?」
「まあ……そうだな。」
悠が適当に相槌を打つと、大地は楽しそうに笑った。
「私も興味があるわ。精霊との契約は一生のものだし、知らないと困ることも多いでしょう。」
玲奈が冷静に言う。その言葉に悠も納得した。契約して間もない自分にとって、精霊の知識は不足している。アカレのことをもっと知るためにも、授業はしっかり受けなければならない。
やがて、教師が教室に入ってきた。白髪混じりの壮年の男性で、威厳のある佇まいだった。
「では、授業を始める。私はクラウス・ハインツ。この学院で長年精霊学を教えている者だ。」
クラウスは教壇に立ち、黒板に魔法で文字を浮かび上がらせる。
『精霊とは何か』
「さて、君たちはすでに知っているとは思うが、精霊は世界の理を司る存在だ。我々魔法使いが魔法を使うには、精霊の力を借りることが不可欠となる。」
クラウスの話は基本的な説明から始まり、精霊の種類や契約の仕組みへと進んでいった。
「精霊には属性がある。火・水・風・地・空の五大元素が基本だが、例外も存在する。契約者は自らの適性に応じた精霊と契約し、その力を行使することができる。精霊は過去に光 闇 火 水 風 地 空の7つの精霊から分裂し光と闇は滅ぼされ今はもう居ない」
悠は黙って話を聞きながら、そっと自分の手元を見る。契約の証である刻印が、袖の下に隠れている。
その時、大地が手を挙げた。
「先生! じゃあ精霊にも強さのランクみたいなものはあるんですか?」
「良い質問だ。精霊には格というものがある。一般的な下級精霊から、高位の精霊、そして極めて稀な『特別な精霊』までな。」
クラウスが手を振ると、空中に魔法陣が浮かび、そこに様々な精霊の姿が映し出された。小さな火の玉のような精霊から、人型に近いものまでさまざまだ。
「強い精霊ほど契約の難易度が高く、また制御も難しくなる。特に特別な精霊に至っては、契約例が極めて少ない。」
授業が終わった後、大地と玲奈が悠に近づいてきた。
「お前、契約者だから授業も楽だったんじゃないか?」
「いや、そんなことない。知らないことばっかりだったしな。」
「まあ、確かに精霊の話って奥深いわよね。」
玲奈が言うのと同時に、悠の肩の上にアカレがひょこっと現れた。
「ねえねえ、悠! さっきの先生、すっごい真剣な顔してたね!」
「お前……授業中はおとなしくしてろよ……。」
「えー? だって退屈だったんだもん!」
玲奈がくすっと笑いながら言う。
「アカレって本当に自由ね。」
「それがこいつの普通だからな……。」
悠はため息をつきながらも、アカレがそばにいることに少し安心していた。