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分析官、領都へ帰る

 領都フラート

 人口は1000人足らずと辺境としては人口の多い都市である。

 フラート自体は10mもある巨大な壁で八角形の幾何学的な構造をしており、八角形の各頂点には正八角形で5mほどの尖塔が立つ。

 その概容はフランスにあるヌフ・ブリザックの様な巨大な要塞都市になっていた。

 フラートの東西南北に出入口である門がありそこからの道が領主の館まで続いている。丁度館を中心に東西南北の道が都市を貫いている構造だ。

 ダンジョンへ繋がる道は街の西側にあり西側の門が一番大きく堅牢なつくりで壁も厚い構造になっている。

 この門を利用する多くの者は迷宮を探索する探索者や兵士、彼らに物資を売りつける商人逹である。

 迷宮で物品の回収が始まった事を早くも聞きつけたのか、数名の探索者と商人達が迷宮に向かって行った。

 慌ただしく移動する彼らを横目にジンはその大きな西門をくぐろうとする。


「ジン様、ご苦労様です。」


 通り過ぎるジンに門を守る兵士達が敬礼をし。

 ジンはその彼らに対し軽く手を振り敬礼は必要ないと合図すると西門を通り過ぎる。


 門のすぐ脇には領都兵の詰め所があり、門からの道を挟んだ向かい側に探索者協会の建物が建っていた。

 ジンはどちらの建物も素通りし、道の端をまっすぐ進んで行く。

 その近くを出遅れた探索者が大慌てで迷宮に向かうのが見える。

 慌てて走る探索者達の中に他の者に比べ明らかに装備が劣る者がいた。

 ジンの記憶によれば、その男は死体漁り(スカベンジャー)と揶揄される連中の一人だ。


(妙だな?この時間に出発しても収穫は少ないだろう。)


 死体漁りと言う行為は褒められた行為ではない。しかし、彼らが死体を漁る事で遺品を回収出来ている事実がある。その為、迷宮がある場所では彼らの行為の多くは黙認されている。

 ここフラートでは死体漁り(スカベンジャー)自体が登録制になっており、遺品回収に多すぎない報奨を出していた。

 その為、他の迷宮都市と比較して死体漁り(スカベンジャー)の数は多い。

 出遅れると言う行為は、彼らの収入に直結していた。


(一般の探索者での活動は少ないと記憶している。それなのに何故この時間なのだ?収入が見込めなければ迷宮に入るだけでも赤字だろう。)


 ジンは立ち止まって暫く考えていたが答えを見つける事はできなかった。


(今の状況では答えを出せないな。あの男は誰かに調べさせるとして、先ずは報告が先だな。)


 ジンは調査の人員を吟味しながら領主の館へ足を向ける。

 時刻が夕方だけあって酒場や宿の呼び込みが店も前で声を張り上げていた。


「安いよ、安いよ。今なら2時間ポッキリ、小銀貨一枚だ!」


「アーラ、お兄さんいい男ね。うちの店はどう?サービスするわよ。」


「本日の夕食ディナーは鶏の唐揚げとジャガイモとタマネギのスープ、宿泊費込みで小銀貨2枚ですよ~。」


 冒険者がよく使う通りだけあって、普通の宿とちょっとアレな宿や酒場の呼び込みが混在しているのはご愛敬と言ったところだが、これでも一昔よりかなりましになったほうだ。

 昔は所構わず違法な客引きが横行していた。

 客引きを一切認めず呼び込みも自分お店の前だけと刷新したのは今の領主の名である。ジンは少しは手伝ったと思っているが、大部分において彼自身の知識による物が大きい。


 賑やかな呼び込みの場所を取り過ぎると領民の憩いの場所でもある噴水前に来る。

 この噴水自体はドワーフの制作による物であり東西南北それぞれの交差点に造られていた。それぞれの噴水には水瓶を持った女神像が設置されていて、女神が掲げる水壺は常に水が湧き出る魔道具になっていた。

 噴水は水路の形でそれぞれの噴水が繋がっており領主の館を中心に円を描いている。そしてこの水路は市民の生活用水として利用されていた。


 噴水と水路の区画を抜けると居住区となっており、領民の住居や騎士団の本拠地が建てられている。

 領主の館までの道の中央には魔道具の灯がともり少し薄暗くなってきた道を照らしていた。急いで家に帰る領民や仕事帰りで一杯飲みに行く騎士がちらほら見え、家々の煙突から料理を作るためのかまどの煙が立ち上っている。行き交う領民や騎士達はジンの姿を見かけると軽く一礼して急いで目的地に向かう。


(昔に比べるとかなりか活気あふれる街になった・・・・・・。)


 ジンは少し昔を思い出しながら領主の館への道を真っ直ぐ歩く。

 領主の館の周りには少し強めの魔道具の明かりが等間隔に並び館の周りを明るく照らし、猫も隠れることが出来ないほどである。

 館は背丈の倍ほどある鉄格子に囲まれており、鉄格子の先には鋭い忍び返しがついていて侵入者を阻んでいる。鉄格子が道とつながる場所には鉄製の門が設置され、門の前には二人の騎士が常時詰め訪れるものを警戒していた。その門の前に立つ二人がジンに深々とお辞儀をする。


 すると、彼ら二人の後ろにある門扉がゆっくりと開かれその先には執事然とした男が立っておりジンにお辞儀をし声をかける。


「お帰りなさいませ、旦那ジン様。奥方様がお待ちです。」

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