表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

分析官、後始末を命じる

 迷宮を出ると高かった日はすっかり傾きかけていた。

 迷宮の入口は切り立った崖の麓にあり、周囲には草木一つは得ていない。

 少し離れた場所には迷宮監視用の見張り塔と迷宮を囲むように巨大な壁が半円状に設置されていた。

 夕日に赤く染まった壁に出入口となる門はない。これは壁が迷宮が氾濫した時の防御を考えられているからだ。

 壁の内回りには長い廻り階段が取り付けられており、それを利用して兵士や探索者達が迷宮を利用するようになっている。

 他には階段で運べない大きな物を運搬する荷揚げ機があるが普段からあまり使われない様である。

 壁の上は幅が広くなっている為、兵士や探索者の為の宿舎建設が計画されているが、予算の都合がつかないのか安全面の問題があるのか、まだ建設されていない。その代わり見張りの塔が兵士や探索者の一時的な宿泊施設になっている。

 夕日で赤く染まった見張りの塔から同じ様に赤く染まった鎧姿の兵士が派手な音を立てながら降りてきたて。

 その兵士は地面に降り立つと大きな声を上げジンに近づいてきた。


「ジン殿!ご無事でござったか!潜られてかなり時間が経ったのでもしやと思いましたが・・・・・・ご無事で何よりです。」


「ああフォルス君か、私は何とか無事だ、それとボス部屋にいた奴は倒した。」


「おお、それでは封鎖は解除してよろしいので?」


 今現在、迷宮に問題が発生しているため迷宮は封鎖され兵士や探索者は入ることが出来ないようになっていた。フォルスはその封鎖を解除の是非をジンに尋ねているのである。

 ジンはフォルスのその質問に対して首を横に振った。


「まだ駄目だ。ボス部屋には犠牲者の骨や武具、道具類がかなり散乱している。それを回収する必要がある。」


 何かに気がついたのかフォルスは大きく相づちを打った。


「おお、そうですね!早く回収しなければ迷宮に吸収されてしまう。もしや今回の行方不明で何人か吸収されたのでは……。」


 フォルスが言う“迷宮に吸収される”は実際に迷宮に吸収されるわけではない。時間が経つと迷宮の魔物が吸収もしくは食べる事を指していた。

 これは骨の迷宮でも例外はなく、骨人スケルトンが吸収しているのである。そして吸収を行なった魔物は少し強い魔物に変わる事があった。

 不思議なことに骨人スケルトンが探索屋の死体を吸収しても骨人スケルトン系の魔物にしか変わらない。


「それを確認する為にも早い回収が必要になる。」


「はっ!早速手配するとします。」


「ああ、よろしく頼む。」


 フォルスはジンに対して敬礼を行うと大きな音を立てながら大慌てて階段を駆け上がってゆく。

 ジンはその後ろ姿を見ながら兵士が今言った言葉を考えていた。


(吸収した魔物が変わる事があるが、骨人スケルトンの場合は骨人スケルトン系列にしかならない。肉付きになる事はありえない。)


 少し難しい顔をしながらフォルスの後を追いかけるように階段を上ってゆく。

 数分後到着した壁の上からは夕日に染まった領都フラート全体を見渡すことが出来た。

 ジンは息を整えながら領都を見下ろすと領都は丁度仕事終わりらしく道路を行き交いする人の姿が見えた。

 感慨深く領都を眺めるジンの後ろをフォルスが部下や探索者を大勢引き連れて慌ただしく集まってきた。

 整列した兵士や探索者の前にフォルスが号令をかける。


「これより我々領都軍および探索者の合同チームは遺骨遺品の回収に向かいます。ジン殿に敬礼!」



「よろしく頼む。」


「はっ!全員駆け足!」


「「「「「「「「「「イエス・サー!」」」」」」」」」」


 号令共に一糸乱れず集まった者達が駆け足で階段を降りてゆく。彼らのその様子から彼らがよく鍛えられている事がジンには判った。

 階段を降りてゆく彼らを見送るとジンはゆっくりと領都の方向へ移動する。

 壁の外側には登ってきた物と同じ規模の廻り階段が設置されており、ジンはその長い廻り階段を降りると都市の方へ歩みを進めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ