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幻想街  作者: コードネーム・サイ
5/11

【街の住人たち】


 どうも図書館で更に調べると、魔法書が解決への糸口であること。

 そして魔法書を生成する「つなぎ」のアイテムを探さないといけないこと。

 それからそのアイテムは、おそらく「オバケ」が所持していて・・・

 オバケたちを倒すには、更にアイテムが必要だってことだった。


 これを知って、気が遠くなりそうだった。

 まず街にまともな人間がいるのか気になる。

 半端な地図をもとに安全区に行ってみた。


 するとそこには、二十代くらいの男女たちがいて街の住人であると言う。

 そして皆が、街に来る以前の記憶がない、と。

 街の安全区を見つけて、夫婦になったひとたちに子供ができた前例がないらしい。


 それは新薬の研究と何か関係があるのだろうか・・・?


 ミュイについて相談してみると、そこにマリアがいた。

 マリアは安全地区の変わり者らしく、今日もバニーガール姿。

 そのふとももに馬用のムチがベルトで固定されている。


 何に使うんだろう?


「ん?これ?街に少ないけど馬もいるのよ」


「馬・・・?」


 バニーガール姿で乗馬??


 とにかく街の住人たちは夜が怖いらしい。

 なので朝から昼にかけてならアイテム探しの手伝いをしてもいいと言われた。


 おもに、列車から包んで投げ込まれる食料で生きているらしい。

 その列車には誰も乗れないらしい。

 その食料の中から、なるべく新鮮なものをくれると言われた。


 街の住人たちは、みな健気だ。

 ワイルドストロベリーや、クルミ、茸類、野菜の自給自足をしている。

 カモミールも育てているらしく、乾燥した花のお茶を淹れてもらった。


 泣きたくなるような気分だった。

 それからアボカドの木があって、時期になると大量に収穫できるとのこと。

 森のアイスクリーム。

 とても貴重なものだ。

 渡された半分に切ったアボカドに、ソイソースを少しかけてスプーンで食べる。


 感動で死ぬかと思った。

 街の住人たちは、どうもソイソースをガソリンの類いだと思っていたらしい。


 醤油と言うソースで、「ソイソース」と言う名前であることを言うと歓迎された。

 ソイソースの消費期限は案外と長い。

 街のひとたちがソイソースを使ったレシピを知らないか、と聞いてきた。


 ◆ 甘い芋、砂糖、植物性油、黒胡麻、ソイソース ◆


 なんとか自分の知っているレシピについて食材があった。

 できたのは「大学いも」。


 街の住人たちが大喜びしてくれた。

 口に合ってよかった。


 こんな感動は久しぶりだ協力するよ、と今まで黙っていた男が言った。

 彼の名前はジョンソンと言うらしい。

 この街の市長の息子なのだと言う。

 ただ、愛人の子供らしい。


 この街について、図書館での調べを話してみた。

 新薬について、生物の機械化について。


 皆が、気づいている、と言う。

 自分たちを襲うかもしれない存在が、『元人間』であることに。


 ただ、なぜここに来たのかは知らないらしい。

 皆、その部分の記憶が、ない。


 この街に来た以前の記憶が、特に蘇らない。

 ただ、日常をすごすに、ある程度の知識や知恵は持っていて生きていると。


 この街に救世主が現われたのかもしれないと言われて、驚いた。

 複雑な気分だ。

 最初は自分と妹の身の安全だけでよかったのに、街の住人とここを抜け出したい。


 街の住人いわく、クロイド・二ローにさらわれたなら城にいるはずだとのこと。


 その城に行くには、条件を満たさないといけないらしい。


 その条件が、やはり『探し物』。

 アイテムや情報がないとたどりつけない、と言われた。


 皆で戦うことはできないのか聞くと、アイテム探しも怖いとのこと。

 白魔女が怖い、と言って、言葉を待ったが女性陣が震えだした。


「白魔女は、単身霧の中にアイテムを探しに行くと言って、行方不明中だ」


 どうしよう?

 魔法の地球儀のことを言ってもいいのか、ここで?

 そう言えばジェシカが見当たらない。

 図書館に居てくれたらいいんだが。


「この中に、魔法が使えるかたはいますか・・・?」


 皆がぎょっとしてこちらを見た。


「・・・少しだけ」


「・・・全員が?」


「それでアボカドの木を生成して、自給自足でなんとか暮らしている」


「なるほど・・・」


「そう言えば、オバケを倒すならハンターの家に行けばいい」


「そこに武器やアイテムがあるですか?」


「今はどうなっているのか分からないけど、使えるのが残っているかもしれない」


「分かった。ありがとう」



 安全区を出るためにきびすを返した私を、「あの」と呼び止める女子がいた。


「これ、持っていって?」


 渡されたのは三枚のバタークッキー。


「ありがたい」


 微笑をされて、苦笑をしてしまう。


「大切に食べます」


「お腹がすいたら安全区に来たらいいわ」


「俺達もアイテム探し、手伝うよ」


「まずは、安全区から出て、ハンターの家を探さないと・・・」


「案内するよ」



 そう言って出てきたのは、三人の男達。


 顔がそっくりだ。



「アー、べー、ツェー。俺達三つ子の個別識別名だ。どれが誰のだかは気分で使う」


「三つ子、でいいか?」


「ああ、それだと簡単だな」



 アー、べー、ツェーと共に、ハンターの家に向かう。

 安全区を出ると、濃い霧に視界は一気に悪くなった。

 服がしける。

 三つ子たちがランプとライトを持っていてくれてよかった。


 地図を頼りにハンターの家を探し出したつもりになった。


「・・・ない?」


 その地図に記された敷地は芝が張っていて、庭しかない。

 何か雄叫びのようなものが響いた。

 叫び出したいのはこちらのほうだと、オオカミ男の出現を予期する。


 敷地内を探して見ると、どうも芝に切込がある。


「まさか、隠してあるのか!?」


 三つ子たちが、「これってなんだろう?」と拾ったらしいみっつの鍵をしめした。


 何かないかとポストまで見たが、そこにみっつの鍵穴があった。

 試しにその宝石のついた鍵をポストの鍵穴に差し込んで回してみると・・・


 地鳴り。

 そこから、一件の家が迫り出して来た。


 三つ子が「おお」と言っている。

 こちらだって驚いてはいるが、早く妹を助けたい。


「これがハンターの家でいいのか?」


「「「多分」」」


「多分、か・・・」



 中にオオカミ男がいやしないかと思いながらも、その家の扉を開けた。


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