悪戯は、君に帰結する。
「…別に、泣いてなんか…。」
「嘘はいいですから、正直に話してください。」
「………他人事じゃないのに。」
「え?」
「夕透くんのせいなのに…全部…なのに…ばかぁ…っ!」
「え、あ、先輩…?何で泣いて…。」
「…ばか…ばか、夕透くんのバカ!!!!」
「…せ、先輩…?」
「もう怒った、もう我慢できない、散々耐えてたのに…。」
「…えっと、その…。」
「…私、今から夕透くんのこと襲うから。」
「…はい、?お、襲う…?」
「…そういう訳だから、大人しくしてて。」
「あちょ、先ぱ」
どさっ
「…あ、あの…先輩…?」
「………夕透くんは…女の子なら誰でもいいの…?」
「そんな訳ないです。」
「…なのに、中学生にもデレデレしちゃうんだ。」
「いや、あれはデレデレじゃなくて愛想笑いで…。」
「………。」
「いや、ほんとにあれは困ってて」
ぎゅっ
「っ…せ、先輩…?」
「…もう好きにさせないでよ、これ以上…。」
「…えっと…?」
「…私、最近夕透くんのことしか考えられない、勉強しててもご飯食べてても部活してても…。」
「何回ももう考えないようにしようって思ってたのに…夕透くんが他の女の子と話してるの見たら…もう我慢できなくなっちゃった…。」
「…でも、夕透くんが悪いんだよ…?誰にでも優しくてかっこいいところ見せるから…そんなの、みんな好きになるに決まってるじゃん、バカ。」
「…ねぇ、好きって言って… 。」
「…いや、それは流石に」
「だめ、言わないと……するから。……キス。」
「いや、どっちもダメじゃ」
「うるさい…っ!…夕透くんが悪いんだから、ちゃんと責任取らないとだめ。」
「…ねぇ、私のこと嫌い…?」
「いや、嫌いなんかじゃ」
「じゃあ好きって言って…?嫌いじゃないんでしょ、私のこと…。」
「………。」
「…黙ってないで、ねぇ…言って?」
「…ねぇ、言ってよ、好きって言って…?ほら、早く…。」
「………。」
「…ねぇ、ねぇってば…!夕透くん…っ。」
「………。」
「…お願い、一回でいいから…お願い、一回だけ…。」
「…はやく、ねぇ、夕透くんってば…っ!言ってよ、もう我慢できなくなっちゃうから…っ。」
「………。」
「ほんとに襲っちゃうよ…?ねぇ、夕透くん…っ!」
「………俺は、そんな澄夏先輩は嫌です。」
「………。」
「誰にでも平等で、親切で、ホルンに直向きな澄夏先輩のことは好きです。でも今の先輩はちょっとだけそれがなくなってます。それは澄夏先輩が大切な先輩だからこそ嫌です。」
「…好きはそう簡単に言っちゃダメな言葉だと思います。楽しい思い出が時間と共に薄れていくように、美しい自然が段々汚れていくように、言えば言うだけ本当の意味が薄れてしまうような気がするんです。便利な褒め言葉だからこそ、本気の意味で使う時に軽視されてしまうようなことはあっちゃダメです。」
「…」
「…心配しないでください。先輩に返事しないまま、誰かのものになんかなりませんから。」
「…ん、ごめん。意地張っちゃって…。」
「いやいや。それだけ想ってもらえるのは幸せです。ありがとうございます。」
「…じゃあ、戻りますか。みんな待ってますよ、先輩のこと。」




